第九話 ていうか、最終決戦! みんながそれぞれの役割を全うしてくれるから、私は先に進めるんです!
「……風向きよーし。視界良好。身体もドラゴンのヒゲも問題無し……っと」
矢の代わりの短槍を取りだし、セット完了。ギリギリまで………くぅ………引くぅ!!
「……角度……よし! 目標、絶望の獣の右端の顔の右目! れでぃ……………ふぁいあ!」
ドシュン!
ヒイイイィィィ……
……………ザスッ
ギャアアアアアアアアアアア!
「よし、命中! ……うわあ!」
私が矢の命中を確信したと同時に、あの光線で反撃してきやがった!
「あ、あぶねえあぶねえ……けど、これであいつの気を引くことができるな……」
さらなる反撃がないことを確認してから、移動を開始した。
「そういえば……あの飛んできた短槍を持ってきちまったが……使っていいのかな? まあ短槍切れになったら使わせてもらうか……」
「……くぁ! 今のは封じられなんだのう」
「な、何て凄いパワー……」
かなり威力を弱める事はできましたが……どちらにしても、一撃で消滅させられる程の威力である事には変わりありません。
『……大変! 大変よお!』
その時、血相を変えた魔王様の念話が飛び込んできました。
『ち、地上でケルベロスが大量に攻め寄せてきてる!』
「えっ!? どういう事ですか!」
『さっきの絶望の獣の変身の際、あいつの力の欠片が結構地上に降り注いだの。それが小型のケルベロスに変化して、あちこちに被害を出し始めてる!』
「そ、そんな! 一体どうすれば……『安心してもらおうか』……へ!?」
突然、念話水晶から聞こえてきた声。それが私達に一筋の光をもたらしました。
『我等ギルドがすでに動いている。被害が出ている町へ冒険者が向かっており、すでに交戦状態の場所もある。戦いは優勢だから安心されよ』
『それだけじゃないわよ〜!』
この声は、秘密の村の……!
『久しぶりぶり、今が旬!』
『久しぶりぶり、私はブリッ子!』
『以上、クルクルマキでした〜!』
「…………あはははは」
『『笑いに感情が込められてない!』』
………………ク・ルクとル・マキは相変わらずですね。
『チクショオオオ! 何故俺様までえええ!』
『ほら、キリキリ働きなさい! ……へヴィーナ、やほ〜』
ガードナーゾンビに、死霊魔術士の姉さん……!
『ふーい、ふーい、何故長老の儂が……』
『働け!』『戦え!』『さっさと進めえ!』
『は、はいい!』
『『『へヴィーナ、こっちは私達に任せて!』』』
皆……! ありがとう……!
『我らも戦ってますぞ!』
デュ、デュラハーンさんも!?
『それに真竜も参戦しています!』
真竜まで……!
『それと、魔王様の許可は得ていませんが、ダンジョン産モンスターを投入しました』
ダンジョン産を!?
『い、一応緊急措置として、ダンジョンコアをちょこっと弄ってはあったけど……ちゃんと作動したんだ』
『おお、魔王様! 事後承諾で申し訳ありませんが、ダンジョン産モンスター達の活躍は目覚ましいですぞ!』
「ま、魔王様。人間は襲われないのですか?」
『ええ。ダンジョンコアに目標をセットすれば、それだけを攻撃する仕様だから』
『だから何も心配せずともよい! へヴィーナ、この世界を救ってくれ! 頼んだぞ!』
ありがとうございます、デュラハーンさん!
『我ら人間も負けてはおれん! 必ず守り抜くぞ!』
あ、ありがとうございます! ギルド所属の誰かさん!
「さて、後顧の憂いが無くなった以上、次こそ防ぐぞ、ヴィーよ!」
「……はい! それより……マーシャン?」
「む、何じゃ?」
「先程のギルドの方は、どなたですか?」
「ん? ムムムム……本部のお偉方じゃったと思うが………思い出せん」
あの哀れな方がギルドの総帥だと気付くのは、ずっと後の事でした。
「う……く! ぐうう………!」
『その調子です。≪蓄電池≫と要領は同じですよ』
「は、はい!」
『……! エイミア、また光線が来ます! 結界の強化を!』
今度こそ……止めてみせます!
……ォォォオオオ!
バヂィ!
「あうううううううぅぅぅぅっ!」
バヂヂヂヂヂヂ!
「ぐぅぃぅ……あああああっ!!」
バヂイイン!!
「く……はあ、はあ、はあ……」
『……エイミア、見事でした。威力は半減していたとは言え、あなたは防ぎ切ったのですよ?』
「はあ、はあ……い、いえ。マーシャン達が威力を弱めてくれたから……です」
『……エイミア。リルの矢が来ます。結界に穴を』
「はい!」
……ヒュウン!
『……タイミングもバッチリです。このまま維持しますよ、エイミア』
「わかりました、ニーナさん」
絶対に勝って、サーチに……言う事があるんです!
『……エイミア。サーチに何を言うのですか?』
「ひゃぐ!? な、何でそれを!」
『……あなたの心の声は大き過ぎます。気を付けないと駄々漏れですよ?』
……はい。修行します。
「…………」
あれからリファリス様は、一言も話されない……。これ程集中なされたリファリス様は、初めてです。
……ィィィイイイン!
「!? 光線が!」
急いでタワーシールドを展開して、防御を……!
ズバババババババ!
「くぅああああああ!」
す、凄い衝撃! と、とりあえず、流動の舞で逸らして……。
「あ! リファリス様が……」
ここで軌道を逸らせば、リファリスに光線が!
「……耐える! 耐えてみせます!」
バヂヂヂヂヂヂィィ!
た、盾が赤く……発熱している!?
ジュウウ……
「!! きゃあああああ! 手が、手があああ!」
や、焼ける! 手が!
バヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ………
ジュウウ……
「あ……あ……ぅ……は、離さない。絶対に離さないんだからあああああっ!」
バヂヂヂヂヂヂ……ヂ……ヂ…………
「……ぐぅ……はあ、はあ、はあ……ま、もり、きった……。私、リファリス様を守れました!」
……と、浮かれていられない。またあの光線が来るかわからないんだし……今のうちに手を治療して、タワーシールドを直しておかないと……。
その数分後、必死に術を制御するリファリス様の頬に、涙の跡を発見するのですが……あれは私に関連する涙なのでしょうか?
「……光線が止んだ」
あ、そういえば。
「マーシャがようやく封印に成功したか、エイミアちゃんの結界に弾かれたか……」
「どちらにしても、皆のおかげと思われ」
……みんなの頑張り、ムダにはしない!