第八話 ていうか、和気あいあいとスキンシップ。
そのまま昼食を兼ねた歓迎会へとなだれ込んだ。
「えーと、私はオレンジジュースで」
「私は冷やした紅茶をください」
「あ、私も」
「ワシは常温でワイン」
「「「こらこらこら」」」
サーシャさん以外からツッコミが入る。
「……想像はつくがなんじゃ」
「いや、未成年はお酒はダメでしょ」
ちなみにこの世界では、明確に法律とかで未成年の飲酒が禁止されてるわけじゃない。あくまで一般的な常識の範疇だ。
ただしギルドに加入している冒険者には、飲酒に関する年齢の規定がある。それだと十五歳未満はNGだ。
……一応年齢的にはサーシャさん以外はOKなんだけど……こんなこと言った手前、私だけ飲むわけにもいかないか。
「毎度この反応をしなければならないのも煩わしいのう。ワシはとっくに成人じゃ!」
「ウソつけぇ!」
私がツッコミを入れるとリルが呟いた。
「もしかして……種族的な特徴……だったり?」
サーシャはこくこく頷いた。
「その通りじゃ! お主胸はいまいちじゃが頭の回転は早いふぎゃ!」
リルの踵がサーシャさんに刺さった。ちょっとツッコミ激しくない?
「す、すまぬ。気にしておったのじゃな……それでじゃな、ハイエルフは男女で明確に体型に差がでる。男は普通のエルフよりも大きくなり、女は逆に小さくなる傾向にある。ワシで平均くらいじゃな」
そうなんだ……。
じゃあ、何歳なのよサーシャさん。聞きにくいけど。
「それではサーシャさんは今お幾つですか?」
さーすがエイミア。ストレートにいったわー。
「女性に年齢を訪ねるのは無礼じゃろ?」
「私も女性ですから」
あっけらかんと返すエイミア。おっぱい並みに大きい肝っ玉ね……。
「ぬぅ……よかろう。千を越えた辺りからは覚えておらぬ」
……想像の斜め上ってヤツでした。大陸戦争の生き証人がまさかまだいたとは。
あ、ちなみに大陸戦争は約五百年前に起きた戦争ね。
「そういうわけでワシは酒は飲めるのじゃ」
「いや、なんていうか……絵柄的にまずいと言うか体格的にまずいと言うか」
少しサーシャさんがムッとした顔をした。
「……しつこいのぅ。お主のようなチビに言われたくないわい」
……むか。
言っておきますが私いま十五歳で身長が154㎝。その私より10㎝は低いサーシャさんに言われたくない。
「私はサーシャさんよりも身長も胸もあるわ!」
そういってサーシャさんのそれなりの胸を掴んだ。
「いや【R15を超えそうな声あげたので自主規制】!!」
うわ、びっくりした!
「は、は【R15を超えそうな事言い出したので自主規制】……」
うわあああ、なんかヤバいよこの人! 千年の歴史は伊達じゃなさすぎる……私でもドキドキさせられて……あ、リルとエイミアは全身真っ赤になってる。
「あ、あのえと……き、聞こえませんでした!」
「何も見えない聞こえない何も見えない聞こえないブツブツ……」
……エイミアはともかくリルも意外にウブだったのね。
「……たぶん私以外は【R15以下略】なことは免疫がありませんので配慮をお願いします……」
「ふぅ、ふぅ……わかった。ワシもすこし気を付けよう……それはそうと」
全員を見回して。
「お主ら、他人行儀すぎよう。もう少し砕けた話し方をせい」
「……いいんですか?」
「ワシが良いと言っとるんじゃ。仲間なら仲間らしく接してくれい」
そうですか。では。
「よろしく、サーシャさん……言いにくいなあ」
さ行が続くしね。思えば私の名前と少し被るし。
「なら姓で呼びますか。マーシャでいいかな?」
少し考えこむサーシャさん。
「……よかろう。マーシャで頼む」
「わかりました。よろしくお願いしますね、マーシャしゃん」
あ、噛んだ。
「マーシャしゃんは可愛いが周りが萌え狂いそうじゃからな。呼び捨てで良いぞ」
「あ〜……ならマーシャしゃんマーシャしゃんマーしゃんマーしゃん……マーシャンで!」
くっつけた!
「なんじゃそれは! ワシは嫌じゃぞ!」
もう無駄です。
私もサーちゃん→さーちゃん→さーち→サーチの流れで固定されちゃったから……。
「マーシャンね。わかったわ」
「まて! 納得するでない!」
「まあいいじゃねえか、マーシャン!」
「嫌じゃーーーーーー!!」
これが、マーシャンと呼ばれるようになった由来です。