表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/1883

第十一話 ていうか、落下するだけなはずがない。

 滝を落ちるなんてあまり体験したいものじゃない。


 一、空気抵抗ハンパない。

 二、水飛沫で寒い。

 三、濡れる。


 ……なんて言うより、死ぬわ、これ。


「きゃあああ! 風がいやああ!」


 エイミアが必死にローブをおさえてるけど……丸見えだよ。ていうか、ローブそのものを持っていかれそうね。

 しかし……落ちるっていうのは速いんだね。ほら、だんだんと滝壺が……水面が……。

 あ、やばい。

 私もあんまり……余裕ないかもおおおおお!!


「きゃあああああ!」



 ……。

 ……。

 ……あれ?


「まだ……落ちてるわね」


 周りの景色が気づけば変わってる。


「これは……」


 堕つる滝(フォーレンフォール)に入った……ということか?


「そうじゃ。ここが“八つの絶望”ディスペア・オブ・エイトのひとつ……堕つる滝(フォーレンフォール)じゃよ」


 落ちながら語るマーシャン。


「……結局全部知ってたわけね」


「すまぬとは思っておる……だがのう、こういうモノは実際体験してもらわねば身に付かぬからの」


「つまりギルドから私達のパーティの監督兼監視を依頼された?」


「なななな何のことやら」


 態度に出過ぎだっつーの。


「まあこの話はダンジョンから戻ってから、ゆっっっくりしましょうか?」


「ぐぬぅ……し、仕方ない。これで賢者の杖(マスターロッド)の件は水に流そう」


 ぐ! それを出すか!

 ……つくづくエイミアが恨めしい!


「!? な、何か今寒気が……?」


 エイミアがキョロキョロと周りを見渡す。どうしてこういうことは敏感なのかしら……?


「っ! おい、敵だ! 近くにいるぞ!」


 リルが匂いを嗅ぎとったらしく警告してきた。


「リル! ≪身体弓術≫で先制して! エイミア、≪蓄電池≫(バッテリーチャージ)で近くに来た敵を牽制! 私はエイミアを援護する」


「おーけー!」

「わかりましたわ!」


 リル? いまOKって言わなかった?


「あの〜……ワシは?」


 私は真上の影を指差す。


「上のファイアフライを何とかして!」


「よ、よし!」


 ベルトにさしていた“逆撃の刃”(ストークウィング)を持って備える。


「まずはモンスターを散らすぞ!」


 リルは弓の弦を肩に巻きつけて引っ張る。腕を弓の代わりに使って矢を放つ。身体のバネを利用して、弓を使わずに矢を打ち出す。これが≪身体弓術≫だ。


 パシュンッ!

 …………ギャアア!


 集まっていたモンスターの一匹に当たったらしい。危険を感じたらしくモンスターが散開する。


「せいでんきよ!」


 エイミアが慎重に静電気を操作して、敵だけを撃墜する。


「うわわわ! ワシを狙うでない!」


 たまにマーシャンに当たりそうになるのは割合する。

 私もエイミアが撃ちもらしたモンスターを刈る。


「マーシャン! お願い!」


「任せよ! 風よ……≪風撃弾≫(ウィンドバレット)


 杖から撃ち出された空気の塊が、モンスターに当たって破裂する。当たったモンスターはもちろん、細かく飛び散った≪風撃弾≫(ウィンドバレット)によって傷を負ったモンスターも墜落していった。だけどモンスターもだんだんと増えている。

 しかもやっかいなのが……エイミアが見たら危険ね。

 仕方ない。


「マーシャン! 弱めの≪風撃弾≫(ウィンドバレット)でエイミアを撃ち出して!」

「「え?」」

「早く!」

「う、うむ……やさし〜く≪風撃弾≫(ウィンドバレット)


 やさしく放たれた≪風撃弾≫(ウィンドバレット)がエイミアのお尻に炸裂する。


「ちょっとおおお!?」


 重力に逆らって上昇するエイミア。


「サーチ、ちょっとヒドいんじゃないか!?」


 近くで落ちてるリルが叫ぶ。


「よーく上を見てみなさいよ! 何がいるか見えない?」


「んん? ……あれは……ああ、なるほど。スネーク(・・・・)フライか」


 しばらくすると。



 へえびぃぃぃぃぃやあああああ!!

 バリバリバリズドオオオン!


「たーまやー」

「何だそれ?」

「あー……そのうちにね」


 マーシャンの魔法で少し落下速度をおとしてエイミアと合流した。



「サーチぃ!」


 やばい。エイミアがキレかかってる。


「ごめんごめん。あとでね、ね?」


 エイミアはぷくっと頬を膨らませて。


「……後でヒドいんだからね!」


 拗ねた。

 可愛いんだけど……落下しながら揺れる胸が恨めしい。


「マーシャン、この壁沿いを落ちてけばいいのよね?」


「うむ、間違いない。この亀裂に沿っていけば良いはずじゃ」


 壁に近づくにつれてわかったけど……堕つる滝(フォーレンフォール)の壁って全部ブロックが積んである。誰が作ったのか知らないけど……ご苦労なことです。


「あ」


 突然のエイミアの「あ」は結構な率で不吉なのよね。


「……何だよ」


 リルも苦虫を噛み潰したような顔してる。


「いえ〜……あーいうのって」


 エイミアが指差す先。


「……何ドラゴンって言うのかな? って思っただけです」


「「「ドラゴン!?」」」


 え! どこ? どこ?

 こんなとこでドラゴン来たらマジ全滅よ!


「これこれ。慌てるでない」


 マーシャン?

 いやに落ち着いてる。何か策でもあるのかしら?


「お主ら竜殺し(ドラゴンキラー)じゃろ? あれぐらい余裕じゃろ」


 マーシャンが指差す先。

 ばっさばっさと翼を羽ばたかせてくる飛竜(ワイバーン)の群れ。

 ざっと二十匹。


「「無茶言うなー!!」」


 ああ、詰んだ……と諦めかけたとき、頭に不思議な声が響いてきた。


『ほう……久々の客人だな』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