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第二話 ていうか、暇な暇な移動時間、エリザとの会話の途中に意外な大発見がある?

「は〜う〜、暇暇暇暇暇暇暇暇……」


「エリザ、うるさい」


「だって〜暇や〜ん………あーー、暇や暇や暇やあへげぇ!」


「うるさいっての! 読書中なんだから静かにしなさい! ていうか、そこまで暇なら紅茶の一つも淹れなさい!」


「ツ、ツッコミきつすぎやん……」


 ……たく。調べモノもろくにできやしない。椅子に戻って伏せてあった本を手に取った。



 以前に新大陸への航海の間、以上な暇さ加減に飽き飽きした覚えがあったけど……今回もだ。


「海みたいに揺れないから楽かと思ったけど……微動だにしないってのもねえ……」


「そう? 私は無問題」


 ……シロちゃんの蔵書の中に『世界の呪い全集』なる「誰か読むヤツいるの?」という百科事典並みに分厚い本の列を発見したリジーは、それ以来読書に勤しんでいる。

 一方エリザは、すっかりリファリス成分が抜けきってしまったらしく、よく東京に出没する「エセ関西人」と化している。まだ豹柄や虎の顔模様の服を着るまでには至ってない。


「ほい、リジやん紅茶どーぞ」


「ありがとう。でもリジちゃんは止めて」


 でも中身はバリバリのメイド。結局ジッとしてられず、マメに私達の身の回りの世話をしてくれる。


「ほいな、サーチんもや」


「何で私はサーチんなのよ!」


「ええやん、親しみを込めてるんやで」


 ……たく。さて、今回の紅茶はどうかな〜。


「……ん〜……惜しい、85点」


「何でや! 湯もあっついし器も温めたで!」


「もう少しカップの温かさが必要だったかな」


「ぐぬぬ……! つ、次こそは……!」


 ……正直、私は地のエリザは嫌いじゃない。明るいし努力家だし、メイドフォルムのときのようなお高い感じが一切ない。


「い、いつかサーチんをギャフンと言わせたる!」


 ……変なあだ名をつけるのと、中途半端な関西弁がたまにキズなんだけど。


「でもサーチんはどこで紅茶の事を勉強したんや? ウチら本職のメイドより詳しいなんて、なかなか居らへんで」


 レッドデビルと、紅茶とモンスターが大好きな友達の影響かと。


「ま、紅茶のスキルを身につけとくのはいい事じゃない? ちゃんと習得して、リファリスにごちそうしてあげなさいよ」


「リ、リファリス様に………こ、紅茶にブランデーをたっぷり仕込んで……夜の……デュフフフフ」


 いや、ザルのリファリスにはムダだと思うよ? ていうか、ブランデーの比率が上がったら、どっかの提督の「紅茶入りブランデー」になるだけよ。


「あ、そうや。サーチんは何を熱心に調べとるんや?」


「……あのね……私達が今から行くのは未知の大陸よ? 何か情報はないか、断片的なモノでもかき集めるのが普通でしょ!?」


「え…………あれは?」


 リジーは放っといて。


「あんたも手伝いなさいよ! まだまだ調べる書物は、腐るほどあるんだからね!」


「へえへえ……でもどの辺りの情報が知りたいん?」


「どの辺りって……」


「北部に広がるバードバード砂漠が降りるには楽やで。セート海にはたっくさんの小島もあるから、人目は避けられるな」


 ちょっと待てちょっと待て。


「エリザ、その固有名詞は何? 明らかに私は聞いたことがない地名だったような?」


「んあ? 暗黒大陸の地名に決まってるやんくきゅ!?」


「……何でそんなことを知ってるのかしら?」


「ちょいちょいちょい! 首首首! マジで絞まってるて!」


「心配しなくてもマジで絞めてんのよ」


「死ぬって死ぬってええ!! ツッコミも激しすぎれば犯罪やでええっ!」


「じゃあキリキリ吐きなさい! 何で知ってるのよ!」


「な、何言うてんねん! 世界地図に載ってるやないか!」


「なっ!」「え!?」


「な、何や」


「「世界地図を持ってるの!?」」


「…………あ、しもた……な、何の事やろな〜……」


 がしぃ


「エリザ〜……私達仲間よね? 隠し事はダメよ」

「見せろ見せろ、今すぐ見せるべし」


「し、知らへんよ〜」


「リジー、右手を拘束」

「らじゃ」


「な、何をする気や!?」

「ん? 拷問。えい」

 ぷすっ

「いったああああい! 爪が、爪が!」

「〝深爪〟のリル直伝の技、あんたの身体に刻み込んでやるわ」

 ぷすっ

「あっきゃああああああん! もう嫌や! わかった! 白状するから堪忍してええやあああ!」


「え、もうリタイア? ずいぶん早かったわね」

「エリザは忍耐力には欠けると思われ」


「あ、あんたらは鬼かああ! あんなん耐えられるわけないやろ!」


「え? そうかな?」


 自分で……えい。


 ぶっすう!


「う、うひょうおうえい!!」


 何よ、その独特な叫び声は。


「み、見てるこっちが痛いわ! 自分で刺すなんて何考えてんねん!」


「別に痛くないわよ」


「「……はい?」」


 指先からダラダラと流れる血を押さえながら、何事もなかったかのように答える。


「ほら、エリザより深く刺したけど、何ともないわよ」


「う、嘘や……。深爪して全く痛ないやなんて……」

「痛くないわけじゃないわよ。要は気の持ちようかな」


「そ、そうなんや……」


「でさ。こんなスゴい私のために 世界地図は見せてくれないかな?」


「……ふう、しゃあないな……何て言うと思うか!? あかん、絶対にあかん!」


 ……ちっ。半泣きになりながらも耐えたのに。



 前世では当たり前だった世界地図、こっちの世界では究極の遺物(アーティファクト)の一つである。

 まだ未踏の地がたっくさんあるこの世界、当然ながら世界地図なんてあるわけがない。

 でも! この世界は、何てったって……ファンタジー。あるはずがないものがある世界。そう、あるのだ。世界地図が。

 今のところ存在が確認されている世界地図は四つ。そのうちの一つは≪上空風景≫(グローブ)という血族スキルで、どっかの獣人の一族が受け継いでいるって聞いてたけど……。


「まさかエリザだったとはね……」


「なあなあ二人共、お願いだから内緒ね、ね?」


「……やっぱ知られるとめんどくさいの?」


「サーチ姉、多分誘拐されると思われ」


「……そうよね〜。魔術なり薬なりで意思を奪っちゃえば、世界地図は思いのまま……まさに金のなる木……」


 他の世界地図は全て未公開だから、まさに引く手あまたでしょうね。


「ウチはそんな真っ暗な未来は御免や! お願いやから内緒にしてえな! な!」

「「……」」


 私とリジーはニヤリと笑い。


「「……なら見せて♪」」


「な……!? あ、あかん! 絶対に見せられん!」

「「皆さーん、エリザは実は世界地図を」」

「わー! わー! わかった! 見せたる! 見せたるさかい、堪忍してえええ!」


 ……ニヤリ。

初めてランキングされました。下の方でしたが……嬉しい!

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