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第十七話 ていうか! どっかあああああんと一発!

 イライライライラ……


「サ、サーチ姉「ギロリッ」……な、何でもない」


 イライライライラ……


「サーチん、リジーに八つ当たりすんなや……馬車ん中がギスギスして居心地悪いで」


「わ、私は別に八つ当たりなんかしてなんか!」


 片隅でガクブルってるリジーが目に入る。


「…………って、ごめん」


「気持ちはわからんでもないで。でも今は戦や。ちゃんと目の前の事に集中せえへんと、自分の命だけやなく周りにも被害が出るで」


「ん、気を引き締める……リジー、ごめんね」


「べ、別に大丈夫」


「で、何の用だったの?」


「いや、さっきの戦闘馬鹿は○スは上手かったのかとごふぅお!?」

「サーチんのイライラ増幅させてどないすんねん!」


 イライライライラァァ!!


「ほら見ぃ。完全にイライラモードになってもうたで」


「うぐぐ……ごめんなさい……」


 イライライライラァァ!!


「な、何? サーチ姉。その手は何?」


 イライライライライライライライラァァァァ!


「わ、ちょっとサーチ姉!? どこを触って……きぃああああああ!」


「あ、出発やな。今回はウチが馭者やるさかい、ごゆっくり〜〜」


「そ、そんな! エリザ、助けてええ!」


「自業自得や。ほな行くで、セキト!」


 ブルヒィン!

 カッポカッポカッポカッポ

 ガラガラガラ


「ちょ、いや! 助けて、エリザァァァァ!!」


「……リジーもセキトみたいに賢うならなあかんで」



「サ、サーチ姉……返して」


「うるさいっ! 今日一日ノーブラでいなさい!」


 戦いが始まる緊張感を、私達の声が台無しにしてるのは間違いない。兵士の何人かが「ノーブラ」という言葉を聞いた途端に、リジーに視線を向ける。


「おい、うるさいぞ! 静かにしてろ!」


 すると、頭のてっぺんがハゲたおっさんが文句を言ってきた。悪いのは私達だけど……言い方がムカつく。


「うるさいとは何よ! 静かにしてたら戦いに勝てるっての?」


「き、貴様……! 上官に向かってその態度は何だ!」


「うっさいっての! 私達は冒険者だから上官もクソもないわよ! これ以上ギャアギャアわめくんなら、その中途半端なハゲ頭を完全砂漠化してやるわよ!?」


 怒って真っ赤になる上官さん。周りの兵士達が「砂漠化」にツボったらしく、必死に笑いを堪えている。


「お、おのれぇぇぇ! 叩き斬ってくれる!」


 あ、中剣を引き抜いて突っ込んできた。やべ、挑発しすぎたかな?


「うりゃああああああ「おしおキッィク!」ぐっはあああ!?」


 あ、一発KO。弱。


「ごめーん、どっかの砂漠化(・・・)さんが勝手に落馬したから、誰か衛生兵を呼んでくれない?」


 ぶーっ! くすくすくす。


 もう堪えきれなくなったらしく、あちこちから吹き出す音と忍び笑いが聞こえた。後から聞いた話なんだけど、私が蹴っ飛ばした砂漠化さんは、部下に威張り散らして上官にはヘコヘコする、典型的なパワハラ上官だったらしい。誰からも平等に嫌われていたらしく、ここにいた全員が私の「勝手に落馬した」発言を肯定し、砂漠化さんの訴えが聞き入れられることはなかった。

 この件がきっかけで、私達にはかなりの味方ができた。ありがたい。



 マジで開戦する何分か前。どこの戦いでもありがちな、お偉いさん同士の口上が始まった。


「我々はこの大陸に公正な正義を広める為、この戦いに勝利しなければならん! 正義のない烏合の衆は、とっとと大陸から出ていくがいい!」


「俺達が烏合の衆なら、お前らはボンクラ集団だな。正義の味方ごっこをしたいのなら、お家に帰って一人でやりな」


「な、何だとおお!?」


 口では戦闘馬鹿の勝ちっぽいけど……実際の戦いではどうなのやら。

 さらにギャンギャンとわめく敵の将軍に、戦闘馬鹿はウンザリといった感じ。


「ねえサーチ姉、あのうるさいの黙らせるね」


「そうね、お願い……って何する気!?」


 ピシュン!


