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第六話 ていうか、谷での攻防、四日目。

「あ〜、ねむ……」


 リジーは朝方眠ってた罰として、余分に長く見張りをやってもらった。そのせいかリジーは、エカテルに負けないくらいの大イビキをし始め、私の睡眠は大幅に削られることになったのだ。


「……ちょっと外の空気を吸うか……」


 テントから出ると。


「ん? 早いやんサーチ……って、なんちゅー格好しとんねん!?」


 へ……? ああ、素っ裸のまんまだったか。


「ごめんごめん、すっかり忘れてたわ」


「早ようビキニアーマー装備してこいや! め、目のやり場に困るやろ!」


「何言ってんのよ。温泉なんかじゃ、毎回バッチリ見てるじゃないの」


「うううるさい! シチュエーションの問題や!」


「シチュエーション? 素っ裸で大自然の元に立つなんて、最高のシチュエーションじゃないの」


「だーかーらー…………んっ!?」

「ん、どーしたの………て、敵!?」


 エリザが焚き火の枝を投げ、私が石を投げる!


「いて!」「あっちぃ!」

「「うわ!? ぎゃあああああぁぁぁぁぁ………」」


 また敵が登ってきた!


「何なんや、敵さんは! 全く懲りてへんやん!」


 エリザと共に崖下を覗き込むと。


「…………お。へへ……」


 私を視界に入れて、にやける敵兵。


 ツルッ


「あ。し、しまったあああああぁぁぁぁぁ………」


 デレッとしたあと、手を滑らせて落ちていった。


「……まあ……悔いはないでしょうよ」


「そんなんより! まだまだいっぱいいるで!」


 ちぃ! ついに数で力押ししてきたか!


「エリザ、しばらく迎撃をお願い! 私はみんなを起こしてくる!」


「ついでに何か着てきいや!」


 ビキニアーマーを装備してる暇はない。とりあえず下着だけ身につけ、エカテルとリジーを叩き起こした。



 ゴオオオッ!


「ぎゃあああああ! 熱々いい!」

「うぎゃあああああぁぁぁぁぁ………」


 リジーの≪火炎放射≫(ファイアブレス)で何人か落としたけれど、まだまだいっぱい崖を登ってくる。


「サーチ姉、向こうの崖にも!」


「向こうは任せて下さい!」


 カキーン! カキーン!


 ごんっ! めきっ!


「ぐあああああぁぁぁぁぁ………」

「うあああああぁぁぁぁぁ………」


 エカテルの千本ノックが唸り、次々に敵を叩き落としていく。


「はい、ちょっとどいて……空気よりも重い、痺れ毒攻撃! ぶふぅぅぅ!」


 私の毒霧が崖を伝って降りていく。そして。


「「「し、痺れるううううぅぅぅぅ………」」」


 ……結構落ちていったけど、何でみんな同じ叫び?


「埒があかん! 皆下がってや!」


 唯一フル装備のエリザが盾を振り上げる。


「三盾流奥義、地面叩きの舞!」


 どういう舞だよ!


 ずどおおん!

 ビシ……ピシピシ……

 ガラガラガラガラ! ズズゥン!


「「「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ………」」」


 大量の落石を起こし、見える限りの敵を一掃した。ナーイス、エリザ。



 カキーン! カキーン!


 反対側の敵は、全てエカテルが叩き落としてくれてる。こっち側に余裕ができたので、とりあえず作戦会議。


「まだ同じ箇所しか登ってこうへんのが幸いやな」


「もっと離れた場所から登って、私達の背後を突く可能性があると思われ」


「そうね。こっちが陽動で間違いない」


「なら……ここでジッとしてるんは得策やないで」


「そうね………撤収の準備はしときましょう」


 私の言葉を聞いたリジーが、まだ寝てるドナタを起こしにいった。


 カキィィン! ごすっ!


