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第四話 ていうか、可憐な少女がしゃがみ込んで、何かを摘んでいる。その手の中には……。

「らん♪ らんらららんらんらん♪」


 ブチッブチッ


 …………ど〜も〜。毎度お馴染み、サーチでございます。


「らん♪ らんらららん♪」


 ブチッブチブチッ


 青い異国の服を着たお姉様が出てきそうな歌を口ずさんでるのは、一生懸命草むしりをしているエカテル。旅に出てから二日目、なぜ馬車を止めて、道端で草むしりに精を出しているかというと……。


「あ、ここには痛み止めが♪ 殺菌作用のある草が♪ あ、これは煎じて飲むと温まるんですよ〜♪」


 馬車で走行中に道端に生えた薬草を発見するという、驚異の視力を発揮したエカテルが原因だった……。



「ふんふんふんふふんふふんふんふんふふん♪」


 ゴリゴリゴリゴリゴリ……


 …………ど〜も〜。またまた登場、サーチでございます。


「ふふふ〜〜ん♪ ふふふ〜ん♪ ふ〜ふふふ〜ん♪」


 ゴリゴリゴリゴリゴリ……


 なぜか一生懸命走りたくなりそうな鼻歌を歌ってるのは、薬草をすり潰しているエカテル。そう、今は馬車の中で、一生懸命調合に精を出して……。


「ていうか、何でそのテーマ曲知ってんのよ!?」


「きゃっ!?」


「最初のはともかく、次のヤツは渋すぎるわよ!? あんた一体何歳なのよ!?」


「え、えっと……? 今年で八十八歳ですけど……?」


 さすがは半分エルフだな!


「マジで気になって仕方なくってさ! 何でその曲を知ってるわけ!? ねえねえ!」


「な、何で知ってると言われましても……」


「サーチん? 今は馭者の番やない?」


 ………あ。



 頭の良いセキトが止まっていてくれたので、難を逃れることができた。今日は特別にニンジンを支給してあげよう。



「孤児院の先生が?」


「はい。何かと口ずさんでたので、私もいつの間にか覚えてたんです」


 お昼の休憩の際、例の鼻歌のことを聞き出すと……上記の通りだった。


「……エカテルが口ずさんでたメロディ、私の前世で有名だった曲なのよ」


「そ、そうなんですか………って、えええええええええええ!? 前世の事を覚えてるんですか!?」


 ……あ。そういえば説明してなかったわ。


「サーチんは超稀少スキル≪前世の記憶≫持ちなんや。重装戦士の割りに、妙に身軽やろ?」


「は、はい。普通は壁役ですもんね、重装戦士って」


「それも≪前世の記憶≫の恩恵らしいで。サーチんの前世はアサシンやったらしくてな、≪気配遮断≫や≪忍び足≫、果ては≪急所攻撃≫(ピンポイント)まで覚えてるんやで」


≪急所攻撃≫(ピンポイント)!? アサシンのマスタースキルを!?」


 なかなか物知りみたいね、エカテル。


「でしたら、何故に重装戦士なんですか?」


「ああ、それはビキニアーマーのために決まってるじゃない」


「……そ、それだけですか?」


「それだけよ」


「ニンジャとか軽装戦士とか、アサシンのスキルを活かせる職業はいっぱいありますよ!? それなのに何故!?」


「そんなの決まってるじゃない」


 私はビシリ! とビキニアーマーを指差し。


「ビキニアーマーを装備できるのは、重装戦士だけだからよおおっ!」


 ……………あれ? エカテルの反応がない?


「………………よ、世の中には色んな方がいらっしゃるんですね……」


 どういう意味よ!


「そやで〜……サーチんが変人やから、同じパーティのウチらも大変なんや……」


「……鎧の上にエプロンもどうかと思いますが……」


「あははは。エリザも変人認定されちゃったわね」


「じゃかあしい!」


「…………私、大変な人達の奴隷になってしまったのかもしれない……」


 あら? 今ごろわかったの?



