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閑話 それぞれの念話とそれぞれの企み

「ええ!? ではエイミアが相手側の皇帝なのですか!?」


『ええ……おそらく傀儡にされてるんだと思う』


 久々のサーチからの念話で浮わついていた私は、エイミアの事に話が及んだ途端に、一気に緊急事態へと移行しました。。


「話を聞く限りですと、古人族の復讐戦という意味合いが強そうですね」


『まあね。古人族の最大の復讐対象は人間だろうけど、暗黒大陸にはほとんどいない。だから暗黒大陸を制覇して地盤を確固たるモノにしてから……』


「……こちらの大陸に攻め込むつもりだと?」


『その公算が高いと思う』


 ……私も同意見です。私達モンスターの間でも、人間に復讐を望む者が少なからずいますから。


「……一度ソサエト侯爵に頼んで根回ししてみます。早急に国防委員会に話を持っていかないと……」


『フフ……すっかり議員さんね。デスクワークばかりだと、腕が鈍ってるんじゃない?』


「デスクワークの訳ないじゃないですか……一度リファリスさんの仕事に付き合えば、そんな事言ってられませんよ」


『確かに。リファリスの仕事は荒行に近いからね』


 ……まさか三日間ぶっ通しで、書類抱えて走る事になるとは思いませんでした。


『でもヴィーは完遂したんでしょ? リファリスの仕事って、付いていけるだけでも大したもんよ?』


「私以外にいるじゃないですか。仕事だけではなく、公私に渡って一日中補佐を続けていた方が」


『ああ、エリザのこと? あれは愛があるから成せることよ』


「愛……ですか。私もサーチへの愛でしたら、誰にも負けません」


『ありがと♪ けどね、その愛をリファリスに向けたらダメよ〜。私だけじゃなくてエリザにも殺されるからね♪』


「当たり前です。サーチこそ浮気なんかしては駄目ですからね?」


『はいはい。あ、そろそろ時間かな。ごめん、まったね〜♪』


「あ、ちょっとサーチ!? ……もう、久々の会話だったのに!」


 ……相変わらす慌ただしいですね……サーチらしいです。さて、疲れも吹っ飛びましたから、さっさと仕事を終わらせますか。



「……マジか!? エイミアが!?」


『ええ。統一王国の守備隊長さんが、エイミアが連れられてるのを目撃してた』


「……よりによって戦う相手の皇帝とは……お前らはどうするんだ?」


『とりあえず戦争には参加するわ。戦場内なら情報収集もしやすいし、隙があったらエイミアを取り戻せるし』


 まあな。戦場なんて全体を把握するのは不可能だしな。


「……すまねえな。こんなときに手伝えないなんて……」


『だからあんたにも動いてもらうんじゃない。獣人会議を開けるの?』


「まかせとけ。私だけじゃなく婆様も動いてっからよ」


『ん。一応最悪の事態も想定しておいて』


「……ああ」


 ……暗黒大陸軍との……全面戦争か。


「おーい、リルはいるか?」


「は、はーい♪ 今行くニャー♪」


『……今行くニャー♪』


「ううううるさい!」


『はいはい、新婚さんだって忘れてたわ。じゃ、腰をお大事に(・・・・・・)


「っ〜!! こ、このバカ野郎……!」


「どうした? まだ腰の具合が悪いのか?」


「そ、そんニャことニャいニャ♪」


 ……サーチのヤツ、覚えてろ……!



「……そっか〜……エイミアの血筋ならそうなっちゃうよね〜」


『私としては戦争のどさくさに紛れて、奪い返そうって思ってるんだけど』


「まあその辺りの事は軍師様に聞く方がいいかもよ〜」


『リファリスのこと? 今エリザが念話してる』


「あら? エリザも一緒に戻ってきてるの?」


『エリザもリファリス成分が抜けきってて、禁断症状が出てたから』


 ……麻薬なの、リファリスは?


「話は戻るけど、さっきの件は了承したわ。サーチが送ってくれたイメージで、何とか転移できそうだし」


『さっすがソレイユ!』


「アタシを誰だと思ってるの? 魔王よ、魔王! 中継点(・・・)なんかちゃっちゃと作ってやるわよ!」


『サンキュー! 助かるわ……じゃ♪』


「あ、ちょっと……しまった、あの子の事(・・・・・)を言い忘れてたけど……大丈夫よね?」



「ふい〜、疲れた〜……」


 念話水晶を投げ出し、机に突っ伏した私の前に、ティーカップがガチャリと置かれた。


『何を情けない声出してんだい!? シャキッとしな!』


 ……相変わらず気っ風がいいゴーストメイド。前にも言ったけど、メイドじゃなくて食堂のおばちゃんだよね?


「だってさ〜……全速力で拠点に戻ってきて、念話が終わったらとんぼ返りだなんて……」


『だからこそ中継点を作ってもらうんだろ? これが最後の苦労だと思えば、そう大した事じゃないさね』


「そうは言うけどさ……」


『それに全速力で走ったのは、あんたじゃなくて竜だろ?』


 ……正統王国に貸し馬車屋があったんだけど、そこにいた音速地竜(ソニックランドラゴン)をぶん盗り……もとい借りて、ここまで半分の行程で来たのだ。


「乗ってるほうも疲れるわよ。そりゃあ、泡吹いて倒れるまで酷使したのは間違いないけど……」


『言い忘れてたけどさ、その竜ならとっくに脱走したよ』


「…………へ?」


『尻尾に鎖を繋いであっただろ? 尻尾を食い千切って逃げたよ。余程の事だったんだろうねえ……』


 ……仕方ない。近くの町で借りるか。


『あんたさ、多分ブラックリストに載ったんじゃないかい?』


 うぐっ!


「だから言ったじゃありませんか。あまり非合法な事はしない方が良いと」


「こ、ここでメイドフォルムの登場なの!?」


「当然です。たっぷりとリファリス様成分を補充致しましたから」


「あ、それなんだけどね。ソレイユが暗黒大陸各地に、念話の中継点を作ってくれるって。だからどこでも補充できるようになるわよ」


「! ……そ、そうですか。サーチ様もたまには良い事をなさって下さるのですね」


『ちょっとあんた! そういう言い方をするもんじゃないよ!』


「いいのよ。今のを翻訳すると『私の為に骨を折って下さってありがとうございます』ってこと。所謂ツンデレってヤツ」


『成程ねぇ……本当にいるんだねぇ……』


「ちょちょちょっと! 私をツンデレ扱いするのは止めて下さい!」


『……この娘、二重人格かい?』


「近いけど違うわよ。メイドフォルムだと素直になれないだけだから」


『だからツンデレなんだねぇ……』


「だ・か・ら! 人をツンデレ扱いしないで下さいまし!」



『……もしもし、私だよ』


『あ、久しぶり〜。何だった?』


『サーチ達が来たよ。やっぱり戦争になりそうさね』


『むむ……やっぱりか〜。さーちゃんも大変ね〜……』


『あんたは手を貸さないのかい?』


『本当に危険なら手を貸すけど、エリーミャから釘を刺されてるしね〜……』


『エリーミャは何を考えてるんだい?』


『あの娘も腹黒いから……あ、もう着くわ。またね』


『じゃあね、ヒルダ』

明日から新章です。

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