表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
491/1883

第二十五話 ていうか、お子様達とのお遊戯の間に、大陸を揺るがす戦争の影が忍び寄ってきて……?

「ほら、整列するのじゃ!」


「「「はーい!」」」


「ちゃんとご挨拶しなさい」


「はい! じゅーそーせんしのカナタです! よんさいです!」

「はい! こーげきまじゅつしのソナタです! よんさいです!」

「……こうげきまじゅつしのドナタ。よんさいだよ」


「というわけじゃ。悪いが儂の孫と対戦してもらう」


「孫って……おっちゃん、ちいと難しいで。下手したら怪我じゃすまへんで?」

「激しく同意。流石に心が痛む」


 ………。


「じゃが約束は約束じゃ。きちんと履行してもらうぞい」


「……しゃあないな。なるべく加減はするけど、泣いてもしらへんで」


 ………はあ。


「おバカ」

 ごいんっ!

「っっ!! い、いってえ……な、何すんねん!」


「さっきまで話してたことでしょうが。あの三人、よーく見てみなさい」


「「……はい?」」


「まずカナタちゃん。動きの一つ一つにムダがない。相当な訓練を受けてないと、ああいう動きはできないわ」


「! ……へえ。おねーさん、わかるんだ」


「次、ソナタちゃん。さっきから口がもごもごしてるけど、予備詠唱してるのバレバレ」


「うみゅ!? ……バ、バレちゃった」


「最後にドナタ……くん?」


「……ちゃん」


「あ、ごめんなさい。あなたは漏れ出る魔力と殺気が丸わかり」


「……ちゃんとかくしてたつもりだったのに……」


「いずれにしても、四歳なんて年齢で達することができる域じゃない……この子達、たぶん早熟才子(ジニアスキッド)じゃないの?」


「ほほう! そこまで見破るか!」


 早熟才子(ジニアスキッド)ってのは、まさにこの子達みたいなのを言う。稀に生まれる突然変異の一種で、ある分野において考えられないスピードで達人の域に達してしまう、まさに天才。各分野で名を馳せる学者や、各国の歴史に刻まれる英雄にも、早熟才子(ジニアスキッド)が多い。


「ただし、早熟なだけに大きな欠点もある」


「その通り。ちゃんとした教育を施さないと、力を暴走させてしまうのじゃ」


 そのため、もし早熟才子(ジニアスキッド)が発見された場合は、国が保護し、直々に教育することが多い。

 ちなみにだけど、もし何も教育せずに放っておくと、どうなるかと言うと。


「町が一つ吹き飛ぶくらいで済めばマシな方じゃ。この大陸の北側には、ジニアス峡谷という巨大な峡谷があっての……」


「峡谷って……まさか?」


「そのまさかじゃ。剣士の早熟才子(ジニアスキッド)が、たった一振り(・・・・・・)で大地を斬り裂いて作ったのじゃ」


「たった一振りやて!?」


「……己の命と引き換えにな」


「え? それって……」


「ちゃんとした教育をうけていなかった為、力の使い方がわからなかったのじゃな。突然のゴブリンの襲撃に焦り、大地と共にゴブリンを斬り裂いた後……力尽きて果てよった。まだ三歳じゃったそうじゃ」


「さ、三歳……」


「最近自分達の強さに自惚れておっての。訓練も怠けがちでな……」


「……成程な。わかったわ。その根性を叩き直したるわ」


「同じく」


「二人とも待って」


「サーチん? どしたん?」


「……私に任せてもらえないかしら」


「サーチ姉に任せるって……一人で相手するってこと?」


「そうよ」


「……何を考えてるんや? 相手は子供とはいえ早熟才子(ジニアスキッド)や。実力は未知数やで?」


「大丈夫よ、何とでもなるわ。それに……」


 腰に差してあった羽扇を手に取り、ミスリル製のハリセンを作る。


「お子様の相手はね、子育て経験者(・・・・・・)の方がうまいのよ」



「さーて。私はサーチ、一応C級冒険者よ。どこからでも来なさい」


「あの、おねーさん? わたしたち、つよいよ? いーの、ひとりで?」


「悪い子へのお仕置きなら、私一人で十分よ。いいから来なさい」


「……むぅ……! けがしてもしらないんだから!」


 そう叫んだカナタちゃんは、魔法の袋(アイテムバッグ)から巨大な斧と盾を取り出した。うん、重装戦士のスタンダードなスタイルね。


「えぃやあああああ!」


 盾を構えながらの突撃、重装戦士の基本技。早いし圧力もあるけど……。


「甘い」


 私はカナタちゃんの盾にトラースキックを叩き込む。


 がいんっ!


