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第五話 ていうか、異世界に来てまでスカイダイビング!? しかもパラシュート無し!? しかも敵襲!?

「こ、こここ降下!? ウチらだけでって何やねん!?」


「つまり、このままだと暗黒大陸に行けない。だから城からダイビングしてヒャッハー! でおk?」


 うん。ヒャッハー! はいらないけど、大体そんなとこ。


「はあああっ!? 死ぬ死ぬ死ぬやん! このまま地上へ突っ込んで盛大に散るでえ!?」


 うん、命的にも身体的にも盛大な花火になるわね。


「落ち着きなさい。シロちゃんが、自分のマスターをむざむざ死なすような提案、するわけないでしょ」


「そらそう……やな?」


 何で疑問系なのよ。


『何かと失礼な方ですね、エリザさんは。主砲に詰めてぶっ放しますよ?』


 止めたって止めたって!


「それより……このまま飛び降りたとして、私達が攻撃される心配はないの? 流石に私でも、空中で戦うなんてできないわよ?」


『マイマスターは≪気配遮断≫して下さい。あとの二人に関しましては、私が≪魔力遮断≫をかけます。ただし、空のモンスターに効き目があるかは……』


「……まあ仕方ないわね。あと着地方法を」


『この魔術球をお使い下さい。風の魔術が封入されていますので、これで速度を調節なさって下さい』


「……わかったわ。シロちゃん、ここまで送ってくれてありがとう」


「……なあ、サーチん。何でシロちゃんと会話しながら、リジー入りのゴミ箱をヒモで巻いてるん?」


「この子、毎回高所からの落下で大騒ぎになるからさ」


「ま、まさかこのまま!?」


「大丈夫よ。すでに殴って気絶させたから」


「最近気付いたけど、サーチん仲間の扱いが雑すぎへん!?」


「うっさい。ほら、あんたも腰にヒモ巻いて」


「へ?」


「私が魔術球のコントロールを担当するから、エリザはタワーシールドを左右に広げて、最後まで耐え切りなさい。あとは私が何とかするから」


 そう言ってる間にもエリザをゴミ箱に固定する。


「ほら、早くタワーシールドを出しなさい」


「は、はい」


「んじゃあ行くわよ……はい、バンジー!」


「ふぇ!? ぎいあああああぁぁぁぁぁ…………」

「じゃあねシロちゃん! 無事に帰りなさいよ!」


『どうぞ御武運を!』


 そう言って私もバルコニーから身を躍らせた。



 スカイダイビングの経験が、こんな時に役に立つとは……身体を真っ直ぐにして空気抵抗を減らす。そのままスピードをあげ、ぐるぐる回りながら落下していたエリザ達に追いつき、どうにか取りついた。


「バカ! 早くタワーシールドを横に広げなさい!」


「ひぇひぇひぇひぇひぇひぇぇぇぇ!」


 ダメだああ、完全にパニクってる! 仕方ない、強引な手段だけど……!


「ひぇひぇひぇひぇむぐぅ!?」

「……」

「むー! むー! ぶはあっ!? な、な、な、何すんねん!?」


 ばしっ


「痛! ていうか、落ち着いた?」


「…………ああ、ああ、落ち着いたわ。そこは感謝するけどな……私は全てをリファリス様に捧げてんねん。サーチんに乗り換える気はぐっほお!?」

「私だってそんなつもりはないわよ! 緊急避難なんだからね!」


「わ、わかったわよ……げほ、ツッコミ強烈すぎるで……」


 エリザは言われた通りにタワーシールドを左右に広げ、翼のような状態にする。私は魔術球を起動させ、空気抵抗を拡散させた。


「お、おおお? 急に楽になったわ」


「あとはこのまま滑空していけば何とかなるわ。地面が近づいたら魔術球の力を全部開放するから、その爆風に乗って着陸ね」


「……サーチん、その魔術球っていうアイテムの使い方、よく知ってたなぁ」


「はあ? 何言ってんのよ。知るわけないじゃない」


「へ? じゃあどうやって操作してるん?」


「行き当たりばったり」


「……ひぇひぇひぇぇぇぇぇぇ!!」


「冗談よ! シロちゃんが念話で教えてくれたのよ! パニクるのは止めなさい!」


 マスターになった影響か、シロちゃんとは念話のホットラインみたいなのが繋がったのだ。


「ほら、このままだと海に墜落するわよ。ちゃんと滑空しなさい」


「は、はいな」



 ……無事に滑空できてたのは、ほんの数分だった。


「! ……ちぃ、モンスターか!」


 やっぱり空中じゃ≪気配遮断≫や≪魔力遮断≫は無意味だったか!


