第十二話 ていうか、血生臭い戦場の中で、清涼感溢れるお色気回がやってまいりました!
ザクッ! ザクザクザクザクッ!
「「「ぎゃあああ!」」」
バタバタッ
一気に五人の首を斬り裂く。
「くらえやああ!」
がぎぃん!
「くぅぅ!」
大男の大剣をどうにか受け……きれない! 右側に逸らして相手の体勢を崩す。その隙に。
どごおっ!
「おご………ぐぁ、があああああああ!!」
……大事な場所を蹴り上げて昏倒させる。ごめんね。
「よいしょっと」
ボキィ!
苦しむ大男の首の骨を踏み折って止めを刺す。
「この女ぁぁ!」
次々と襲いかかってくる兵士達。いい加減に疲れるんだけど……!
「ほいっと」
槍を避けて一気に懐に入る。
「わ、わわ! ぎゃぶ!?」
短剣で心臓を刺し通す。
バギン!
あ、短剣が折れた。
「いよっしゃ、チャンス!!」
武器を失った私に若い兵士が肉薄する。けど甘い。
「足元がお留守♪」
足払いして地面に転がし。
グシュ!
「!! ……っ」
後頭部に折れた短剣を突き立てた。短剣はその直後に霧散する。
「私の名はサーチ! この首を取る自信があるヤツは、まとめて向こうの盾女が相手するわ!」
横から「何でやねん!」という声が聞こえたけど気にしない。≪偽物≫で再び短剣を作り出すと、左手を逆手に持ち替えて、戦場を駆け出した。
「ふはぁ、つっかれたあ……」
敵が一旦退いたため、私達も交代で一旦退いた。戦いが始まって二時間くらい経つけど、ずっと小競り合いが続いてるだけだ。
「あ、サーチ姉お疲れ様」
リジーが先に馬車に戻っていた。武器の手入れをしている。
「あれ、エカテルとドナタは?」
「まだ戻ってない」
エカテルは救護班だから、今が一番忙しい盛りか。ドナタは……要領がいいから、どこかでお茶でも貰ってるんだろう。
「ふぃ〜……リジー、清洗タオル取って」
リジーがタオルを探してる間にビキニアーマーを外す。流石は大王炎亀の逆鱗、傷一つついてないわ。
「はい……ってサーチ姉、なぜ全裸?」
「何でって……全裸じゃないと清洗タオルで拭けないじゃない?」
「……普通は隠しながら拭くと思われ」
「なーにーよー、女同士なんだから気にすることないじゃない」
「いやいや、サーチ姉やヴィー姉や陛下の例もあり」
「ちょっと! ヴィーはともかく、マーシャンと同列に並べないでくれるかな!?」
「あ、ごめ……サ、サーチ姉? そのワキワキと動く両手は何?」
「ん〜? リジーには仲間同士の親睦を兼ねて、ちょびっとお仕置きが必要かな、と思ってね〜」
「いやいやいや、親睦じゃなくて嫌がらせ!」
「あ〜あ、お仕置きから極刑になっちゃったわ」
「きょ、極刑って……!」
「えい、剥いちゃえ!」
「ちょ、ちょっとサーチ姉!? や、止め……! ふぁ、どこを触って……いやあああああああ!!」
……十分後、エカテルが馬車に戻ってくると。
「な、何をしてるんですか!?」
半分以上剥かれた状態のリジーに乗っかっているとこで鉢合わせた。
「ちょうどいいわ! エカテル、リジーの足を押さえて!」
「エカテル助けてえ!」
「え、あの、どうすれば……!?」
「命令! リジーの足を押さえなさい!」
「め、命令! 助けてええ!」
「え、ええーーーー!?」
……結果的にエカテルは、リジーの足を押さえながら私を引き剥がすという、なかなか器用なマネをやってのけた。
「も、もうお嫁に行けない……」
「何言ってんのよ。エカテルなんか道の真ん中で裸踊りフガフガ」
「なななな何でもありませんからね!」
あ、そっか。リジーは知らなかったっけ。
「……エカテルもサーチ姉の病気が感染した?」
「リジー、私の病気って何なのかしら?」
「え、露出症候群うぎ!?」
「そんな病気聞いたことないんだけど……?」
「サ、サーチ姉ギブギブギブ! 腕が折れる折れる折れるぅぅぅ!」
ゴキッ
「あきゃああああああああああ!!」
「……で、何故私が戻ってみると、半裸で肩を脱臼したリジーがエカテルに治療されてたんですか?」
「……いや……その……」
……何てタイミングで戻ってくるのよ、エリザは。しかもメイドフォルムで。
「しかも何ですか、全裸でいるなんて……はしたない」
「……すんません……」
「あなたも一応リーダーで、しかも恐れ多くもリファリス様の幼なじみなのですから、慎みを持っていただかないと……」
……この見下し感がイラッとする。ちょうど背後にエカテルがいるし……よし。
「エカテル、命令。エリザを羽交い締めになさい」
「え!? は、はい!」
がしっ
「エカテル!? な、何をするのです! 離しなさい!」
「で、でも命令でして……!」
その瞬間にエリザのメイド服に手を滑りこませ。
キュッ
「はあああああああああん! ……って何やっとんねん!!」
「よし、戻った」
「よし……じゃないわ! それは止めいって何回言わすんや!」
「人間は五百回言われないと理解しないそうよ」
「そうなん? ……って感心しとる場合やなかったわ! エカテル、ええ加減離しいや!」
「で、でも命令で……」
「とっくに解除されとるさかい、離してみいや!」
「え? ……あ、本当だ。すいません」
そそくさと離れていくエカテル。それをエリザはジト目で睨みつけた。
「……たく。ホンマに命令に従ってただけか?」
「わかんないわよ〜。エリザを羽交い締めしてる間、顔がニヤニヤしてたからね」
「そ、そんな事ありませんよ!!」
「命令、認めなさい」
「はにゃ!? はい、ニヤニヤしてました!」
その瞬間、エリザの表情が般若に変わった。
「ふ〜ん、へ〜え……」
「あ、あの、エリザさん?」
「……サーチん」
「何?」
「ちょっと付き合ってや?」
「んっふっふ……喜んで♪」
私とエリザは同時にエカテルに飛び掛かった。
「えっ!? ちょっと! 止めてください! ふ、服が破れますからああ!」
……その隙に服の乱れを直し、そそくさとリジーが逃げていったけど、忙しかったので見逃した。
「……ただいま〜、りじーせんせえ」
「あ、ドナタお帰り」
「なんでおそとにいるの?」
「……色々あった……と思われ」
「? ねえ、りじーせんせえ、なんでばしゃがゆれてるの?」
「気にしない」
「?? ねえりじーせんせえ、なんでばしゃからえかてるせんせえのこえが」
「ドナタ、ちょっと遊んでこようか?」
「うん! あそぶ!」
……一時間後。
「も、もうお嫁に行けません……」
「何言ってんのよ。路上裸踊りよりはマシでしょ?」
「……あ、そうや。ウチ、リファリス様に呼ばれてるんやった。もう行くでぇ〜」
「はーい、いってらっしゃい」
「…………」
「……エカテル、どうしたの?」
「……へ? い、いえ。エリザさんて、関西弁フォルムの時って素敵だなぁ〜って……わ、私何を言ってるのよ!?」
あかん。この一時間でエカテルの新たな扉を開いてもうた。
清涼感はなかった。