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第十六話 七冠の魔狼封印作戦、その五! ていうか、色々画策してみたけど……。

『さあさあ、私が相手です! 正義の力、今ここに示してあげましょう……グレートエイミア、ファンタスティックチョオオオオオオップゥ!!』


 ぶん! ズゴゴゴゴゴゴゴン!!


『……という感じじゃ。エイミアの奴めは異様に張り切っておるぞ』


 ……みたいねえ。こっちにまで衝撃波が伝わってくるチョップを放ってるみたいだし。


「……わかったわ。マーシャンはグレートエイミアのフォローをお願いね」


『必要ない気もするが……任せておけ』


 マーシャンが実況生中継を切ると、辺りが静寂に包まれた。


「……おい、サーチ……あんだけ煽ったんだから、戦いが終わったあとのケアはお前が責任持てよ? エイミアの精神的ダメージが心配だ……」


「わかってるわよ。それよりも肝心なリジーの回復具合はどう?」


「今ヴィーが付きっきりで≪回復≫(リカバリー)してるよ」


 リルの背後を見てみると……ヴィーが額に汗しながら、≪回復≫(リカバリー)の連続使用中だ。一方、回復される側は次の布石のために呪いを実行中なんだけど……。


「ブツブツブツ……呪われろ呪われろ呪われろ……ブツブツブツ……す○るお○るす○るお○る」


「ちょい待ち! 今のシーズンにその言葉を連呼しちゃダメ!」


「そう? なら……ふぉーるすりっぷふぉーるすりっぷふぉーるすりぷみゃ!」


「お・な・じ・だ・よ!」


「しひゃひゃんびゃしひゃひゃんびゃ!」


 舌を噛んだ、と言ってます。私が頭を押さえつけたときに、ガブリと。


「ヴィー、ついでに回復してやって」


「……サーチ、私の疲労も考慮して下さいね?」


 ……すいません。ヴィーのケアもちゃんとします。


「……疲れてるとこ申し訳ないけどさ、リジーの進行状況なんてわかる?」


「私には何とも言えません。ず〜っとブツブツブツブツ、呪いの言葉を吐き続けているだけですから……私まで滅入ってきます……」


 あああ、ヴィーまで呪われてるぅぅ!


「えーっと…………この件が片づいたら……ダウロで一泊してあげるから!」


「……同部屋ですか?」


「抜け目がないわね……。いいわよ、同部屋で」


「……一泊だけですか?」


「……ホンットに抜け目がない……! わかったわよ! 何泊でもしてあげるから! その代わり馬車馬以上に働いてもらうからね!」


「わかりました……! ではキリッとします。リジーに≪完全回復≫(フルリカバリー)の三乗!」


「ブツブツブツうみょおおお! 何だか二十四時間呪えそうな気がします!」


 どっかのビジネスマンかよ!


「私自身にも≪完全回復≫(フルリカバリー)!」


 え?


「サーチにも≪完全回復≫(フルリカバリー)!」


 あ、どうも。


「このダンジョンの全てに≪完全回復≫(フルリカバリー)


「するなっ! 七冠の魔狼(ディアボロス)も回復するでしょうが!」


「あ、MPが無くなった……ヘロヘロ〜」


 ……自分で「ヘロヘロ〜」って言うヤツ、初めて見たわよ。


「あ、ああ……疲労が蓄積されて、ポーションの瓶も持てません……。仕方ありません、サーチからの口移がぼっ」


 無言でヴィーの口にMPポーションの瓶をつっこんだ。


「がーぼがぼがぼがぼ……ぶくぶくごべっ!」


 あーあ、吐き出した。もったいない。


「げほげほげほ……な、何をするんですか!」


「何をするって……あんたの望み通りにしてあげたのよ。ただし、瓶の口からの口移しだけどね」


「そ、それは詐欺ですよ!」


「うっさい! 詐欺でも何でも、あんたは馬車馬以上に働いてもらうからね! ほら、もっとMPポーションを飲みなさいいい!」


「がぼ!? ごくごくごくごくがばぐぼおおお!」


 よし、これでヴィーも回復したでしょ。さて、私も≪毒生成≫しなきゃいけないし、一応ポーションを……。


 かちんっ


 へ!? か、顔以外石に……?


「ケホケホ……サ、サーチもポーションを飲まないといけませんね?」


「え゛……の、飲まなくてもいいです。大丈夫です。だから石化を解いて」


「駄目です。戦いに挑む以上は、万全な体勢じゃないと。何が起こるかわかりませんよ?」


「そ、それはそうなんですけど……今の私には必要ないです」


 ぽんっ

 ごくごくごく


「えーっと、ヴィーさん? なぜ口いっぱいにポーションを含んでるのかな?」


 ヴィーはニッコリと微笑むと、私の頬を掴んで……。


「ちょ、ちょっと待ってむぐぅ!? ごぼごぼがぼがぼがぼー!!」



「……あのバカ……げほげほ!」


 結構流し込まれた(・・・・・・)……お腹が張って苦しい。おえ。


「いいじゃねえか。お前の捨て身(・・・)の励ましでヴィーはやる気全開になってるんだから」


 ……別に狙ってやったわけじゃないんですけど。


「しかしよ、さっきお前が言ったような単純な方法で、ホントにうまいこといくのか?」


「うまいこといかせるのよ。アサシンの真骨頂を見せてあげるわ」


「アサシン? お前は重装戦士だろ?」


 しまった。


「じ、自称よ! 文句ある?」


「いや、ねえよ。大体……」


 私の全身を見てから、リルが一言。


「お前を第一印象で重装戦士だと思うヤツは、まずまずいないだろうよ」


 ……反論できない。くそ。


 ガツンッ


「いってえ! 何ですねを蹴るんだよ!」


 八つ当たりだよ。



 リル達も陽動に回ってもらい、一人きりで移動する。木々の間を音も立てずに飛び移り、大蝙蝠などのモンスターは≪気配遮断≫でやり過ごす。徐々に距離を縮めていき、ついに。


『ザコ共はどれだけいやがるんだ! うぜえ、うぜええええええっ!!』


 七冠の魔狼(ディアボロス)の背後に近づいた。


 (ちぃ……顔が七つあるってのは、これほど厄介だとは……)


 七つ顔があるってことは、十四の目があるってことで……。背後に回ったとしても、見られてる可能性が高いわけで……。


 (目を潰すしかないか……)


『……ん? そこの木に、何かいるな……?』


 やっべ。気づかれた。

 仕方ないので……。


「……ぶーっ!」


『ぐあっ!? ぎゃあああああああああ!』


 毒霧を目に吹き掛ける。これは単なる玉ねぎの成分なので、状態異常無効に引っ掛かるような毒ではない。

 なので……。


『目が!? 目がああああっ!!』


 めっちゃ効く。

 ただ、この騒ぎに他の顔が絡んでくると面倒なので。


 がぶぅ!! どくどくどく!


 さっさと毒を注入して離脱した。


『ぐがっ……』

『ん? どうした、「暴食」?』

『突然眠りこけおったぞ?』

『「暴食」が「怠惰」になったか? ワハハハハ!』


 ……まあバレずに済んだ。

 成功をみんなに伝え、とりあえず撤退した。

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