第十六話 ていうか、名物の温泉回! 暗黒大陸で最初の温泉で、親睦を深める!
「うわ〜〜〜〜〜!! 大自然が広がる背景に、沸き上がる湯気! それを照らす、揺らめくランプの灯がなんとも……! いやっほうぅぅっ!」
ざばあんっ!
「くぅ〜〜〜〜!! 疲労の溜まった肉体に染み入る温泉……あー、サイコー! あー、生き返る!」
「……ホンマや。サーチんの脱衣を拾っていったら、温泉に着いたわ」
「サーチ姉の温泉愛は度を越してると思われ」
「……リジーの呪いオタクよりは実害はないやん」
お、来た来た。
「やっほー♪ めっちゃ気持ちいいから、あんた達も入んなさいよ」
「何やサーチん、めっちゃ蕩けとるやん。普段の様子からは想像できへんな」
……メイドフォルムのあんたを知ってると、普段のあんたが想像できないのと同じよ。
「ほらほら、入りなさいって」
「……そやな。ええ加減、清洗タオルも飽きたしな」
そう言ってエリザも脱ぎ始めた。意外と抵抗ないみたいね。
「ほな、失礼〜〜」
着ていたモノ全部魔法の袋に放り込むと、足先を恐る恐るお湯に入れる。
「何をみみっちいことしてんのよ。サッと入りなさいよ、サッと」
「あ、熱いお湯にいきなり浸かるんは身体に良うないんや! 順番にゆっくりやな……「あ、そーれ♪」ってわわわっ!?」
ざっぱあああん!
「ブクブクブク……あっちいいいいいっ!! な、何や、滅茶苦茶熱いやん!」
「そりゃ源泉掛け流しだしねぇ…………ん〜、バランスはヴィーが上。胸の大きさはエイミアが上。脚線美はリルが上。けどヒップはエリザが一番♪」
「ひ、人の身体を品定めせんといて! ウチの身体はリファリス様のモンや!!」
おーおー、純愛一直線だねえ。
「でも残念。リファリスって完全なおっぱい星人よね?」
それを聞いた途端にエリザがシュンとなった。あらら。
「そうなんや……リファリス様はエイミアみたいなんが一番の好みなんや……。何でこんなけったいな脂肪の塊なんか「ちょっと表に出ろや」ひえ!? か、堪忍して!」
「全く……! 大きさも形も悪くないのに、なんてぜいたくなことを言うのよ!」
「お、大きさはともかく、形や色はサーチが一級品やん。ウチはその方が羨ましいで」
「…………そうね。エリザは先がやや茶色「張り倒されたい?」……冗談です冗談です」
でも大きいのには憧れる。無いモノねだりってヤツなのかな。
「……あ〜あ。肩凝りがひどくなるくらいの大きさになってみたいわ」
「ふぁ!? な、何で急に触るんや!?」
「いや、どれぐらいの重さかと……ん?」
「…………」
……妙に赤いわね。温泉浸かってるから、ってだけじゃなさそう。
さわっ
「ひあ!」
さわさわっ
「へぅ!? ちょ、ちょっと止め」
きゅっ
「あひゃああ!」
「艶っぽい声ださないの。あんた、胸が一番弱いんだ?」
「や、やかましいわ!」
……そんなガールズトークが一段落すると、次は暗闇での戦闘の話題になった。
「ウチやリジーは夜目はバッチリやけど、サーチんは大丈夫なん?」
「大丈夫じゃないわよ。私は鳥獣人とのハーフらしいから、あんまり暗いとキツいわ」
「鳥目で戦えるん!?」
鳥型のモンスターは鳥目が理由で、夜間には遭遇しないぐらいだからね。
「完全な鳥目じゃないから。それに気配を探れば問題ないわよ」
私自身、夜目がキツいことはわかってた。だから子供の頃から、目隠しをしての戦闘訓練も日課としていたくらいだ。あれよ、鬼さんこちらってヤツ。
「け、けど地形は? 着地した先で躓いて転ぶ、とか致命的やで?」
「普段から足元は気にするようにしてる。この大陸に入ってからは、歩いた場所の細かい地形は必ず記憶してるわ」
「す、凄いやん……」
そう? 前世の経験の賜物かな。
「エリザの場合は、広い視野を活かした戦い方が得意よね。全く視線を向けずに攻撃するから、敵も受けづらそうだし」
「そうや。リファリス様に特訓して頂いた際に身に付けた奥義で、名前は『鹿斗の舞』や」
……シカトね、なるほど。
「ていうか、なんでエリザっていちいち技の名前付けるの?」
「技の名前? ああ、奥義かいな? あれは元々三盾流の奥義や。ウチが名前付けたわけやないで」
「え? 三盾流ってエリザが勝手に名乗ってるわけじゃないの?」
「失礼やな。三盾流は二千年以上の歴史を誇る、由緒正しき流派やで?」
……二千年も前から盾をぶん回してたのか。
「そ、それじゃ鹿斗の舞も?」
「そうや。ウチと同じカメレオンの獣人やった先々代が編み出したんや」
「それ、日常的にできるようにしたら?」
「日常的に?」
「そう。普段から気をつけてるだけで、技の熟練度は相当上がると思うわよ」
「つまり慣れろって事やな。おおきに、早速やってみるわ」
奥義って言うより、技術って言った方がしっくりくるわね。
「……くしゅん!」
ん? 今のはリジー?
「何よリジー、あんたまだ入ってないの? さっさと入りなさいよ」
「だ、だって。ここ、外だよ?」
「当たり前やん。外にあるから露天風呂なんやで?」
「そ、そうなんだけど……」
「何をモジモジしてんねん……」
「エリザ、リジーは肌を見せるのが苦手なのよ」
「ああ、成程。やからいっつもフル装備なんやな」
そう言うとエリザは立ち上がり、露天風呂から出る。そのままリジーに近づいていった。
「う、うわあ……エリザ、大胆……」
「大胆って、ウチらは女同士やで? 別に見られたかてどうって事ないやん」
「そ、そうなんだけど……」
仕方ない、私も出て……。
「こういうときは強制代執行よ」
「な、何やて?」
「要は……剥くのよ!」
「え、ちょっと!?」
早速脱がしにかかる。
「ほらほら、ジッとしてなさい!」
「いーや! 嫌々々々々々……」
……くっ! 今回は手強い……!
「エリザ、手伝いなさいよ!」
「エリザ、助けて!」
「な、何でウチに同時に声をかけるんや!?」
「うだうだ言ってないで手を貸しなさい!」
「うだうだ言ってないで助けて!」
「そ、そう言われてもやなあ……」
「リファリスの恥ずかしい過去を教えてあげるから!」
「リジー、裸の付き合いは重要やで」
「裏切られた!?」
「エリザ、下をお願い! 上は私が何とかするから!」
「任せとき!」
「裏切った上にノリノリ!?」
二人係りで剥き、両手両足を拘束したまま連れていき……。
「サーチ姉、自分で入れるから!」
「「せーの、ポイ!」」
「ひああぁぁ……」
どぼおおおん!
「がぼぼぼ……ぶはあ! ら、乱暴過ぎだと思われ!」
「乱暴過ぎないと入らないでしょ。ほら、パーティの親睦を深めるわよ」
「……はーい」
……そんな私達を見つめる視線に、このときは気づかなかった。不覚。
覗き?