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第二話 ていうか、深夜のガールズトーク。ただし、色っぽいモノじゃなく。

「おかえり〜、サーチん」


「うわ、びっくりした! 何であんたがここにいるのよ!?」


 ジジイとの密談を終えてから途中の大衆浴場でさっぱりし、旅館の部屋に戻ると……なぜか私のベッドにエリザがいた。何か話があるらしいけど……まさか夜這い?


「……言っとくけど、私はそういう趣味はないからね?」


「……ヴィーは?」


 うぐっ!!


「ええっと……わ、私にも好みってモノが……」


「何を言うてんねん。夜這いに来たわけじゃないで」


 あ、そうなの?


「なら何の用よ」


「今回の戦争の事や。正直突っ込みどころが満載で、今まで話す事も躊躇ったわ」


「そうね。戦争の理由からタイミング、果てはエイミアを奉りあげたこと。不自然過ぎるのよね」


「やっぱサーチんもそう思うんやな」


 ちょっと小難しい話になるけど、戦争を起こすってことは並大抵なことではない。兵力の充実、それに伴う兵糧の準備、兵士達の武器防具の確保エトセトラエトセトラ、とにかくお金が消える。それに、命を懸けることになる武官はもちろんのこと、お金が動く以上は文官にも相当な負担がかかる。それだけの資金と人材を投入したとしても、必ず勝てるとは限らない。負ければ自分の首が飛び、国が滅亡しかねないという、超危険が伴う大博打なのだ。


「……それを『昔の恨みを晴らしたい』なんて理由で起こすのかな?」


「まあ普通なら、外交的なカードに使うんやない? これ、使い方次第でめっちゃ有効な切り札やで」


 そうよね。多額の賠償金を引き出せれば、それだけで人間側の弱体化を謀れるし。


「長いスパンで相手を弱らせてから。それからでもいいのよね、戦争を仕掛けるには」


「まあ古人族のお偉いさんが、目先の事しか考えられへん強硬派ばっかなのなら……あり得るわな」


「だったらもっと早い時期に戦争が起きてないとおかしい。何か違う理由なのよ、きっと」


「その辺も含めて探りを入れてくしかないやん。めんどくさいわあ……」


「戦争自体がめんどくさいのよ。それとタイミングの問題よね」


「そうや。何でウチらがこの大陸に来た途端、戦争なんて状態に傾いたかや」


 ゴーストメイドのおばちゃんの話だと、絶海を乗り越えられた船は、今まで一隻もないということだ。


「空を飛ぶなんて手段が使えない以上、ここ数百年の間は暗黒大陸への来訪者はなかったはず」


「やったらウチらは久々の客って事やな。それと戦争の開始時期が重なるって、どんだけ偶然やねん」


「……エイミアの登極を戦争の開始理由にするなら、そのエイミアを探しに来た私達の来訪とは重なるわね」


「そやな。今まで探してた王位継承者が、ようやく見つかった。それを担ぎ上げて、戦争を起こす。流れ的にはあり得ん事はないわな」


 だけど、エイミアを最高指導者にしてはならない理由があるのだ。


「エイミアは……鬼人族のハーフよ。しかも人間との(・・・・)


 いかにハーフとはいえ、今から戦いを挑もうとしている相手の血を引くエイミアを、自分達の上に立つことを許せるだろうか。


「もうそれだけでエイミアの傀儡説が確定やな。素性を明らかにせんまま、裏で操っとるヤツがおるんやろ」


「……となると、エイミアは途中で切り捨てられる可能性が大ね。おそらく目的が達成する直前で『こいつは人間の血を引いている。自分達も騙された』とか吹聴して」


「エイミアの意思は関係無しなんやな。めっちゃ腹立つわ!」


 ……でもおかしい。相手はエイミアのことを知りすぎてる。まさか……。


「……エリザ。私達の近辺を介して、情報が洩れてると思わない?」


「…………師匠か?」


「そう。パーティメンバーと関係者を除外すると、ゴーストメイドのおばちゃんが一番怪しいのよね」


「……ウチもそれは考えてたんや。ちょっと言いにくかっただけで」


「……あ、そうか。エリザ自身が疑われる……とでも思った?」


「! ……そや。その通りや。状況的に、ウチが一番疑われると……」


「あら? 私は最初っからエリザのことを、これっっぽっちも疑ったことないわよ?」


 エリザは驚く反面、複雑そうな顔をする。


「……そらおおきに。けど、何でそこまでウチを信用できるんや?」


「あらかじめ謝っとく。ごめん、エリザ自身を信用したんじゃないの」


「……は?」


「リファリスはね、誰かを裏切るような人間を自分の近くに置いたりしないわよ。あなたの敬愛する主人が、絶対の信頼の保証してるのよ」


「……確かに。リファリス様はそうやな……」


「もちろん一緒に旅をしてきた私自身も、エリザが絶対に信頼できる確信は得たけどね?」


「うっ………お、おおきに……」


 あ、照れてる。関西弁フォルムでもツンデレ要素は含んでるのね。



 次の日に差し支えるので、区切りのいいときに切り上げた。


「おばちゃんのことは一旦保留しとくわ。確たる証拠があるわけじゃないしね」


「……せやな。ウチも探りを入れてみるわ」


「わかった。それより、早く寝なさいよ」


「……サーチんにだけは言われとうないわ」


 私は寝ないんじゃなくて、ショートスリーパーなのよ。


「あんたもリジーに負けないくらい寝起き悪いからね」


「うるさい! 自分で起きるでええわ!」


 そう言って、肩を怒らせながら歩いていった。


「……絶対起きれないくせに。リジー対策法をエリザにも適用しようかしら」


 明日はプライヤかな……。 そんなことを考えつつ扉を閉めようとしたとき。


 ガッ


「ん? リ、リジー? どうかしたの?」


 半分寝ぼけた様子のリジーが、扉にしがみついていた。


「サーチ姉……少し相談したい事がある。いい?」


「あんたが相談だなんて珍しいわね。新しい呪われアイテムが欲しいってことじゃなければ、相談くらいのるわよ?」


「…………」


 図星かよっ!


「自分の小遣いで買える程度のヤツにしなさい。そうじゃなければ、金銭面で援助はできないわよ?」


「…………」


「……そんな潤んだ目で見たってダメだからね」


「……ちぇ」


 ……世の中のお母さんの苦労、痛いほどわかります……。


「それだけ? なら寝るわよ」


「ちょっと待って。それだけじゃない。エイミア姉のことで、ちょっと……」


 ……?



「……どうぞ」


 リジーに紅茶を淹れてあげて、自分の分のカップを置いて座る。


「ありがとう。それで、エイミア姉の事なんだけど……。以前帝国で、気になる呪われアイテムがあって」

「買わないわよ」

「違う。問題は、その呪いの内容」


「……どういうこと?」


「ペンダントなんだけど、強烈な暗示をかけられる呪いだった」


「強烈な暗示って……エイミアはそれを使われてるって言いたいの?」


「……こっちの方角。遥か先にそのペンダントと同じ呪いを感じる」


 ……リジーの指差す先は……古人族の国だ。


「もし同じモノだとすると、解呪は相当困難なはず」


「……じゃあ、そのことも調べなきゃいけないわけね。はああ……前途多難だわ」


「サーチ姉、まだ相談したい事がある」


「まだあるの!?」


「これは個人的な事。実はエリザの事で」


 ……エリザの?

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