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第八話 ていうか、怪盗キ○ドならぬ怪盗サーチ参上!

 朝一番で、とんでもないことを思い出した。


「ねえ、フリドリ。覇者の御霊のことだけどさ……」


「……あ、忘れてた。返却しないといけないんだったな」


「売ったら高いかしら?」


「売るな! 一応国宝だぞ!」


「じょ、冗談よ冗談」


「……リーダーが言うと冗談とは思えねえんだよ……」


 そりゃそうでしょ、半分以上は本気だったから。


「でもさ、覇者の御霊って盗み出されたモノなんでしょ? ノコノコ正面から返却しにいって、私達は信用してもらえるかしら?」


「……まあ間違いなく泥棒と誤解されて、そのまま御用だわな」


「でしょ? ならやっぱり売り払って」


「だから売るな! 国宝でもあるけど、超ド級の危険物だからな、あれ!」


「……じゃあさ、どうすればいいのよ」


「え? そ、それは………………どうしましょうか、リーダー」


 都合が悪いときだけ敬語になってんじゃないわよ。無視を決め込んでいると、フリドリはエカテルに視線を向けた。エカテルは「やれやれ……」という顔をしてから。


「でしたら、見つからないように返却するしかないでしょう」


 ……と言った。やっぱりそれしかないわけね……。



 夜。明るいうちに近くまで来ていた私達は、実行組と待機組に分かれた。


「それじゃあ行ってくるわ」

「……何で俺まで……」


 私とフリドリが実行役。


「気ぃ付けてな。何かあったら念話やで」

「ご武運をお祈りしております」


 エリザとエカテルが馬車で待機だ。隠密的なことが苦手なエリザはともかく、何でアサシンの組織にいたエカテルを外したかと言うと。


「エカテル姐は理解不能なモノに引っ掛かって、スゲえ物音を立てる名人なんだよ。毒薬作り専属に固定された理由だ」


 ……エイミアみたいなのは、どこにでもいるのね……。



 今回忍び込むのは、エセ名古屋城ならぬオエード城。昔ながらの日本の城だ。


「じゃあ先にいくわよ……ほいっ!」


 まずは私がジャンプして壁の頂点に降り立ち、そこからロープを垂らす。ロープを伝って手際よく登ってくるフリドリを確認すると、私は先に壁の内側に降りた。


「リーダー、早いって。ちょっと待ってくれよ」


「うっさい。あんたもアサシンの端くれなら、壁の一つも飛び越えろっての」


「無茶言うな! 何mあると思ってるんだよ!」


 ロープを伝ってフリドリが降りたのを確認すると、城内の闇に紛れて動く。


「……どうやって歩けば、砂利道で足音を消せるんだよ……」


「練習するのみよ」


「練習だけでそこまでできるんなら、誰も苦労しないっつーの!」


「声がデカい!」


 ……そんなやりとりをしながら、徐々に城に近づいていく。え? 石垣を登らないのかって? イヤよ、疲れるし。


「……ストップ。二人分の気配。たぶん見回りね」


「ど、どうすんだよ! 隠れる場所なんてないぞ!」


「? 何で隠れる必要なんてあるわけ?」


「は?」


 トンファーを作り出すと、二人組の前に踊り出た。


「な、貴様!」

 ごっ! がっ!

 ドサドサッ


「……終わったわ。先に進むわよ」


「ちょ、ちょっと待てよ! こいつら、このままでいいのかよ!?」


「え、ああ、放っておいていいわよ。あんたの足跡を細工して、反対側に歩いたように見せかけてあるから」


「は?」


「それにこいつらも外側に向かって倒しておいたから、不届き者を追っかけてる感ありありでしょ?」


「…………」


「ほら、行くわよ。こんな儲からない仕事さっさと終わらせて、温泉に入りたいわ〜……」


「……元アサシンじゃなくて、元怪盗の間違いじゃねえかよ……」



 三の丸だか二の丸だか知らないけど、結構中は広くて複雑だ。


「おい、そっちは違うぞ。多分大奥だ」


 大奥まであるのかよ!


「ていうか、何であんたが知ってるのよ?」


「猛烈に女の匂いがするから」


「…………」


「な、何だよ! 何で後退りしていくんだよ!」


「……何か怖いっていうか、気持ち悪いっていうか……」


「あ、あのな、こんだけ白粉の匂いが漂ってれば、誰だってわかるって!」


 ……?


「……フリドリ、あんたってもしかしてハーフ?」


「……! な、何でわかったんだ?」


「いえ。単純に獣人か何かのハーフだから、鼻がいいのかと思っただけ」


「そういう事か。俺は厳密に言えばクォーターだ。母親が犬獣人と古人族とのハーフだったんだ」


「なるほど……。もしかして、今まで隠してた?」


「…………まあな。エカテル姐の待遇を見れば、嫌でも隠したくなるさ」


 ……ま、いいけどね。


「あんたさ、今は組織から抜けてるわけなんだし、私達は仲間なんだからさ……せめてエカテルには、ちゃんと言いなさいよ?」


「…………」


「な、何よ」


「お、俺……仲間だったんだな……」


「何だと思ってたのよ!?」


「奴隷。雑用係。パシり」


 ……扱いがヒドすぎたか。少し気をつけよう。



 やがて本丸に入り、宝物庫らしき蔵にたどり着いた。


「ここだ。ここに封印の祭壇があるはずだ」


「……何でそんなこと知ってるのよ?」


「ん、まあ………戻ってから話すよ」


 ……何かあるみたいね。


「わかったわ。でも知ってるんだったら、最初から道案内してくれてもよかったんじゃない?」


「わかるのは本丸くらいなんだよ」


 本丸しかわからないって……それじゃ、ここに住んでたようにしか思えない。まさか……!?


 ガチャ


「よし、開いた。入るわよ」


 ギィィィ……


「すぐそこに階段があるだろ? その上に魔方陣があるから、中心の台座に覇者の御霊をはめ込めばいい」


「わかったわ」


 言われた通りに階段を上がり、魔方陣の中心にある台座の前に立つ。


「……よし、台座に覇者の御霊を……」


 ミスリル製火バサミで玉を掴み、台座にはめ込んで……と。


 カチンッ

 ブウウウンッ


 うわ、魔方陣が起動した!? ヤバ……!


『シンニュウシャハッケン! シンニュウシャハッケン! クリカエス、シンニュウシャ……』


「うわわわわ! に、逃げるわよ!」


「リーダー、何をしやがったんだ!?」


「魔方陣がいきなり起動したのよ! どうやら防犯ブザーを鳴らすタイプのヤツだったみたい!」


「ちぃっ! 仕方ねえ、こっちだ!」


 ワラワラと宝物庫に気配が集まっている間に、私達は奥へと逃げた。


「この先に台所がある! その窓をぶち破れば、すぐ下は堀だ!」


「りょーかい! 泳いで逃げるわよ!」


 そう言って台所に駆け込むと、そこには初老のお婆さんがいた。


「あ、ヤバい」


「誰だい、あんた達は………………んん?」


 フリドリの顔をガン見するお婆さん。見覚えがあるみたい。


「……あ、あんたは……!」


 ま、まさかの定番!? ゴールドサンの跡取りとか!?


「この台所で働いてたキヌエさんの三番目の孫じゃないか!」


「な、何よ、その微妙すぎる正体は!?」


「微妙で悪かったな! それより行くぜ!」


 フリドリが堀へ飛び込む。私はお婆さんに振り返って。


「このことは内緒ね、お婆ちゃん♪」


 ウィンクをしてから、空中に身を踊らせた。

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