「な、何や。どうしたんや?」


「東北東からモンスターが三匹迫ってるわ!」


「えっ!? 敵には気付かれんのとちゃうの!?」


 エリザは辺りをキョロキョロするが……見えないって。


「……何もおらへんで」


「まだ視認できない距離だからね」


「な、何でサーチんにはわかるんや!?」


「あとで説明するから! それよりエリザ、ちょっと背中借りるわよ!」


「人の背中に座るなあああ!」


 エリザの抗議は一切スルーして、以前大量に作っておいたボーラを魔法の袋(マジックバッグ)から取り出す。


「私が迎撃するから、エリザは滑空に専念して」


「……まかせとき」


 ……ボーラを振り回して待機していると……来た! プテラノドンのミニチュア版みたいなヤツ!


「ようし……ちぇい!」


 ブウン!


 とりあえず一発目は……避けられる。それを見越して二発目投てき!


 ギャ!?


 クリーンヒット! 見事に翼の片方に絡まり、飛べなくなって墜ちていく。それを見た他のミニチュアプテラノドンは、二手にわかれて私達を窺う。意外と知恵が回るみたいね。


「でも……甘い!」


 一匹の行き先を予想して、煙幕弾を投てき。


 ボフン!

 ギャ!?


 煙の中に突っ込んで戸惑うミニチュアプテラノドンに、二つのボーラがヒット。そのままぐるぐる回って落下していった。


「よし、あと一匹や!」


「……ヤバい」


「な、何がや?」


「……ボーラがあと一発しかない」


「は、はあああっ!? あと一発やて!? 避けられたらお仕舞いやんか!」


「バカ! 声がデカい! 知恵があるモンスターだったらどうするのよ!」


「あっ!」


 ……もう遅かった。残っていたミニチュアプテラノドンは、私の持っているボーラを注視している。


「……完全に気づかれたわね……」


「や、ヤバいやんか!」


「あんたのせいでしょうが!」


 ギャアギャアと言い合う私達を悠々と見下ろすミニチュアプテラノドン。ム、ムカつくわね……!


「これでも食らえ!」


 暴発気味に投げたボーラは、案の定避けられる。


「うわー、避けられたー」

「きゃー、旋回してこっちに向かってるー」


 (ちょっと、打ち合わせも無しで演技に付き合ってくれたのには感謝するけど、少し棒読み過ぎない?)

 (……人の事を言えるかいな)


 勝利を確信したミニチュアプテラノドンが、ニヤリと笑った気がした。そのまま私達を攻撃する……。


「……なーんちゃって♪」


 私は背後に隠していた羽扇を引っ張る。羽扇から伸びていた細いワイヤーは、縛ってあったボーラを引き戻し……。


 ひゅ〜〜……ゴゲンッ!!


 グギャ!!


 目前に迫っていたミニチュアプテラノドンの頭に落ち、気絶したらしく、そのまま墜ちていった。


「サーチん! サーチん! 目の前目の前!」


「な、何よ……ってぎゃああああ!」


 もうすぐ地上だとはわかってたけど! なんでこんなとこに塔がー!?


「エリザ、旋回旋回!」


「無茶言うな!」


「ええいくそ、魔術球の魔力全開ぃぃぃ!」


 ヤケクソで塔に向かって暴風を放つ!


 ぶわぁ!


「「ぎゃあああああああ!」」


 なんかループしてるぅぅぅ!?


「「ひぃあああああ!!」」


 あーもうダメェェェ!!


 ズザザザザ! どごぉ!


「げぶうっ!」


 ………………あ、あれ? 止まった?


「え? こ、ここは?」


 なぜか着地した周りには、ギリシャにありそうな柱がぐるりと……。


「……あ、そうか。塔のてっぺんに着地したんだ…………はは……あはは……あはははははははははっ! 着陸成功! シロちゃんやったよおおおっ!」



 ……こうして私達は、暗黒大陸へ上陸した。


「助かったあ……っていうか! エリザ、エリザ大丈夫!?」


 ……私の下敷きになって悶絶してるエリザに気づいたのは、それからすぐのことだった。


「……むにゃむにゃ……快適……」


 ……ゴミ箱の中でぐーすか寝てるリジーを思い出すのは、一時間くらい経ってからだった。

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