第十六話 ていうか、はあはあはあ……助かった……のよね？
ドガアアアン！！
「きゃあああああ！」
ちゅどおおん！
死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ！
「エイミア、お願いだからなんとかしてえええ！！」
『もはや我らの言うことにも反応なさらないのだ』
「そんな〜……お願いですからもう少し頑張ってくださいよ〜……」
『……わかった。やれるだけやってみよう』
サーチ……お願い死なないで！
「滝の真竜の気を引くことはできねえのか！？」
「……ワシが知る限りでは……難しいのう」
「なんでだよ！！」
「落ち着かんか……よいか？ 相手はドラゴンの中でも最上位に位置するほどの力を秘めておる。下手なことをすればワシらだけではなくダウロにまで被害が及ぶぞ！」
「ぐ……」
「まずはワシらが落ち着かんと突破口すら見出だせぬ。よいな？」
……そこまで言われて私もようやく頭が冷えてきた。
「真竜は一度見初めた相手には異常なまでの執着を見せる。鍵となるのはエイミアじゃろうな」
エイミア……か。
「じゃあ私がエイミアをシバき倒せば標的は」
「お主とサーチの二人になるだけじゃ。余計に収拾がつかなくなるのう」
クソ！ じゃあどうすれば……！
「……ワシに考えがある……エイミアを呼んできてくれぬか？」
どっがあああん！
「うきゃー！」
ズズズン！ どどーん！
「あきゃー！」
た、た、助けて〜……！
「マーシャン！」
来たか。
「エイミア、わかっておるじゃろうが事態は深刻になるばかりじゃ」
頷くエイミア。此奴でも真面目な顔をするようじゃのう。
「……マーシャン何か失礼なこと考えませんでしたか？」
……鋭いのう。
「ともかく……お主にやってもらわねばならぬ」
エイミアは覚悟を決めたようじゃな。
「よし……ならばワシの言う通りにするのじゃぞ」
「おい、サーチ！ こっち側に走ってこい！」
はあ……はあ……リルが……呼んだわね……ひい……ひい……も、もう少し……頑張らないと！
「わ、わかったわ〜……はあ、はあ」
どっかあああん！
ぎゃあ！
へばってる暇もないの！？
ずがあああん！
んぎゃあ！
リル、よくわかんないけど助けてよー！
「よいな、エイミア。ワシの言ったとおりにするんじゃぞ」
「は、はい！」
うう〜……ホントは言いたくないんですが……サーチのためです。これくらいなんてことありません！
「エイミア！ もうすぐくるぞ！ すたんばいだ！」
す、すたば？
「気にするな！ 準備準備！」
「はい！ いつでも大丈夫です！」
どげおん！
もおおお！ しつこい！
「サーチー！」
あれ？ エイミア？
「……行きます！」
息を大きく吸い込んで……！
「滝の真竜さあん！ その娘より私のほうが！」
お願い！ こっちむいて！
「や・わ・ら・か・い・で・す・よー！」
…………。
ホントに滝の真竜の動きが止まって、こっちをガン見し始めた。
「……こ、怖いんですけど……」
「真竜は何故か肉付きのいい娘を好むのでな……巨乳は大好物じゃな」
……なんちゅうスケベ竜……。
「はう〜……助けてください……」
エイミアは滝の真竜にぴったりくっつかれている。
完全にガクブルだ。
「私と牙の大きさが同じなんですけど〜……ひゃう！」
あ、エイミア舐められた。
うわー、舌だけでエイミア二人分……。
「でもエイミア、ありがとう」
「え？ へ！？ サーチがお礼を！？」
……驚くとこはそこかよ。
「エイミアがここまで必死に頑張ってくれたから……私は生きていられるのよ。ありがとう、私の親友」
……あ……エイミアの顔から湯気が……耳からも蒸気が出そうなくらい赤くなってる。
「そ、そんな私は当たり前のことしししただけ……あああもうダメ」
頭抱えて丸くなった。
……見てるこっちが恥ずかしくなるくらいデレデレになってる。
ちょっと！ 滝の真竜さん、睨みつけないで！
「まあ危険は去ったわけじゃが……なぜ滝の真竜は我を忘れるほど怒り狂っておったのじゃ？」
マーシャンが近くに控えていたアブドラを通じて滝の真竜に問いかけた。
『我が見初めた相手を苛める輩に腹が立ったことが一つ目』
それであんなにキレてたの！？ あんなの私とエイミアのスキンシップよスキンシップ！
……多分エイミアからは異論がありそうだけど。
『もう一つは勇者が誕生したことに誰一人気付かなかったこと』
え？
勇者の誕生？
「ちょっと待って！ どういうことよ！」
『待っておれ、聞いてみる』
アブドラが通訳。
『……何と……サーチ殿、横穴の温泉にはめ込まれた青い石には気が付かれたか？』
青い……石？
「……赤くなかった？」
「いや、青かったぜ」
リルも見ていたらしい。でも色が違う？
『あの石が色の変化を起こした時、勇者が誕生したことを示すそうだ』
……知るか！
「私、聞いたことないんですけど……」
「……知らねえな」
「ワシでも知らぬわ」
…………知らないものをどうしろと……。
「そのこと……知ってる人はいます？」
『……フムフム……代々人間の群れの長を務めていた一族に伝わっているはずだ、と言っておられる』
人間の群れの長？ ざっくばらん過ぎてわかんないわよ！
『たぶん……ギルドのことを言っておられるのではないか』
ギルド？ ギルドの長って……。
「えっと……ダウロのギルドマスター？」
アブドラが訳してくれる。めんどくさいことをごめんね。
『違うようだ。もう少し離れた町らしい』
……だんだん嫌な予感が……。
『我らの言葉で「始まりの町」という意味の場所でな、スーモサカという……』
変態ギルマスかーー！！
あと一話だけ続いて新章です。
だんだん延びる延びる…。
