第六話 ていうか、新たなビキニアーマー…………装着! おお、これはジャストフィット!!
「ふんふふんふんふ〜ん♪」
「……ご機嫌ですねえ、サーチさん」
「あまりに機嫌が良すぎるのも気持ち悪いなおぼぅお!?」
「気持ち悪くて悪かったわね! あんたにも気持ち悪くなってもらおうかしら?」
「うわ、止めろよ!」
「命令、オネェ言葉でしゃべれ」
「嫌だあああっ!」
朝一番に旅籠を出発した私達。今回はエカテルとフリドリにメンバーを入れ替え、再びオレジーズ鍛治店を目指していた。エカテルはマンドラゴラの農家を訪ねるため、フリドリは魔神情報の収集のためだ。
「それじゃあエカテルの伝で、魔神の伝承を代々伝えてる家をみつけたんだ?」
「はい。マンドラゴラを栽培している農家の親戚だそうです。宮司のお仕事をされてるそうですよ」
宮司って……ゴールドサンって神社もあるのかよ!
「俺もゲンナイ先生からその話を聞いたん……うぐっ……のよ。ゴールドサンで一番大きい神社らしいぜ……うぐっ……わ」
……オネェ言葉、何か面白くないわね。
「命令変更、語尾にぴょんを付けなさい」
「嫌だぴょおおおおおんんん!!」
あ、この方がおもろいわ。
「最低一日は続けなさいよ」
「お、覚えとけぴょん!!」
は、迫力のカケラもない。ウケる……!
「フ、フリドリ、最高です……!」
「エカテル姐、何を笑ってるぴょん! いい加減にしないと、俺も怒るぴょん!」
「ぴょ、ぴょんぴょん言わないで……! お、お腹痛い……!」
「わ、笑うなぴょおおおおおんんん!」
うん、これでしばらくいきましょう。そんな私達の争いを尻目に、セキトはのんびりと馬車を引っ張っていた。
「さあさあ、オレジーズ鍛治店に到着しました! いよいよ最強ビキニアーマーとご対面よおおおっ!」
「サーチさん、すいませんけど私は約束の時間が……」
「あ、そうだったわね。お願いね、エカテル」
「お任せ下さい。私としましても、マンドラゴラで幾つか薬が作れそうですので、好都合なんです」
「わかったわ。気をつけてね」
「大丈夫です。セキトもいますし、それに……」
「…………」
「……フリドリもいますし」
……ち。あれから一切しゃべろうとしない。
「命令。一分に一回はぴょんって言いなさい」
「……ぴょん! リ、リーダー……! 覚えてやがれぴょん……!」
「……いつだったっけ……こっそり部屋に忍び込んできたことがあったわよね? 寝てる私に何の用だったのかしら?」
「ぎくぴょん!」
「……フリドリ? どういう事ですか?」
「し、知らないぴょん! 濡れ衣だぴょん!」
もしもーし、顔にめっちゃ出てるんですけど?
「……サーチさん、ちょっとお願いが。耳を拝借」
「いいわよ。ちゃんと返してくれれば」
「そういう意味じゃありませんっ!」
冗談よ、冗談。
「実はゴニョゴニョゴニョ」
「なるほど。ならこういうのはどうかな? 耳を拝借」
「だだだだ駄目です!」
エカテルは真っ赤になって耳を押さえた。あ、弱点だったっけ。
「わかったわよ。じゃあエカテルのをちょっとアレンジして……フリドリ」
「な、何ぴょん!?」
「命令。今日一日の移動は全部ウサギ跳びで」
「ちょっと待てえええええええええぴょん! 流石にシャレにならないぴょん!」
フリドリから少し離れる。するとフリドリは命令通りにウサギ跳びで移動する。
「畜生ぴょん! 畜生ぴょん!」
「しっかし……奴隷紋恐るべしよね……」
よし、実験。
「エカテル、命令!」
「ひぇ!?」
「この場で【ぴー】しなさい」
「んぎゃああああああ! 止めて止めて止めてえええっ!!」
「じょ、冗談冗談。ストップストップ!」
ま、まさかホントにやるとは……服を脱ぎ出した段階で止めてよかった。
「サ、サーチさん……! 恨みますよ……!」
「命令、今のは忘れて」
「はい、忘れました!」
楽勝楽勝。
エカテル達と別れた私は、早速オレジーズ鍛治店へ入る。
「こんにちはー! できてます?」
…………………あれ?
「もっしもーし?」
……誰も……いない?
「…………ぎゃあああああ! チカンヘンタイゴーカンマーー!!」
………ドタドタ!
「ばっかやろおおおっ! 店内で妙な叫び声をあげるな……って昨日の嬢ちゃんじゃねえか」
「いるじゃん!」
「ちょうど手が離せないとこだったんだよ。今々完成したぜ」
「マジで!? きゃっほぅーんぐはあ!?」
早速奥へ駆け込もうとすると、ウェスタンラリアットで押し戻された。
「げほげほ! な、何すんのよ!」
「馬鹿野郎! 靴を脱げ!」
……あ、失敬。
「完成……ハアハア」
「完璧……ハアハア」
「……ねえ、この二人は女性客の前には出さない方がいいんじゃない?」
「当たり前だ! 店の信用に関わるからな」
「……で、幼女が来たときはどうするの?」
「む……が、我慢するわい!」
……この店、いつかセクハラで訴えられるわね。
「それよりもほれ。早速試着してみろ」
「お、おおおおおおお!!」
そこには、グレイで統一された真新しいビキニアーマーが置いてあった。
「ビキニアーマーに肩当ても追加しとる。逆鱗が少し余ったのでな、それで作ってみた」
「お、おおお! いいじゃんいいじゃん!」
私は早速その場で着替える。
「こらあ! 隣の部屋で着替えてこい!」
「え、別にいいじゃん」
店主は黙ったままで後ろを指差す。
「「生着替え……ハアハア」」
「…………隣の部屋に行きます」
「……そうしてくれ」
隣の部屋に移動して着替えた私は、店主達のいる作業場に戻る。
「じゃじゃーん! ジャストフィット! ぴったりよ!」
「じゃ、じゃすとふぃと?」
「……気にしないで。文句なしってことよ。それより、このエプロンみたいなのは何?」
エプロンていうよりは……前掛け?
「それはドラゴンの皮膜だ。それだけで、足の防御は格段に違うぞ」
「ブーツも新品だけど、これもドラゴン装備?」
「無論。今までのブーツよりもさらに強度が増しているぞ」
「蹴りにも良さそうね。気に入ったわ」
硬くないから動きやすいし、胸のフィット感もバッチリ。
「それと注文通りにトップのこの箇所に、魔石を填められるようにしといた。これで前のビキニアーマーの魔石も装着できるだろ」
それじゃあソレイユから貰った魔石を、新しいビキニアーマーに移して……よし、カンペキ!
「ありがとうございました! 最高のビキニアーマーができました!」
「そう言ってもらえれば、こちらも頑張った甲斐があるというもんだ」
その場で代金を支払い、店を出る。無論一括!
「じゃあありがとな。俺にとってもいい経験になったよ」
「いえいえ。またお願いしますね〜」
上機嫌で店を出た。だけど、私はこの時点でビキニアーマーの重大な欠陥に気づいてなかった。何故この時点で気づかなかったのか、悔やまれる。
ようやくビキニアーマー紀行に少し追いついた。