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第三話 ていうか、いよいよ進軍開始。

 カッポカッポカッポカッポ

 ガラガラガラ


「…………」

「…………」


 カッポカッポカッポカッポ

 ガラガラガラ


「…………何や?」


「な、何?」


「ウチの顔に何か付いとるんか? さっきからチラチラと見とるやん」


「あ、えっと……ついてる」


「え!? な、何が?」


「目と鼻と口と……あと眉毛あいたっ!?」


「人の事をからかうのも大概にせいや!」


 す、すいません……からかったんじゃなくて、誤魔化したんです……。

 あ〜あ……リジーの衝撃の発言が頭から離れない。おかげで、第三者であるはずの私が寝不足になるハメに。

 その衝撃の発言主は、今は馭者の番。まさかリジーが、あんなことを言い出すなんて……。



『私、何故かエリザの側にいるとドキドキする』

『呪われアイテムよりも気になって仕方がない』

『本で調べた限り、これは恋というモノなのかもしれない』



 ……何で私に相談するのかな。最初から本人(エリザ)にアタックしなさいっての……もう。



 私達はジジイの部隊と共に、正統王国の王都へ向かっている。そこに第一陣となる第十二王国軍、第四王国軍、そして正統王国軍が集結する手筈になっているんだそうだ。

 一応外交的手段も用いられたそうだが、古人族は頑なに会談を拒否。仕舞いには使者を斬り殺す暴挙に出たらしい。これで完全に決裂してしまい、神聖ラインミリオフ帝国対連合王国軍との戦争はいつ勃発してもおかしくない状況なのだ。


「で、やっぱエリーミャさんも担ぎ出されるんか?」


「現状ではその可能性は低いわね。第一エリーミャさんが良いとは言わないでしょ」


「……エリーミャさんは、エイミアの事は……」


「当然知ってるでしょうよ。そのために私達を戦争に参加するように仕向けたのよ。何だかんだいって腹黒いわよね……」


「……なあ、サーチん」


「何?」


「何でウチから視線を逸らして話すんや?」


「き、気のせいよ」


「そうかいな? 何か朝からよそよそしいんやけどな?」


 し、しまった。仕草に出てたか?


「……まあ、ね。昨日の話が気になっちゃって……」


「ああ、師匠の事やろ? 今はしゃあないやん。目の前の事に集中した方がええで」


 いや、目の前にあんたとリジーがいるから、目の前のことに集中できないのよ。


「……ていうか、何で私が悩まなくちゃならないのよ……」


「は?」


 そのとき、ジャストなタイミングで隊列が止まった。どうやら前方で何かあった模様。


「チャーンス!」


「え!? サーチん?」


 荷台から飛び出し、前に座るリジーの元へ行く。


「リジー、交代!」


「え? 少し前に代わったばかりと思われ」


「いいから! このまま荷台に乗り込めば、あんたとエリザの二人っきりよ。昨日言ってたことをぶちまけて来なさい!」


「え? もう?」


「昨日の夜に言ったでしょ! 『まず告白しないことには、進むことも退くこともできない』って!」


「そうだけど、サーチ姉が『言うタイミングは私に任せて』って……」


 ぐあ! 苦し紛れに私はそんなことを言ってたのか!


「い、今がそのタイミングよ! 馬車の中なら周りの目も気にならないし、移動中なら色んな音に掻き消されて、会話も外に聞こえることはない。まさにベストコンディションじゃない!」


 おお、苦し紛れだったけど、意外といい案かも?


「む……そう言われてみれば確かに……」


「なら善は急げ! さっさと行きなさい!」


「え、でも……」


「……あ、前が動き出した。早く行きなさい」


「で、でも、心の準備が……」


「早く行けっての! あんたらがさっさと解決してくれないと、私の心の平穏が保てないのよ!」


「本音はそれ!?」


「いいからさっさと行けえええっ! じゃないと全部剥くわよ!」


「は、はいいっ!」


 リジーは脱兎の勢いで馬車に突っ込んでいった。


「じゃあセキト。しばらくよろしくね」


 馬は鼻を鳴らして私に返事した。え、セキト? 私が勝手に呼んでるだけよ。



 カッポカッポカッポカッポ

 ガラガラガラ


「……何にも聞こえないわね。行き着くとこまで行き着いちゃうかと思ってたんだけど……」


 背後から艶っぽい声が聞こえることは……今のところはない。


「……これでうまく収まってくれれば、言うことないんだけどな……」


 あ〜……なんて気持ちいい陽気なんだろう。思わず寝ちゃいそうなくらい、平和な一時……。


「きぃゃああああああああああああ!!」

「うわっぷ!? な、何事!?」


 今の声はエリザだと思うけど……まさか!? 一旦馬車を止めて、後ろの荷台へ駆け込む。


「何!? 一体どうした……の……」


 ……そこにはムリヤリ、エリザを脱がせてるっぽいリジーの姿があった。


「あー……えっと……ごゆっくり」


「ちょっと待ってえな! 頼むで助けてえ!」


「あー、えっと……合意なき着脱ってことで?」


「意味わからんけど、合意してないのは間違いないで!」


 そういうことなら。


「リジー、一旦離れなさい」


「……ぶー」


「ぶーじゃない。とりあえず一旦離れなさい。話はそれからよ」


「……わかった」


 リジーはブツブツ言いながらも、エリザから離れた。


「……リジー……よーく聞きなさい。愛情の押しつけは、逆に相手にとって迷惑になり得るのよ?」


「サーチ姉、ちょっと聞いてほしいんだけど」


「黙って聞きなさい。いい、恋愛っていうのはね……」


「だから違うの、サーチ姉。私の勘違いだったの」


「両者の想いが……ってはい? 勘違い?」


「ん。エリザの持ち物の中に、結構な呪われアイテムがあった。それをエリザへの愛情と勘違いした」


「……あんたほどの呪われレーダーなら、こんな近くにある呪われアイテムに反応しないわけないじゃない」


「そう。それが私を勘違いさせた原因」


 は?


「エリザが所有していた呪われアイテムは、エリザのペンダントのチェーンだった」


「はあ?」


「エリザが普段三枚の盾を付けているペンダント。そのチェーンの一部に呪鉄と呼ばれる呪いの金属が使われていた」


「呪鉄?」


「そう。呪われアイテムを作るのに必要な、超稀少金属」


 ……ていうか、呪われアイテムって作れるんだ……。


「本来なら職人がすぐに発見できるのに、何故か気付かずにペンダントに組み込んだ模様」


「……で?」


「盾自体は祝福が施されている為、呪鉄の呪われ波動は封じ込められてた」


「あ〜……大体理解したわ。リジーの呪われレーダーだから、呪鉄から漏れ出るわずかな呪われ波動をキャッチできたのね?」


「そう! そうなのよ!」


「じゃあ何でエリザを剥いてたわけ?」


「呪鉄を頂ける許可を貰って、ペンダントを外した際に、チェーンがエリザの服の中に落ちた」


 そういうことか。


「超貴重品なのよね?」


「この馬車が十台買える」


「剥いちゃえ」


「え、ちょっと! 嫌やああああああ!」

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