第十三話 ていうか、アレックス先生の前で思わずガールズトークが弾んでしまい……。
マーシャン……あんたは一体何を企んでるのよ……!
「ていうか、ちょっとおかしくない?」
「何がかな?」
「最近まで念話水晶すら通じない状態だったのに、何でマーシャンと話してるのよ?」
「マーシャン?」
「女王陛下のことよ! それより何で話せたかって聞いてるの!」
「ああ、それは私はエルフだから」
そう言って木を指差す……そういえばエルフの種族スキルには『木を通じて他のエルフと会話できる』ってのがあったわね。名前は忘れたけど。
「……成程、裏でマーシャンが暗躍してるのか……」
「もしかしたら、エリーミャさんとも裏で繋がってるのかも」
このときの何気ない一言が、実は核心をついていたと知るのは、もう少し先の事だ。
「……なあ、さっきから女王陛下の悪口ばっか言ってるやん。不敬罪にならへんの?」
「大丈夫。同じパーティだから」
「大丈夫。女王でも人格はノミ並みだから」
「ノ、ノミ……」
「あの〜……私は放置プレイの趣味はないのだが……」
あ、忘れた。
「ごめんなさい。で、私達に関する情報はマーシャンから大体聞いてるわけね?」
「いや、大体ではないね」
「…………ほぼ?」
「いや、ほとんど」
……マーシャンに今度あったら、一瞬で昇天できる毒を大量にぶち込んでやろう。
「サーチだったかな? 君の恋愛遍歴だとかもね」
「あー……ま、別に知られてもいいけど。ていうか、みんな知ってるし」
「リジーだっけ? 君の事は『妙な趣味のある子』とだけ聞いてるよ」
「……世間一般からは擦れてるのはわかってるから、別に気にしてない」
……自覚あったんだ。
「後はエリザちゃんだっけ?」
「……何でウチだけ『ちゃん』やねん」
「つい陛下の呼び方が移ってしまったようだ。すまないね」
……エリザ、あんた狙われてるわよ……。
「君の事は事細かに聞いてるよ。ご主人であるリフター伯爵夫人とイチャイチャラブラブだとか」
「まあ……否定する気はないで」
「スケルトン伯爵と一時期付き合っていたとか」
「うぎゃああああ! 何で知ってんねん!?」
マジで!?
「あんた……男も一応OKなのね……」
「うぐぐ……あ、あれは気の迷いやったんや!」
「ま、いいじゃん。今のパーティでそういう経験があるのは、私だけかと思ってたし」
「そういう経験って……サーチんも彼氏おったんか!?」
今はS級モンスター化してますけど。
「な、何人や?」
「何が?」
「だから! 経験人数!」
「あー……二人」
「二人かいな!」
前世はその五十倍ですが何か?
「そういうエリザは?」
「ウ、ウチ!? ウチは……………………ひ、一人や」
「ほっほー。つまり、初めての相手はスケルトン伯爵一択ですな」
「言うなや! やから言いとうないねん!」
しっかし意外だわ〜……あの朴念仁がね……。あ、でも既婚者だったような?
「エリザ、まさか道ならざるってヤツ?」
「結婚前や!!」
あ、さいですか。
「そやけど……サーチん以外は未経験やとは思わなんだわ」
「だって、リジーだし」
「そやな、リジーやもんな」
「……凄く馬鹿にされたように思われ」
「あの〜……もしもし?」
「はい?」
「私は放置プレイの趣味はないと言ったばかりなんだが……」
「あ、すいません」
「それと……あそこで純情青年が赤くなってるから……」
あ、副長さんの存在忘れてたわ。
「ていうかさ、副長さんは何で赤くなってるのかしら?」
「わわわわ私は! 別に! 疚しい事など! 何も!」
「……めっちゃ動揺してるやん」
「あのね、私達はプロレスごっこの話をしてたのよ?」
「は、はあ?」
「リジーはプロレスごっこには一切興味を示さないから……ていうか、副長さんは何を想像してたのかしら?」
「あ、いや、その! 仕事が残っていますので失礼します!」
ばひゅんっ!
あ、逃げた。
「あーあ、純情青年を苛めたら駄目だよ」
「純情青年って……結構いい歳でしょ、副長さん」
「だと思うよ。一番上が成人すると言っていたから」
……はい?
「まだ下に十数人いると言っていたからなあ。これから大変だぞ、彼は」
「えっと……それはご兄弟?」
「何を言っている。お子さんに決まっているではないか」
子持ちかよ! しかも野球ができる人数越えてんじゃねえか!
「……一番純情から程遠いやん……」
激しく同意。
「……で、私を誘った三点セットをキリキリ吐きなさい」
「い、いきなり刃物を喉に突き付けるのは、礼儀としては如何なモノかと」
「礼儀なんか知ったこっちゃないわああ! 早く吐きなさいい!」
「わかった! わかったから一旦退きなさい!」
シブシブアレックス先生から離れる。
「全く! 本当に礼儀知らずだな、君は! プンプン!」
「…………」
「ま、待て! 首の皮が! あ、あああ! 血がツーッて、血が!」
「……先生、プンプン言うてるとマジで首チョンパされるで?」
「わかった! もう言わないから!」
「は? 私からの質問に答える気はないっての?」
「それは言う! 言うから! うわあ、それ以上斬らないでえええっ!」
……仕方ない。解放してやるか。
「は、はあはあ……さ、流石に命の危険を感じたぞ……」
「情報情報情報情報情報情報情報情報」
「わかったって! ……まずは温泉だが」
湧く湧く……じゃなくてわくわく。
「第十六王国の王都、クライベーツが有名だそうだ。泉質とかは自分で調べるんだな」
「…………ま、次第点ってことで許しましょう。次、豊胸よ豊胸」
「その件に関しては、場所を移して説明したいのだが」
「場所を?」
「実際に見せた方が早いだろうからな」
……?
アレックス先生に付いていくと、少し離れた林に入っていった。
「あの……?」
「この辺りでいいだろう」
そう言うと、アレックス先生は白衣と上着を脱ぎ捨て、ブラ一枚の姿になった。あ、デカい。
「見ているがいい」
そう言うと何か飲み物を取り出し、一気に飲み干す。
「……少し待て」
……??
「……よし、来た来た来た!」
……え? ウソ!? だんだん胸が膨らんで……!?
ぶちぃ!
ブラが千切れた!?
「どうだ、凄いだろ」
「…………ください! それ、くださああい!」
「待て、今のは一時的なモノだ。ほら」
ってあれ!? 元に戻ってる!
「これはアレキサンダー・タートルの脂を加工したモノだ。食べると、急激に脂肪を蓄積させる効果がある」
「……それってお腹に脂肪がまわる可能性もあるんじゃ?」
「そこは私が魔力加工を施し、調整できる。これなら間違いなく豊胸できる」
「で、でも、すぐに小さくなるんじゃ……」
「これは死んでから時間が経ったアレキサンダー・タートルのモノだ。もし、死んで間もない個体が手に入れば……半永久的な効果が得られるだろう」
大王炎亀を殺して連れてくればいいわけね!?
「ぃよおおおし! 絶対に瞬殺しちゃる!」
ふっふっふ! エイミア越えは近い!