「ひぎゃああああああぁぁぁぁぁぁ………」


「とりあえず見える限りの敵は落としました」


「ありがと、エカテル。とりあえず撤収の準備だけはしといて」

「はい!」


 さて……どうしたモノか。


「サーチん、この下には敵の本隊がおるんやろ? ならなるべく減らした方がええんちゃう?」


「そりゃあ……そうね」


 二人、ニヤリと笑う。



「もはや我慢ならん! 多少の犠牲は払ってでも、上の連中を一網打尽にするのだ!」


「離れた箇所からも別動隊を登らせるぞ! 急げ!」


 ……ひゅうぅ……


「また頭上から落下物です!」


「全員盾を頭上へ向けろ!」


 ザザッ


「ふ、これだけ攻撃を受けたのだ。もう落下物は通用せんぞ」


 ひゅうぅぅ………どがああああああん!!


「うっがあああああっ!! な、何だごりゃあああ!?」


 ひゅうぅぅ………ずどおおおん!


「ぎゃぶ!」「ぶあぁ!」


「さ、炸裂弾だあああ! 散れ! 散開ぃぃぃぃ!」


 ひゅうぅぅ……ひゅうぅぅ……どがばがあああん!!


「うごぉ!?」「がはっ!」


「ま、まずい! このままでは……!」


 どごおおおん!

 ずがあああああん!


 ……ズズズ……ドドドドドドドドドド!!


「な、何だ、この音は?」

「ら、落石だあああ!」


 ずどん! どさん!


「ぎゃ!」「がぁ!」「ぐぶ!」


「退避! 退避ぃぃ! 早く逃げるんだああああ!」



「エリザ、一発大規模な崩落をお願いしていい?」


「任せとき! いくでぇぇぇ! 三盾流奥義、地面叩きの舞×三!!」


 どおん! どおん! どおおんんっ!


 ……ズ……ズズ……ズドドドドドドドドド!!



「……も、もう嫌だあ! 帰りてえよおおお!」

「何で俺たちがこんな目にぃぃ!」


 …………ドドドドドドドド


「ま、また何か……!」

「逃げろ! 早くしろおおお!」


 ドン! ドドドドン! ドサドサドサ!!


「ぶぎゃああああ!」

「ぐふぇぇぇぇ!」


「だ、駄目です! もう軍は……がはあ!」


「っ……! う、上の連中には血も涙もないのかああああああっ!!」



「……ないよ」


「は?」


「何でもない何でもない」


 ……? なぜか急に答えたくなったんだけど……?


「これでかなり被害が出せたはずね。なら移動しつつ、登ってくる敵を叩き」


 ……ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 な、何!? 地震!?



「み、味方の半数を失ったというのか……!?」


「はい。丸ごと壊滅した隊も幾つか……」


「…………ここまで被害が出ては仕方ない。撤退の準備を開始せよ」


「! ……はい」


「おのれ……この屈辱、絶対に忘れぬ……! 必ずや復讐を……!」


 ……ゴゴゴゴゴゴ……


「な、何だ! まだ何か起きるのか!?」


「大変です! 水です! 大量の鉄砲水が押し寄せて……!」


「鉄砲水だと……!?」


 ドドドドドドドド! ザバーン!


「だ、濁流がああがぼぼぼ!」

「た、助けごぼぼぼぼ!」


「こ、ここまでやるのか……! あ、悪魔がいるのか……?」


 ザザアン!


「む、無念なりぃごぼぼぼぼ………」



「が、崖の途中から地下水が流れ出したんですね」


 地下水って……そんな生易しいレベルの水流じゃないよ、あれ?


「……これで敵さん全滅やな……」


 ……ん? あそこにいるのは……?



「ち、畜生! 畜生! 皆が……皆が……! 本隊に知らせて、必ず仇を……!」



「エカテル、あれも」


「はい」


 カキーン!



 ……ォォォオオオン!

 ごすっ!


「うぎゃあ!」


 ひゅ〜……じゃばあん!


「がーぼがぼぼぼ! 畜生ぉぉぉぉ………」



 ……よし。


「ならリファリス達と合流しましょうか」


「……一人くらい見逃してやれよ……」



 こうして四日目。私達は敵に大打撃を与えた、と判断し、谷から撤退した。

 実際には、敵軍は完全に壊滅してたらしい。ちょっと殺り過ぎたかな、てへ。

会心の一撃=濁流。五対万は、ジャイアントキリングとなりました。

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