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第二十一話 ていうか「私こそが大陸を救う為に現れた〝血塗れの淑女〟なのです!」「バンザーイ! バンザーイ!」

「あたしが来たんだからさ、大船に乗ったつもりでいなさいな。おっほほほほ!」


 ……おい、空気読めよリファリス。

 連敗に次ぐ連敗で、体力的にも精神的にも疲弊しきった男達が、必死に現状を打開しようと集まった会議室。その上座には、あまりにも場違いな豪華絢爛なドレスを着た伯爵夫人………ヘタしたら刺されるぞ。


「あの……あなたは一体……?」


 副長さんからごもっともな意見が出る。私が紹介する間もなかったからね。


「あら、申し遅れました。(わたくし)は新大陸共和国(仮称)軍務尚書を務めております、リフター伯爵夫人リファリスでございます。以後お見知り置きを」

「「「ぐ、軍務尚書……??」」」


 ……絶対に信じてもらえてないって……。


「え〜っと、私から補足します。リファリスは私の幼なじみで、元はB級冒険者で〝逆刃〟という異名があります。そのまま冒険者を続けていたらA級に到達してたかもしれないくらいの、凄腕の冒険者でした」


「え、A級冒険者並みの力があると?」


「そう考えてもらっていいかと」


「「「お〜〜!」」」


 あ、少しだけ受けが良くなった。


「し、しかし元なんだろ? しかもこんな場違いなドレスでくるような女、本当に大丈夫なのかぐべらしゃ!?」


「……リファリス様に対する暴言を吐く者は、命が要らない者と解釈致します。ご理解の程、よろしくお願い致します」


 ……メイドフォルムに移行したエリザの一撃(つっこみ)が、発言した男の鼻とアゴを砕いた。


「「「…………」」」


 うああ! また空気が険悪に……!


「エリザ、止めなさい」


「しかし……!」


「その男が言いたい事はよくわかります。エリザ、忠誠心の空回りは逆に主人の負担となりますよ?」


「!! も、申し訳ありません!」


「構わないわ、可愛いリファリス。あなたの忠誠心に対する応え、今夜ゆっくりとしてあげるから」


「は、はい!」


 ……今夜、エリザの腰が死ぬこと確定。


「あなた達の疑問に応えるならば、私からは一言だけで十分です…………〝血塗れの淑女〟と」

「「「な……!?」」」


 ん? リファリスの言葉で会議室の空気が変わった?


「な、何故お前が〝血塗れの淑女〟を知っているのだ!?」


「この事を暗黒大陸以外の人間が知っている可能性は……本人だから、という以外の理由がありまして?」


「ま、まさか……!」


 血塗れの……淑女??


「……ねえ、エカテル。あんたは知ってるの?」


「そんな……まさか……」


「……エカテル?」


「え!? あ、はい。知っています」


「じゃあ何なの?」


「そうですね……〝血塗れの淑女〟は、この大陸で最も有名な他の大陸の人です」


「……はあ?」


「詳しくはわかりませんけど、昔は暗黒大陸と他の大陸は、念話が頻繁に行われていたんです」


 そうみたいね。私達が本拠地に使ってた古い塔も、念話の中継点だったみたいだし。


「その時に進行していた事件のあらましが暗黒大陸にも伝わり、それをまとめた本が売り出され、爆発的なベストセラーになったんです」


「そのとき進行していた事件って……まさかリファリスの?」


「はい。国に裏切られた一人の冒険者が、国そのモノに復讐する。その事件をまとめた本の題名が〝血塗れの淑女〟なんです」


 な、何と!? リファリスは他の大陸で超有名人になってたとは!


「……腐敗しきった国を変える為に奔走していたのに、手酷く裏切られて一生消えない傷を負わされるシーンは、涙無しでは語れません


 ……………………はい?


