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第一話 ていうか、進撃のリファリス! 八つの秘策を用いて、大王炎亀《アレキサンダー・タートル》を駆逐するぞ!

 初戦に劇的な逆転勝利をしたリファリスは、その後順調に連合王国軍の領土を回復した。


「……ねえ、さーちゃん。こんな雑魚共の相手をさせる為に、あたしを呼んだわけじゃないわよね?」


「普通の戦争だったら呼ぶつもりはなかったわよ。厄介なのがいるから呼んだんじゃない」


 八戦連勝で第十五王国まで取り返したリファリスは、勝利の美酒に溺れながら、上機嫌で私に絡んできた。


「厄介な相手か。やっぱり院長先生?」


「普通に考えて、A級冒険者が相手側にいる時点で、十分すぎるほどの脅威でしょ?」


「まあね。それは直接当たらなきゃ、どうとでもなるよ。どれだけ強くたって院長先生は『個』にしかすぎない。『個』が『全』に勝つのは不可能だよ」


「……『個』で『全』を食い破るのが院長先生でしょうが」


「大丈夫。いくらでも手段はあるよ。大船に乗ったつもりでいなさいって」


 リファリスがそこまで言うなら……まあ……。


「それより、もう一つ懸念があるんでしょ?」


「あ、うん。敵側が投入してるモンスターがね」


「モンスター? たかがモンスターに苦戦してるっての?」


「……あんたが唯一の黒星を食らった相手よ」


「……まさか……大王炎亀アレキサンダー・タートル!?」


「そのまさか。毎回散々な目にあってるらしいわ」


 大王炎亀アレキサンダー・タートルの話が出たとたん、リファリスは俯いた。グラスを持つ手はカタカタと震えている。


「……リファリス?」


「…………クク…………ククク……クハハハハハハハ!! 大王炎亀アレキサンダー・タートル? まさかこんな場所でその名前を聞く事になるなんて……あっははははははは!!」


 ……な、何か怖いんですけど……。


「クックククク……大丈夫よ、さーちゃん。あの敗戦以来、あたしは大王炎亀アレキサンダー・タートルの対抗手段を、嫌になるくらい考え続けたんだから……あっははははははははは!」


「じゃ、じゃあ、すでに対抗手段は見つかってるの?」


「もう八つは考えてるわね」


 マジかよ。


「それって……強烈な光で目眩ましってのもある?」


「……九つ目」


 あっさり増えたな!


「大砲で近距離ズドンとか」


「………………誰でも死ぬでしょ、それ」


 た、確かに。


「で、でも私はそれで一匹倒したわよ?」


「無茶するな〜……」


 私だってやりたくてやったわけじゃないわよ。


「大丈夫。そんな危険な事しなくても倒す方法はあるから」


「そのときはご教授? 願うわ」


「何よ、その『?』は!?」


 何でもありません。教授と享受と教示で迷っただけです。


「じゃあさ、その八つの秘策を今教えてよ」


「いいよ〜…………ちょっと準備があるから待っててね」


「準備? 準備って何よ、ねえ?」


 ……行っちゃった。


「サーチ姉、リファリスさんと一緒にエリザも出てったけど、何かあった?」


 ……首を捻るしかなかった。



 十分後。


「はい、お待たせー!」


 リファリスが戻ってきた。わざわざ衣装を替えて。


「な、何でわざわざ着替える必要があるのよ!?」


「それはあたしの気合いの表れよ!」


 そこまで気合いがいることかよ!


「それでは八つの秘策、一つ目を発表します!」


 ダララララララ……


 後ろから小太鼓の音が聞こえるけど、間違いなくエリザだと思う。


 ジャン!


 これも。


「一つ目は……水系魔術による、水中窒息死!」


 …………はい?


「あたしが一番最初に着目したのは、亀でありながら火属性という点」


 ほお。


「対策の為に大王炎亀アレキサンダー・タートルをこっそり飼育しててね」


 あんな危険なもん、こっそり飼育するな!


「まだ成長しきってない小亀を池に落としたら、そのまま溺れちゃったのよ」


 か、可哀想……。


「そこから研究を進めた結果、全身が水中に没した場合、大王炎亀アレキサンダー・タートルは炎を発生させられない事がわかったの!」


「つまり……泳げない?」


「あったりー♪」


 むう……それで水系魔術か。


「つまりは、炎を放出する箇所を水系魔術で覆い、ついでに顔も覆っちゃえば……」


「陸上でも水死すると? それぐらいの水なら炎で吹っ飛ばせるんじゃ?」


「それがね、少しでも濡れちゃうと炎を放出できなくなっちゃうのよ」


 マジで!?


「なら、光で目眩まししてから炎を封じちゃえば……何も怖くないんじゃない?」


「まーね。今までの研究で武器の効果がある場所もわかってきたし」


「剣でも刺せるっての?」


「うん。それが秘策の第二! 第三! 第四!」


 一気にぶち込んだな!


 ベチベチ! ダラ! ダララララララ……ジャジャジャン!


 ほら見なさい! エリザも急に対応できなくて、おもいっきり間違えてるじゃん!


「それは……爪と皮膚の境目!」


 深爪かよ!


「それと……目!」


 当たり前だよ!


「そして……ひよめき!」


 ひ、ひよめき?


「知らない? 赤ちゃんの頭の骨のつながってないとこよ」


 知るかっ!


「ていうか、大王炎亀アレキサンダー・タートルの頭蓋骨ってつながってないの!?」


「うん、何故か」


 大王炎亀アレキサンダー・タートルの生態が不明すぎるわよ!


「じゃ、じゃあ目眩ましして炎を封じて、チクチクと深爪しながら目をぶっ刺して、ひよめきをぶん殴れと?」


「そういう事ね」


「めんどくさいわあああ! 最初っから大砲撃ったほうが早いわああ!」


「あのね、そんな簡単に大砲が調達できると思う!?」


「できるわよ! ゴールドサンで量産体制が整いつつあるから、いざとなったら転移魔術で大量購入できるわ!」


「て、手軽に撃てるヤツ?」


「撃てるヤツ!」


 リファリスは口をパクパクさせてから。


「な、なら、目眩ましと炎封じと深爪目にプスッ頭パカンのコンボの後に大砲でズドン?」


「全部はしょって大砲でズドンでいいわよっ!!」



「えーっと、大王炎亀アレキサンダー・タートル対策完全版を発表します!」


 ジャジャン!


 また最初っから? エリザもようやるわ。


「まずは、強烈な光で目眩ましをします!」


 ジャジャン!


「次に、大砲を準備します!」


 ジャジャジャン!


「そしてドッカーン!! これでお仕舞い! 何と手軽な事か!」


 手軽じゃないけど、ずいぶん省略されたわね………全部リファリス案ばっかだけど。


「さあ! これであたし達を遮るモノは無くなったわ! 後は前進し、敵を粉砕するのみ!」


 ぱちぱちぱち!

 ひゅーひゅー!


 ……後ろで必死に盛り上げるエリザ、ご苦労様。一人の拍手は空しく聞こえるだけだよ。

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