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閑話 エカテルさん、無双する

「……それじゃあ……エカテルの加入を祝して……乾杯(プロージット)!」


「「「乾杯(プロージット)!!」」」


 ゴックン!!

 パリン!! ガシャアン!


「ちょ、ちょっと! いきなりグラスを叩き割るってどういうことよ!」


「な、何でウチはこないな事してもーたん?」

「つ、つい……としか言い様が」

「わ、私としたことが……! 大変申し訳ありません!!」


 ……たく。私は金髪の孺子じゃないっつーの。


「そもそもサーチんが乾杯(プロージット)なんて言うからあかんのやで?」


「わ、私が悪いって言うの!?」


「そのような事はありませんので! 割れたグラスは私が片付けますので、サーチさん達はお下がり下さいませ!」


「ちょっとエカテル。そんな卑屈にならなくてもいいのよ?」


「卑屈も何も、私は奴隷ですから」


 あ、そっか。


「じゃなくて、割ったみんなで片付ければ……」


「いえ、そんなに手間ではありませんので」


 そう言ってエカテルは、懐から何かを取り出した。あれは……薬包?


「少し離れて下さい……ふぅ!」


 広げた薬包に息を吹き掛け、薬を割れたグラスの上に散らせる。すると……。


「な、何や!? 粉がかかったガラス片が溶け出したで!?」


「ガラスの成分に反応して熱を発する薬です。数分でガラスは無くなりますよ」


「へえええ! めっちゃ便利じゃない! エカテルってスゴいモノ作れるのね!」


「え、いや、それほどでも……」



「……さて、改めて……かんぱーい!」


「「「かんぱーい!」」」


 ゴクッゴクッゴクッ


「「「「……ぷっはあ〜〜!!」」」」


「ああ、おいしい! やっぱ夏はビール……じゃなくて麦酒に限るわね!」

「ウチもそう思うで! このショワショワ感が何とも……!」

「でも私達未成年じゃ……」

「「とっくに成人しとるわ!!」」


 こっちの世界の成人は十五歳なんだよ! 一年の長さも違うから、十五歳=前の世界の二十歳なんだよ!


「でも私は二歳くらい」


 うっ! そうだった!


「な、ならジュースでも飲んでなさい!」


「でも身体構造的には立派な大人だから飲む」


 結局飲むのかよ!


「そういえばエカテルはお酒平気なの?」


「はい。全く飲めません」


「「「なら飲むなよ!!」」」


「あ、大丈夫です。この薬を飲みましたから」


「そ、それは?」


「体内でアルコールを無害化する薬です。これを服用しますと、水を飲んでいるのと何ら変わりません」


 スゲえな! 前世でその薬があったら、めっちゃ需要があったと思うよ!


「そやなあ……毒を作れるっちゅー事は、その逆も然りやもんな」


「はい。実家では工作員の体調管理も重要な仕事でしたから」


「実家って……」


「……あまり大声で『組織』とは言い難いじゃないですか。隠語ですよ」


「あ、そうなの? それじゃあご両親は?」


「……私は捨て子でして……」


「あ、エカテルもそうなんだ。私もだよ」


「え? サーチさんも?」


「ウチも似たようなもんやで」


「……私は……?」


 特殊。


「そうなんですか……私達、似た者同士なんですね」


「家族が健在なのはリルとエイミアかな」


「リルさんと……エイミアさん」


「あとはマーシャンとヴィーっていう仲間もいるわ。そのうち会えるわよ」


「そうですね。機会があれば」


「よし、まだまだお酒はたくさんあるから、どんどん飲み干すわよおおっ!」


「「「おーっ!」」」



「も、もう飲めへん……うっぷ」

「世界がぐるぐる〜……私はヘロヘロ〜……」


「何よ、あんた達。これくらいで情けない」


「い、いや、サーチさん? 一人で何百本(・・・)空けたと思ってるんです? ここまで付き合っただけでも、お二人は健闘された方ですよ?」


「何よ。ヴィーならまだイケたわよ?」


「ど、どちらにしてもお二人は寝かせた方がいいでしょう」


「そうね、仕方ない。部屋まで運びましょうか……でも酔っ払いって重いのよね」


「私にお任せ下さい」


 え? エカテルに?


「……でも薬師は『力』は弱いでしょ? あ、薬でパワーアップするとか?」


「出来なくはないんですが、副作用で髭が生える(・・・・・)ので嫌なんです」


 ヒゲ!? それはイヤだな。


「ですので違う方法を……ふぅ!」


 エカテルは取り出した薬を二人に吹き掛ける。すると。


「もう飲めへん……ぐぅ」「ぐるぐるぐるぐる……ぐぅ」


 あ、あれ? 寝ちゃった?


「これは単なる眠り薬です」


「こ、ここで寝かせちゃダメでしょ!」


「まだあります。次は……ふぅ!」


 また違う薬を?


 ガバッ!


「あ、起きた」


「いえ、お二人は睡眠状態です。ここに更に……ふぅ!」


 再び取り出した薬包を広げ、粉を吹き掛ける。


「このまま部屋に戻って、ベッドで寝て下さい」


 ザザッ!


 あ、敬礼した。


 ザッザッザッ


 そのまま軍隊みたいな足取りで、部屋まで走っていった。


「…………今のは?」


「夢遊キノコという毒キノコの毒成分だけを取り除いて、粉にしたモノです」


 夢遊キノコって……?


「すると寝たままの状態で行動する事ができます。その後、暗示をかける効果がある薬を吹き掛けて……」


「部屋まで自分で戻らせた、と。スゴいっちゃあスゴいけど……」


「この方法を使って、爆弾背負わせて特攻させたりするんです」


 怖っ!


「……でも……そういうのって、やっぱり嫌なんですよね……」


「……そう。だけどこのパーティにいる限りは、そんなことは絶対にさせないわ。約束する」


「サ、サーチさん……」



「……というわけで、ここからは裸の付き合いよおおおっ!」


「……要は温泉に入りたいんですね」


「あ、わかった?」


「お付き合いします。私も湯治は好きですので」


 ……湯治ってわけじゃないんだけど……。


「ま、いいわ。何でもいいから温泉、温泉♪ ヒャッホー♪」


 私は全部脱ぎ捨てて、湯船へと飛び込んだ。


「ちょっとサーチさん!? あまりにもはしたないのでは?」


「はしたないことが許されるのが温泉なのよ。ほーら、エカテルもさっさと入りなさいよ」


「し、しかし……」


「んじゃ命令」


「うきゃあああああ! それは卑怯ですよおお!」


 己の意思なのかは不明だけど、エカテルもさっさと衣服を脱ぎ出した。


「もう……! こういう時の命令はご遠慮願います!」


 そう言ってブラを外すエカテル。おお、形はいいけど…………うん、勝った!


「……? 何を勝ち誇ってるのですか?」


「ん? べっつに〜♪」


「…………ああ、バストサイズですか。明らかにサーチさんが上ですね……あ〜、気持ち良い♪」


 ………あれ?


「……ねえ。あんたはバストサイズ気にしないの?」


「はい? 何故気にする必要があるんですか?」


 へ?


「胸なんて大きくたって邪魔ですし、肩凝りますし、男性にじろじろ見られますし……あまり良い事ないじゃないですか」


 むっ。


「私は大きさよりも形が重要だと思っていますので、私は現状で満足してます」


 むむっ。


「サイズ的には、サーチさんくらいが一番理想的だと思いますよ」


 むむむっ…………むぅ、言い返せない。



 エカテル無双、恐るべし。


明日から新章です。

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