「リファリスが? 腐敗しきった国を? 変えるために奔走??」


 自分が一番で快楽主義者のリファリスが? あり得ないっての。


「自分が大切にしてきたモノに裏切られた彼女は、ついに国そのモノを滅ぼす決意を固め、彼女を慕った者達と共に決起します」


 慕った者達? 確かリファリスは一人で戦ったはず……?


「悪鬼羅刹と呼ばざるを得ない国の者達は、捕らえた捕虜を身の毛もよだつような拷問にかけ、虐殺したといいます」


 いや、逆。自分を嵌めた連中を拷問にかけて虐殺したのはリファリス。


「そんな苦境を乗り越え、ついに国を滅ぼすことに成功した彼女は、その国を治めて理想的な国を作った……と締め括られています」


 いやいや、その国の跡地は雑草だらけの荒れ地になってますから。


「そんなヒロインとサーチさんが幼なじみだったなんて………はああ、私は何て幸運なんでしょう……」


 …………どこをどう間違って、ここまで美化されたのやら。


 (サーチ姉、本当の事は言わない方がいいと思われ)

 (当たり前よ、せっかく助けにきてくれたリファリスのやる気を削ぐようなマネはしないわ)


「? どうかしましたか、サーチさん?」

「何でもない何でもない」


「う、嘘だ! 〝血塗れの淑女〟が、お前なんかのはずがない!」


 そんなとき、リファリスを否定する意見が出始めた。


「そうだ! 自称するようなヤツ、大体は偽者だよ!」


「証拠はあるのか!? 証拠を出せ!」


「そうだ! 証拠だ証拠だ!」


 証拠かぁ……これはさすがに難しいかな?


 ズダァァァン!!


 ……リファリスが投擲した三ツ又の短槍は「証拠! 証拠!」と連呼していた男の前に突き立った。


「……その短槍の詳しい記述が、本にはあったはずです。それと照らし合わせてみて下さいな」


 あの短槍は無銘だけど、オリハルタイト製の一品モノ。まず偽物はあり得ないでしょうね。


「こ、この短槍は……! 記述通りに錘も付いている!」


「持ち手には細かい十字傷があるはず…………あ、あった!」


 調べ始めた人達の顔が、興奮して始めているのがわかる。


「そ、そんな! 単なる模造品では!?」


「ならば貴様は貴重なオリハルタイトをふんだんに使って、このような偽物を作る者がいるとでも?」


「そ、それは…………そ、そうだ! 本当にオリハルタイトなのかよ!」


「そうだ! それがオリハルタイト製だと言えるのか!」


 まだまだいちゃもんをつけるヤツがいる。なかなかしぶといな。


「ならば……これでどうだあああっ!!」


 ずごおおおおん!


 突然進み出た大柄な男が、巨大なハンマーを三ツ又の短槍に振り下ろした。結果。


 ビシ……ビシビシ……バキィ!


 鋼鉄製のハンマーは、粉々に砕けた。


「ほれ。このハンマーでも傷一つつかぬ強度。オリハルタイト以外にあり得るか?」

「「「…………」」」


 ここまでされては、もう文句のつけようがなかった。大柄な男は黙り込んだギャラリーを一瞥すると、前に進み出てリファリスに跪いた。


「この大陸の危機によくぞ駆けつけてくださりました。我等は貴女様を〝血塗れの淑女〟と認め、その軍門に下る事を誓約致しますぞ」


 その言葉が会議室に響き渡ると、会議室にいた正統王国軍は全員跪いた。


「どうかその知略によって、我等をお助けくだされ」


「……任せなさい。私がここにいる以上、この軍の勝ちは揺るぎない。あなた達を勝利へと導く事を約束致しましょう」


「……ははっ!」


「……〝血塗れの淑女〟様、万歳!」

「我等正統王国に勝利を!」

「「〝血塗れの淑女〟様、バンザーイ! 正統王国に栄光と勝利を!!」」


 ……うん。何なんだ、この状況。

あと数話で新章です。戦争編再開。

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