「わわっ!」


 案の定、バランスを崩すカナタちゃん。


「突撃ってのはね、体重がモノを言うのよ!」


 連撃で足払いを打ち込み、カナタちゃんは宙を舞う。


「わわわっ!」

 どてっ


 どうにか着地をしたところで。


 スッパアアアアン!


「はい、一本。勝負あり」


 ハリセンがカナタちゃんの頭にヒットした。


「……い……いたあい……うええええええん!」


 ……そりゃミスリル製だからね。痛いでしょうよ。


「カ、カナタ!」

「よくもいじめたな!」


 ソナタちゃんとドナタちゃんが、呪文の詠唱を始める。ハリセンを構えたまま、一歩ずつゆっくりと近づいていく。


「えい、≪ふぁいあうぇーぶ≫!」

「くらえ、≪あくあうぇーぶ≫!」


 この歳で≪波≫(ウェーブ)まで使えるの!? あの短時間の詠唱で!?


「さすが天才……だけど甘い!」


 飛んできた魔術をハリセンで叩き落として、掻き消す!


「そ、そんな!」「うそだ!」


「ミスリルには魔術が通じないのよ! しっかり覚えておきなさい!」


 魔術を弾かれて茫然としてるお子様に迫り……。


 スッパアアアアン! バッシイイイイン!

「ひぎゃ!」「はぎゅ!」


「……はい。私の完勝ね」


「いたい、いたいよう……うわあああああああん!」

「ひぐ、えぐ……ぐすっ……えぐえぐ」


「あんた達、自分の才能にかまけて全然基礎を磨いてないわね? そんな状態で戦場に出れば、三秒で瞬殺よ、瞬殺」


「ぐす……う、うん」


「才能を使いこなすには、しっかりとした基礎が必要なの。基礎を磨いて出直しなさい、わかった!?」


「うえええん……わ、わがりまじだ……」

「うわああん……が、がんばるもん……」

「えぐえぐ、ひく……や、やるもん……」


 ……よし、ジジイの依頼達成ね。



 時間を少し遡って、お子様達との対戦前。


「なら約束じゃ。エリーミャの孫、エイミアの情報を教えよう」


 ……やっとか。


「まず、エイミアを拐った者達じゃが……」


 ……ごく。


「統一王国を再興しようとする一派がおってな」


「それはエリーミャさんから聞いてる。それに絶望の獣(ディアボロス)を信仰する連中が絡んでるんじゃないかって」


「それだけではない」


 は?


「話は変わるが……古人族に会った事はあるか?」


「えっと……まだ直接は」


「じゃろうな。古人族はほとんどこの辺りにはおらんからの」


「あの……それがどうかしたの?」


「……最近までこの正統王国を主導しておった古人族を始め、ほとんどの古人族が北部のある国(・・・)に集結しておる」


「えっと……?」


「国の名は『神聖ラインミリオフ帝国』」


 ラインミリオフ!?


「古人族によって作られた帝国らしいのじゃが……詳細は不明じゃ」


「ちょっと、ラインミリオフって……」


「そうじゃ。その初代皇帝として即位したのが……エイミア」


 ………!


「そして、その神聖ラインミリオフ帝国が……大陸の統一を宣言し、宣戦布告してきたのじゃよ」


「そんな、エイミア姉が……?」


「どう考えても傀儡にされてるわね」


「……そういう事かいな。おっちゃんの孫をウチらと戦わせた理由。戦争が始まるっちゅう事やな」


「そうじゃ。孫は主力となる可能性が高いのでな」


 ……つまり。


「エイミアが関わってる以上、私達も戦争に巻き込まれちゃうわけね……」


閑話をはさんで、新章です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