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第一話 ていうか、さあ、黄金の国ジパング……ではなく、日の出の国ゴールドサンへ!

「……あ。陸地や。陸地やで〜」


 …………んあ? 陸地?


「サーチん、起きいや。陸地やで」


「ん、わかった。ありがと」


 バチャバチャバチャバチャバチャバチャバチャ……


 ……よくこの騒音の中で寝てたわね、私。


「やったああ、りくちりくち♪」


「ドナタちゃん、あんまりはしゃがないでね。サーチさんが珍しく涎を垂らして(・・・・・・)寝てますから」


 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!


「ちょっと、エカテル? そういうことはこっそりと教えてくれないかしら?」


「ひ、ひえ!? ササササーチさん起きてみえたんですか!?」


「今エリザが起こしてくれたのよ。ホントに頼むわよ?」


「わかりました」


「あ、さーちん。よだれみつけたのわたしだよ〜♪」


「そ、そお? ありがとね〜……」


 い、一番見られたくなかったドナタが第一発見者かよ……。


「おーい、フリドリ大丈夫かぁ〜?」


「ひぃひぃへぇへぇふぅぅぅ!」


 ん? ラマーズ法?


「三日三晩よう漕ぎ続けとるわ。感心感心」


「はっはっはっ……だ……だったら……ひぃひぃひぃ……代わってくれよ!」


「嫌や」

「私も」

「あしとどかない」

「……命令。ラストスパート」


「ひぃひぃひぃひぃひぃひぃぃぃぃ!! お、覚えてやがれぇぇぇぇ!!」


 汗だくでフラフラだったフリドリは、私の命令によって漕ぐスピードを早めた。


「あと一時間もすれば到着するわ。そしたら好きなだけ休憩しなさい」


「ひぃひぃひぃひぃひぃひぃひへひへひへひへひへひへひぃぃぃぃ……!!」

 バチャチャチャチャチャチャチャッ!!


「おー、結構スピードアップしたで」


「……それにしてもさ、結局一匹もモンスター出なかったわね」


「そうですね。こちらとしては大変ありがたかったんですけど」


 ゴールドサンまでの海路は静かで波も少なく、大変に穏やかなのだ。その分モンスターも棲みやすいらしく、他の海路では考えられないくらい出没する……って聞いてたんだけど。


「それならだいじょうぶ〜♪ てらろどんにたのんでやっつけてもらった!」


 か、海王を私達の航行の露払いに使ったわけ!? どうりでたまに足元がゾワゾワするわけだわ……!



「ひぃ……ひぃ……ふぅ……」


 強制ラストスパートのおかげで、一時間もかからずに砂浜に到着した。その代わりにフリドリは半死半生になっちゃったけど。


「エカテル、回復してやって」


「さ、流石にこの状態を回復するのは……」


「次の町まで歩く体力分でいいから」


「はあ……やってはみますけど……ふーぅっ!」


 ……体力回復薬って、普通は吹き掛けるんじゃなくて飲ませるんじゃね?


「……うぐっ!? ゲホゲホゲホ……な、何だこりゃ!?」


 あ、元気よく立ち上がった。


「今から半日くらいは大丈夫です。ただ、その後にとんでもない疲労感に襲われるデメリットがありますけど」

「おおいっ!?」


 ムリヤリ体力を底上げしたわけね。


「エリザ、半日で次の町に行ける?」


「ん〜……ギリギリやな」


「ならすぐに出発ね。この船を収納するわ」


 そう言うと私は魔法の袋(アイテムバッグ)の口を、アヒルの船の先にくっつける。


 ………ぼひゅんっ! げぇぇぇっぷ!


 瞬時に吸い込まれて消える船。それにしても、何でこの袋は大きいモノを収納するとゲップするの?


「……凄いですね。普通の魔法の袋(アイテムバッグ)なら、絶対に容量オーバーですよ」


 でしょうね。これは炎の真竜(ファイアマスター)のお手製の品だから、モノが違う。ゲップはマジで謎だけど。


「あ〜あ、馬車が持ってこれればなあ……」


「仕方ないですよ、馬を運ぶ事は不可能でしたし……」


 アヒル船に乗る前に、一応馬車が収納できるかは試してみたんだけど……。


「いくら特別製の魔法の袋(アイテムバッグ)でも、生き物は収納できなかったからね〜……」


 馬車そのモノはOKだったんだけど、セキトは弾かれた。仕方ないので「この辺りで無難に過ごしてて」と言って放したんだけど……。


「大丈夫なんですか? あれだけ立派な馬ですから、誰かに連れていかれちゃうかも……」


「大丈夫よ。そんなタマじゃないでしょ、セキトは」


 ブルヒーン!


「ほらね、セキトも『その通り』って返事して…………へ?」


 ……恐る恐る後ろを振り向くと……。


「セ、セキトぉ!?」


「う、嘘やろ!? どうやって此処まで来たん!?」


「し、しかも私達より先に……!」


 全身びしょ濡れのセキトがいた。


「あ、せきとは『およぎとくい』っていってたから、ついてこさせたの」

「はあああああっ!?」

「わたしたちのうしろを、ずっとおよいでたんだよ」


 ずっと泳いでたって……その体力にもびっくりだけど、よくモンスターに襲われなかったわね……。


「ずっとてらろどんがまもってくれてたの。ねー、せきと!」

 ブルヒーン!


 はいはい、そうですか。セキトと統率者(ガバメンター)は何でもありかよ。


「でも助かったわ。これでかなり移動速度が上がるわね」

「大変やったろ。おおきに、セキト」


 ブルヒーン!


「それじゃ馬車を出すから、みんな離れててー」


 アイテム欄から馬車を選んで、魔法の袋(アイテムバッグ)の袋を開けた。



 カッポカッポカッポカッポ

 ガラガラガラガラ


 ……慣れってヤツなのかな。この音を聞くと妙に落ち着く。


「この調子なら夕方までには着けそうね」


「そやな。何より太陽が恋しいわぁ……」


 今走ってる辺りはまだ薄暗いけど、さらに進めば太陽が拝めそうだ。山の向こうから後光が見えている。


「太陽なんて久しぶりです。今のうちに日焼け対策をしておかないと」


「お、そうだな。俺も」


「……日焼け対策って、フリドリまでしなきゃいけないの?」


「リーダー達みたいに、太陽の下で普通に暮らしてたわけじゃないからな。暗黒大陸で一日中真っ暗な生活してりゃ、慣れない太陽光で一気に日焼けしちまうようになっちゃうさ」


「それも火傷クラスの日焼けです。目も照り返しでやられちゃいますね。その為の薬がありますから大丈夫ですけど……はい、フリドリとドナタちゃん並んで〜」


 二人を並ばせたエカテルは、薬包を広げて。


「ふぅーっ!」


 ……だからさ、飲ませた方が効果があるんじゃね?


「……よし。エカテル姐、ありがとさん」

「けほけほ! こなっぽい〜」

「ドナタちゃん、日焼けしたくなかったら我慢よ」

「は〜い」


 そう言ってエカテルは自分にも振り掛ける。


「……はい。これで全身の日焼け対策、及び目の保護効果もバッチリです」


「ねえ、エカテル。あんたの薬も何でもありなの?」


「へ?」

補足。フリドリの敬語は命令しても半日も経たずに解除されます。こまめに命令しないといけないため、サーチも半分面倒になっています。

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