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第十一話 ていうか、早速自警団を追跡開始!

「ん〜……おっかしいわね〜……」


 再び本拠地を出発して二日目。どうにもおかしい。


「どないしたん、首を捻って。朝からずっとやで?」


「これだけモンスターがでないのって、エリザもおかしいと思わない?」


「そ、それはまあ……おかしいな、うん」


 ……深く考えてなかったわね、このカメレオン娘。


「これだけモンスターとのエンカウント率が低いのって、向こうの大陸じゃあり得ないわよ?」


 唯一エンカウントしたのが、出会ってもラッキー、捕獲できれば超ラッキーのゴールドラビットだけ。ちなみにだけど、散々追っかけ回して……逃げられた。ちくせう。


「でもサーチ姉、ちらほらとモンスターのモノらしき骨は落ちてる」


「そうなのよ。だからモンスターがいないわけじゃないのよね」


「なら話は簡単や。狩り尽くされた後って事やないか?」


 狩り尽くされたって……普通はしないけど。


「今サーチが辿ってるのは大量の馬の足跡やろ? 逆に言えば、それだけの人数がいるんやったら、モンスターの掃討も訳無いやろ」


「……じゃあ逆に聞くけど、何のためにここまでするの?」


「さあなあ。ウチにもわからへんわ」


 モンスターが増えすぎて近隣に被害が出始めた場合に、ギルドによって討伐隊が組織されることはある。ただしその場合は「特定の」モンスターの急増への対処がほとんどだ。ゴブリンやオークなんかがいい例だ。

 ただ、今回のは無差別もいいとこ。全く無害なウッドスライムまで狩るなんて、よほどのことだ。ちなみにこの世界のスライムは、スゴく臆病で人に危害を加えることはない。ナイフを持たせれば、五・六歳の子供でも狩れるくらい弱い。経験値も微々たるモノで、何もドロップしない。人畜無害どころか、モンスターの死体を食べてくれたりする、かなり有益な存在なのだ。


「ま、自警団のお偉いさんに聞けばわかる事やん。サーチんは深く考え過ぎやで」


 そうかもしんないけど……。



 自警団を組織している遊牧民の暮らす高原へ向かう途中、大量の馬が通った跡を発見し、それを辿っている。この周辺でこれだけ大量の馬を所有しているのは、私達が会おうとしている遊牧民以外ないだろう。


「でもサーチ姉、その遊牧民に会えたとして、どうやって潜り込むの? 遊牧民って結構排他的だよ?」


「……やっぱそうよね。ヘタしたら門前払いよね……」


「門前払いならマシちゃう? 実力行使なんてされたら洒落にならへん。いくら何でも騎馬兵と一戦交えるなんて御免やで」


 そりゃあそうよ。馬上からの攻撃なんて、厄介なことこの上ない。


「ん〜……悩んでても仕方ない。とりあえず追跡を続行しましょう」


 二人とも頷く。


「しっかし、こうも何も起きない旅って……リファリス様が言われてた『貴重な経験』になり得るんやろか?」


 あまり考えない。


「モンスターが出ないと、呪われアイテムもゲットできない……」


 あんたは呪われアイテム以外のことを考えよう。


「でもいい加減に何かにエンカウントしないかしら。そろそろ食料も心許ないわ」


「あと何日分くらい?」


「三日かな。これ以上獲物が獲れないのなら、明日にはUターンを考えないと……」


「あ〜あ、あの町に入れればなあ……」


 う゛っ!


「町の入口に私達の似顔絵が貼ってあったのは吃驚した」


「『町の自由を取り戻してくれた女性を探しています』やもんな……。見つかったら、どんな目に会うやら」


 それはそれは豪華な歓待を受けるでしょう。嫌になるくらい。


「サーチ姉、今度からは『民衆の決起』も計算に入れてね?」


「あんな事態を想像できるわけないでしょ!」


 って……ん?


「……?」


「何や? 急に立ち止まって?」


「シーッ」


 …………………やっぱり。


「何か来る」

「へ!? モンスターか?」


「違う。これは……馬ね。前方から……五十騎くらい」


「前から……となると遊牧民か」


「でも五十騎という数は、明らかに何かを警戒してるわね。私達の追跡がバレたかな?」


「なら……ヤバいやん!」


「今から逃げようにも……馬の足に勝てるわけないわね」


 果報が向かってきてくれてるんだから、こちらは寝て待てばいい。


「じゃあ……待ちますか」


「はああっ!?」


「逃げてもムダ、隠れても見つかる可能性があり。こちらにやましいことはないんだから、堂々と待ちましょうよ」


「せ、せやかて! もし襲ってきたら……」


「撃退すればいいと思われ」


「……そやな。ウチらが五十騎程度(・・)に遅れをとるはずないか」


 いつでも戦える態勢を整えながら、私達は騎馬兵の到着を待った。



 ……ドドドド


「来たわよ」

「動揺せんようにな」

「……エリザが一番ヤバいと思われ」


 エリザがリジーを睨むが、リジーはどこ吹く風といった様子だ。


 ドドドド!

 ブルル……ヒヒン!


 騎馬兵の灯りが私達を照らす。


「何か御用かしら?」


「突然申し訳ない。我ら竜の牙折り(ドラゴンブレイカー)という自警団だ」


 もう未練のないパーティ名だけど、お前らが名乗るな……と言いたい。


「あなた方が我等を追跡しているのではないか、という声が我等の中から上がっている。誤解ならば大変申し訳ないのだが「そうですよ」……は?」


「だから、あんた達に用事があって追ってきたって言ってるの」


「な……!」


 騎馬兵達が一気に殺気立つ。エリザとリジーも臨戦態勢だ。


「だからさ、あんた達のトップに会わせてほしいんだけど?」


「い、いきなりそんな事を言われて『はい、そうですか』とは言えん!」


「そりゃそうよね。だったら私達を連行して取り調べる?」


「い、いや。そのような乱暴な真似はしない」


 私は目を見張った。てっきり「なら身体中取り調べるか、へっへっへ」っていう反応を想像してたんだけど……。

 すると、私と会話をしていた隊員が下がり、やや年配の男が出てきた。


「まずは分隊長である私が話を聞こう。その上で族長と話が必要であるならば、私から話を通す……それでどうだろうか?」


 分隊長からの提案は、まさに渡りに船。


「構わないわ。そこまで譲歩してくれてありがたいくらい」


 私と分隊長さんが柔和な雰囲気でいるのに、後ろの隊員の一部がブーブー言い始める。


「分隊長! そんな弱腰でどうするんですか!」

「こんな連中に下手に出る必要はありません! 実力行使に出ましょう!」


 ……女子供が相手だと、威圧的になる連中っているのよね。少し黙らせようかな……。


 ズガアアン!

 メキメキメキ……ズズン!


「「「…………」」」


 エ、エリザが大木をど突き倒した。持っていたタワーシールドを地面に突き立て。


「ウチが相手したるから、文句のある奴はかかってきいや。ただ、その大木みたいになる覚悟はしいや」


「「「文句はありません! 申し訳ありませんでした!」」」


 手のひら返すの早いな!


「……我々では敵わないと思ったから、思い切って譲歩したんだよ……」


 ……分隊長さん、苦労してるのね……。

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