 ウソでしょおお!? リジーのヤツ、矢を……!


「だから、我々が勝」

 ドスッ!


 敵の将軍は口から矢を生やして(・・・・・・・・・)馬から落ちた。


「…………」

「…………」


 何とも言えない空気が辺りに漂う。


「はい、静かになったうぐぉ!?」

「あ・ん・た・は〜!! 何てことするのよ!」

「うぐぐ……ごめんなさい……」


 ヤバい。リジーが処罰されるかも……と思ってたら、豪快な笑い声が響いてきた。


「あっはっはっはっ! これが俺達の返答だ! さあ、くだらねぇ能書きは止めておっ始めるぜええ!」

「「「おおおお!!」」」


 な、何かめっちゃ士気が高くない?


「行けええ、突撃ぃぃぃ!!」

「「「うおおおおっ!!」」」


 ドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 ……ヒュウウゥゥ……


 ………………あ、気づいたら周りには誰もいない。馬によって舞った砂塵が、風によって流されていく……。


「じゃなくて! 私達には私達のやることがあるんだったわ! 行くわよ!」

「ほな行こか。リジー、ナイスやったで………結果的には、やけど」

「うぐぐ……い、胃液が……うぷっ」


 吐きそうなリジーを引き摺って、私達は高台を目指した。



「……この辺りやな」


 ……そうね。これだけ高い位置なら、相手の陣地に撃ち込めそう。


「じゃあサーチんは準備してや。ウチらは周りを警戒してるさかい」


「ん、わかった」


 まずは≪偽物≫(イミテーション)で設計図通りの大砲を作り出す。しっかりと地面に固定し、弾と薬莢を取り出してセットする。


「……うん、OK。いつでも撃てるわ」


「あとは場所やな。本陣内に撃ち込めるん?」


「たぶん。何せ初めてだしね」


 まっすぐ飛ぶかも怪しい……とは言えないので黙っとく。


「サーチ姉、関係あるかはわからないけど、風向きは最適と思われ」


「風向き関係あるわ。ありがとうリジー」


 さて……やりますか!


「二人とも、スゴい音がするから耳塞いでてー!」


 二人が離れたのを確認して、大砲に魔力を送り込む。


「角度よーし! 目標、敵の本陣のど真ん中ー! カウントダウン、十、九、八、中略二、一、発射(ファイア)!」


 撃鉄を引く。



「伝令! 敵の本隊、突撃を開始しました!」

「で、伝令! 先鋒のラウル将軍が戦死!」


 ザワッ


「ラ、ラウル将軍が戦死だとお!? どういう事だ!?」

「こ、口上の途中に、敵の矢によって……」

「な……! 口上の途中で攻撃とは……! 卑怯ではないか!」

「おのれぇぇぇ! 必ずやラウル将軍の仇を討つぞ!」


 ズドオオオオン!!


「……ん? 何だ、今の音は?」


「何かが爆発したような……?」


 ヒュルルル……


「な、何か飛んできた……?」


 ……カッ!



 どぐぅおおおおん!


「よっしゃ! 命中や!」


「凄い……! 一撃で本陣が吹っ飛んだ……!」


「これなら大王炎亀アレキサンダー・タートルも一溜まりもないで! やったなサーチん!」


「あれ? サーチ姉? ……って、気絶してるよ」


「ええっ!? ホ、ホンマや。どないしたんや?」


「あ、耳栓してない」


「音か。サーチんも意外と抜けとるな」


「……きゅう……」

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