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第十八話 ていうか「海の底へ行ってみたいと思いませんか?」「やだ」「じゃあ命令」「ぎゃあああああ!」

 フリドリを伴って、船着き場の管理事務所へとんぼ返りする。


「ちょっと! さっきのお姉さん!」


「はーい……ってあなたは先程の……」


「聞きたいことがあるんだけどさ! フリドリまかせた!」


「任されたっす!」


 フリドリは受付嬢の前に立つと。


 がしっ


 両手をしっかりと握り。


「お嬢さん、今夜僕と、夜明けのランデブーをうぐっふぉ!?」

「アホなことしてないで、さっさと話を進めなさい!! ………ってあれ? フリドリ?」


 本日二発目の股間攻撃が効きすぎたらしく、フリドリは口から泡を吹いて気絶していた。


「しまった、強く蹴りすぎたか……まあいいや。私から聞こ」


「あ、あの……??」


「あ、ごめんね。実はさ、今の時化が起きる前に沈没した船ってなかったかな〜……って調べてるんだけど」


「時化の前にですか? ……少々お待ち下さい……」


 受付嬢は奥へ引っ込んだ。すると同じタイミングで、エカテルも事務所内へ駆け込んできた。


「すいません遅れました………フリドリ?」


「ああ、適当に回復しといてやって」


「な、何があったんですか?」


「事情を聞こうとしたお姉さんをいきなり口説き始めてね」


「またですか!? まだ直ってなかったのね、そのクセ……」


 クセなの!?


「とりあえず起こしておきますね……ふーっ」


 エカテルは薬包を取り出して広げ、倒れているフリドリへ吹き掛ける。


「………………痒い……痒々々々々々々!! うっわ、メチャ痒い!!」


「あ、起きた。早かったわね」


「痛みを痒さに変換する薬です」


 ……だから【いやん】な場所を掻きむしってるのか。さぞかし痒いんだろうな。


「…………すいません、お待たせしました」


 すると、何か書類を手にした受付嬢が戻ってきた。当たりかな?


「確かに時化が起き始める少し前に、ゴールドサンからの船が一隻沈没してました」


「だって。どういうことなの、フリドリ?」


「痒々々々々々!!」


「……エカテル、しゃべれるくらいにはして」


「はい。ふーっ」


「痒々々々々々々々……痒い痛い痒い痛い痒い痛いぃ!!」


「フリドリ、あんたが睨んだ通りだったわよ」


「痛い痒い……や、やっぱりか……痛い痒い……お嬢さん、その船の積み荷に『水厳禁』って扱いのヤツはなかったか? ……痛い痒い」


「え? は、はい。今すぐに調べてきます」


 受付嬢は再び奥へ引っ込んだ。ごめんなさいね。


「水厳禁って……何か爆発物でも積んでたの?」


 水に反応して爆発するモノもあるのだ。


「違う……痛い痒い! 俺の考えが……痛い痒い! 正しければ……痛い痒い!」


「痛い痒いって鬱陶しいから、結論出るまで黙ってて」


「だ、誰のせいでこうなったと……!」


「誰のせいかしらね?」


「うぐ………す、すいません……」


 そんなことを言ってる間に、受付嬢が戻ってきた。ホントにご足労をおかけしてます。


「あなた方の言う通りでした。水厳禁の品物が一点積み込まれてますね」


「痛い痒い……それは〝覇者の御霊〟ってアイテムじゃありませんか?」


「そ、そうです! よくわかりましたね!」


「……助かりました。ありがとうございます……」


 そう言ってフラフラと出ていくフリドリ。何か足元がおぼつかないような?


「は、〝覇者の御霊〟ですって……!?」


 ……? エカテル?


「どうしたの、エカテル?」


「え!? い、いえ。何でもありません、何でも……」


 ……気になる。


「命令。しゃべりなさい」


「むぐ………は、〝覇者の御霊〟はゴールドサンに伝わる宝玉です」


「宝玉?」


「水の力を自在に操る事ができる、と言われているゴールドサンの国宝です」


「なるほど……ありがと。これで読めたわ」


 この時化の原因は、船と一緒に沈没した〝覇者の御霊〟ね。



 外にいたフリドリを捕まえて問い質す。


「あんたの考えは当たってたみたいね。で、いつから気づいてたの?」


「……穏やかな海が突然荒れだしたって聞いた時だ。ゴールドサンには〝覇者の御霊〟に関する言い伝えが沢山あるんだ」


 あ、そうだ。言い伝えで思い出した。


「あんたさ、魔神について聞いたことない?」


「ま、魔神だと? どうしてお前が知っ……うぐ……リーダーが知ってるんすか?」


「まあ……いろいろあってね。で、その口振りだと、魔神のことを知ってるのね?」


「知ってるも何も……今話題になってた〝覇者の御霊〟の覇者、それが魔神の事だよ」


 ………はい?


「昔の言い伝えで、この世界を統一した覇者が、何らかの事件を境に魔神となり、この世界に災いを振り撒くようになったんだと。その魔神が使ってた水晶が〝魔神の御霊〟と呼ばれて後世に伝わり、やがて〝覇者の御霊〟と呼ばれるようになったんだ」


 ま、まさかここで魔神と繋がるなんて……。


「ていうか、魔神が使ってたようなモノなんだから、相当ヤバいんじゃないの?」


「だから国宝に指定されて、厳重に封印されてたんだよ。くそ、一体誰が持ち出しやがったんだ!!」


「……なら、回収しちゃえば一件落着なんじゃないの?」


「か、回収って海の底に沈んでるんだぞ!? しかも時化で大荒れの状態で!」


「問題はそこなのよね。こんなときに人魚族でもいればなあ………………あ」


 そうだ。海の生き物に手を借りればいいんだ。



「……じゃあわたしのあんがさいようなのね!」


 そうだったわ。ドナタの≪統率≫(ガバメント)があったわ。


「それじゃあ、うみのもんすたーとともだちになってくる!」


 そう言って海岸に向かうドナタに、エカテルが付き添って行ってくれた。


「よし、これでモンスターが取ってきてくれれば解決ね」


「いやいや、それは難しいだろ」


「はあ? 何でよ?」


≪統率≫(ガバメント)の場合は、自分の手足として動かせる程、器用な事はさせられない。モンスター程度の知能じゃ〝覇者の御霊〟の回収なんてできるかどうか……」


 ……あんた、ヴィーがいなくて良かったわね。ヴィーに聞かれてたら、石にされて粉々コースだったわよ。


「……でも意思のないモンスターじゃ荷が重いのは事実ね。だったら、誰か付いていくしかないか」


「……な、何だよ。『誰か』の辺りから俺をジロジロみて」


「ん? いやね、命令したらやってくれるかな〜って」


「死ぬわっ!! 命令されたら何でもできるわけじゃねえよ!」


 ちぇ、使えない。どっかの英霊さんみたいにがんばりなさいよ。


「海の底へついていくんなら、相当な水除けの護符が必要だぞ」


 水除けの護符? そんな便利なモノがあるわけないじゃない。何よりいくらすると思ってんのよ。せめて簡易護符(シンプルアミュレット)並みに安ければ……………あ。


「そうだ。簡易護符(シンプルアミュレット)があるんだった……」


 これで解決だ。

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