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第二話 ていうか、関所にちょんまげ、ギヤマンに旅籠!?

「……ねえ。ずっと向こうに門が見えるんだけど……?」


 ……どう見ても和風テイスト溢れまくりなんですけど。


「あ、関所ですね。ここは手形は必要ありませんから、『薬草を採りに来ました』とでも言って下さい」


「わ、私が? 自分で言うのも変だけど、ビキニアーマー(このかっこう)じゃ薬草採りとは思われないんじゃ?」


「大丈夫です。そのまま行って下さい」


 ……まあいいか。いざとなったら関所をぶっ潰しちゃえばいいんだし、そのまま行こ。


「そこの馬車、止まれええええっ!」


 関所に近づくと、木製の棍を持った男達に止められた。ちょ、ちょっと、その格好って……!?


「何用があって此処に来た? 答えい!」


「え、えっと……お役目ご苦労様です。薬師の供で薬草採りに参りました」


「薬草採りとな? どこで何を採るつもりだ?」


 え、それは予定にない質問なんですけど!? 焦った私の後ろから、エカテルがフォローしてくれた。


「はい、この先の山の斜面に生えているマンジュ草を採集する為でございます」


「マンジュ草か、あいわかった。通るがよい」


「ありがとうございます」


 ギギギィィィ……


 よ、良かった。平和的に通れたわ。それよりもあの格好って……?



「今日は採りませんけど、この山に生えるマンジュ草は貴重品なんですよ。だから護衛を連れた薬師がよく来るんです」


「なるほど、だから私でも無問題で通れたのか。それより、あの門番よ門番!」


「はい? 門番がどうかしましたか?」


「完全に一致したわけじゃないけど、あの格好って絶対にサムライよね!?」


「え!? サーチさん、お侍さんを知ってみえたんですか!?」


「流石はリーダー、よく知ってたな」


 ……あ、そっか。前の世界の常識が、こっちの世界で常識ってわけじゃないのね。ただ、茶髪のおじさんがちょんまげ結ってるのは、さすがに違和感ありありだったけど。


「ちょんまげってサムライだけなの?」


「ちょんまげまで知ってるんですか……! ちょんまげは単なる流行りですので、結ってる人もいれば普通の髪形の人もいます」


「あ、そうなんだ。それにしても、ちょんまげが流行ってるんだ……」


 ゴールドサンの人の価値観って……。


「ええ。とっても格好良くないですか、ちょんまげって!」


 ………エカテルの価値観って……。


「……駄目だ。どうしてもちょんまげをよく思えねえ。理解不能だ」


 がしっ!


 思わずフリドリと握手を交わした。良かった、同じ価値観のゴールドサン人がいたよ!


「……ウチも理解不能やな……」

「へんてこへんてこ〜!」


 がしがしっ!


 思わず円陣を組んじゃう私達。パーティのチームワークを変な形で確かめることになった。


「そ、そんなに変でしょうか?」


「変じゃないんだけど……ま、蓼食う虫も好き好きって言うしね」


「はい?」


 江戸時代の人達からしたら、私達のほうが変だろうしね……。ビキニアーマーなんか見たら卒倒するだろうな。


「……俺が浮気する理由がわかるだろ?」


「それとこれとは話が別。命令、馬車に走って付いてきなさい」


「え、ちょっと、それは勘弁」


 何か言い繕うのを無視して、フリドリを馬車から蹴落とした。


「ぎゃああ! ちょっと待ってくれ! 散々ペダルを漕いだ後にこれはキツいって! 死ぬってマジで! おおおおおおおおおおいい!!」


 後ろでぎゃあぎゃあ騒ぐフリドリはスルーして、私達は馬車の快適な旅を続けた。



「ここがオサカーの町で、ゴールドサンの商業の中心です。で、この町の更に向こうが……」


「俺達の出身地であり、ゴールドサン公国の首都のオエードだ」


 ……オサカーにオエード? 何か聞き覚えが……。

 馬車を走らせること二時間、私達はゴールドサンの最初の町であるオサカーに到着した。町並みはまさに江戸時代って感じだ。


「何や、ここ。建物に全然石が使われとらんやん」


「がらすもないよ」


 余談だけど、この世界には意外とガラスが普及してる。


「がらす? ギヤマンの事ですか?」


 ギヤマンって……また古い言い方を……。



 (注! ギヤマンとは、昔のダイヤモンドの呼び方ですが、ガラス製品の事もこう呼んでいたそうです)



「ぎやまん? なにそれ?」

「ギヤマンはギヤマンですよ」

「がらすのことだよね?」

「がらすがギヤマンです」

「ぎやまんはがらすなんだ?」


「ドナタ、ギヤマンはガラスの別名。エカテル、ガラスはギヤマンの別名」


「「なるほど!」」


 このまま放っておいたら、いつまでガラスギヤマン論争が続いたんだろ。


「往来で何をやってんだよ。早く旅籠(はたご)を探そうぜ」


 旅籠って……それも相当古い言い方よ?


「はたごって?」


「旅館のことよ」


 ……旅籠旅館論争が起きることはなかった。



 夕方。旅館……じゃなく旅籠で夕ご飯を食べながら、今後のことを話し合っていた。


「それじゃあ大王炎亀アレキサンダー・タートルの標本の件は、フリドリが当たりをつけてくれるのね?」


「ああ。ゲンナイ先生なら伝がある」


「なら任せたわ。アレックス先生からの質問状も預けるから」


「了解」


 じゃあ私は……♪


「いけませんからね?」


 ギクッ!


「な、何が?」


「任務が最優先ですからね? サーチさんの個人的な用件もあるでしょうけど、大砲製造の件の方が重要ですからね?」


 う、うぐぐ……!


「それに魔神の伝承に関しても調べないといけないんですよ? わかってます?」


 うぐっふぅ!


「まあまあ、待ちぃや」


「エリザさん?」


「大砲に関しては、やっぱ武器関係の職人を探さなあかんやろ? ならサーチんにそれを担当してもらえば、ビキニアーマーを作れる職人と一緒に探せるんとちゃう?」


「ああ、蛇の道は蛇ってヤツですね。そういう事でしたら異論はありません」


「さ、流石エリザ!」


「ちょい待ち。感激するのはまだ早いで」


 ……? まだ何かあるの?


「エカテルは薬師やから、マンドラゴラはわかるやろ?」


「はい。栽培してる農家も知ってますよ」


「なら魔神の伝承についてはエカテルに任せるさかい、ついでにマンドラゴラも手に入れてもらえへん?」


「それぐらいでしたらお安い御用です。任せて下さい」


「ああもう! エリザもエカテルも愛してる!」


「わ! くっつくなや………エ、エカテル。ウチはサーチんに付いてくわ。私用に奔走せんように見張っとかなあかん」


「わかりました。ご武運をお祈りします」


「わたしはえかてるせんせえについてく〜♪」


「はいはい、一緒に行きましょうね〜」


「なら私もがんばりましょう! スリスリ」


「だからくっつくなって言うとるやろ!」



 ……隣から「うるさい!」と苦情がくるまで、私達の会議(さわぎ)は続いた。

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