 ブルヒヒィィン!


 昼ご飯の片づけ中、セキトが嘶いて、私達に何かを知らせてきた。


「……! みんな、敵よ!」


「な、何やて!?」


 真っ先に駆け出した私の目に飛び込んできたのは……地面から生えた手!?


「何これ!? きっもちわる〜……えいっ!」


 ばごっ!


 羽扇で叩くと、土の手は簡単に砕けた。よ、弱いな。


「サーチん、後ろや!」


 エリザの声に反応して、前転して避ける。


 バゴオ!


 空を切った土の手は、エリザの盾によって砕かれる。


「な、何なのこれ?」


「マッドスライムです! 地中に本体がいますから気をつけて!」


 地中に本体!? 厄介ね!


「土の手をいくら砕いても、本体を攻撃しない限り倒す事はできません!」


「本体を!? どうやって攻撃しろってのよ!!」


 襲いかかってくる土の手を砕きながら、何か手はないか考える。


「ウチに任せとき!」


 エリザはそう言って高くジャンプする。両手の盾と背中の盾の先端を合わせて、回転しながら地面へと……ってまさか!?


「いくでえええっ!! 三盾流奥義、杭打ちの舞!!」


 ちょっと、そんなんで穴が掘れるわけ……。


 ギャルルルルルル!

 ズゴゴゴゴ!


 ウッソだああ! 何よ、この非常識な簡易ドリル!?


 ズゴゴゴゴ……ブジュウ!!

 ピギャアアアア!!


「あ、到達したみたいね」


 しばらくすると、土の手の動きが止まり……そのまま崩れていった。


「……倒したみたいね。ふう」


 ごそごそっ


「……ぶはあ。殺ったで〜」


「お疲れ様。助かったわ」


「この技、土だらけになるから嫌なんや」


「次の宿場町で旅館に泊まるから、それまで我慢しなさい」


「わかってるって……ペッペッ!」


「エカテル、終わったわよ。さっきはナイスな助言だったわ…………って、あれ? エカテルは?」


「へ? ウチが知るわけないやん」


 あ、あれ?


「エカテル? どこに行ったの?」


 お、おかしいな。確かに気配は感じるんだけど……?


「あ、終わりましたか……やれやれ」


 !? 声だけ聞こえる!?


「エカテル! どこにいるの!?」


「此処です、此処ですよ……えい」


 ぼこっ


「うわ!? い、岩が動いた!?」


「サーチさん、私です、エカテルですよ……ぱっかーん」


 勝手に動き出した岩が割れ、中からエカテルが出てきた。桃太郎かよ!


「な、何で岩から出てきたんや?」


「身の危険を感じましたので、岩に擬態して隠れてました」


 擬態!?


「それって……種族スキル?」


「いえ、違います。私のオリジナル調合です」


 ち、調合で擬態するなんてムチャクチャだよ!


「岩形草という岩に擬態する性質のある薬草があるんです。それを粉末にして、後は私のオリジナルレシピを加えれば、岩に擬態できる粉ができます」


 ん、んなアホな……。


「その前にやな、エカテル、何で岩に擬態してたんや?」


「え、だって、戦いって血がドバッと出るじゃないですか」


 ……あ、そういえば「血が苦手だ」って言ってたっけ……。


「じゃあ、血を見たくないから隠れてたわけ?」


「隠れてた……と言うより、目を瞑ってたと言った方が正しいです」


 似たようなもんだよ!


「なあ、エカテル。これだけの薬を作れるんや。援護に使えそうな薬も作れるんやないか?」


「そうですね。爆発したり、凍りついたり、痺れたり……」


 それって薬なの?


「ならそれで援護できるんちゃう?」


「………………あ、そうですね」


「ちょっと待って。今まで気づかなかったわけ?」


「はい」


「……じゃあ戦闘のときはどうしてたのよ」


「逃げてました」


 ……戦闘面では期待せずにおこう。

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