第三話 ていうか、今度こそ温泉回?
「「「ギャーーっ!」」」
「ああ……あんた達の反応で何があったかわかったわ……とにかく落ち着きなさい」
完全におねぇ化した変態ギルマスが落ち着きはらった声で言った。
「うわあああ何の罰ゲームなのよおおお勘弁してよおおお……て、あれ?」
おかしい。よく見てみたら、エイミアより豊かなアレが胸にくっついてる。
と、いうことは!?
「胸に何を入れたの!? シリコン? 脂肪?」
「何にも入れてないわよ! 100%天然よ!!」
ダウロのギルドマスターが食って掛かる。そ、そんなはずはない!
「じゃあ魔法? どういう手を使ったの? 吐いて、吐きなさい! うりゃうりゃうりゃ」
「あいたたたたたた!や、やめ、やめなさい。やめて! やめなさいっての……やめろおおおおおお!!」
ごちんっ!
「あいたぁっ!!」
「あんた、途中から私情が入りまくってなかった!?」
す、鋭い。ていうか、何なのよ……この馬鹿力。変態ギルマスの上をいってる。
「あなたが何を言いたかったか、よーーくわかってるから落ち着きなさい。あなた達はスーモサカから来たのね?」
三人揃って頷く。
スーモサカと言うのは私達が最初にいた町ね。ギルド養成学校があった所。
「やっぱり……あのバカは相変わらずみたいね」
……別人?
「弟がお世話かけたみたいね……私は姉のダリアよ」
……。
……あ……ね……?
てことは……これ本物?
もみもみもみ
柔らかい……本物だ……。
もみもみもみ
いいなあ……。
もみもみもみ
これくらい欲しいなあ……。
もみもみも
「やりすぎよ!」
ぱかんっ
「いったーい!」
「私情入りすぎだって言ってるでしょ!」
ご、ごめんなさ〜い。
「す、すごい遺伝ですね……」
髭がないのと胸の大きさ以外はそっっくり。
「ほんと……あの弟のせいで私達の一族がどれだけ迷惑をしているか……」
……まさかとは思うけど……一応確認してみよ。一種の怖いもの見たさ?
「あのー……ダリアさんの一族って……全員同じ顔……?」
同じ顔の女医さん? あるいは巡査さん?
「同じ顔? そうね、何故かそっくりな人が多いわね」
やっぱりーーー!
……てことは……!
「い、一族みんなギルドマスター……ですか?」
「え? やあねえ、そんなわけないじゃない。ギルマスなんてやってるのは私と弟くらいよ。両親は根っからの農民よ」
よ、よかった。
なんだか周りの人達もホッとしているように見える。そして、何よりも大切なこと。
「女……だったんですね?」
「…………女よ…………」
顔立ちは悪くない。悪くないのだ。
だけどダリアさんの顔を見るたびに変態ギルマスの「むふーっ」が過る。
……不幸な人だ……なかなか相方も見つからないだろうな……。
「で? あんたらも被害を受けたのかい?」
「はあ……」
私がエイミアを指差す。
「ああ、なるほどね。あの弟の好みそうなおっぱいだねえ」
二、三回頭を振るダリア。
「けどねえ、あんたもそんな扇情的な格好するからダメなんだよ。もっと大人しい格好するんだね」
「あ、それはムリです」
エイミアが何か答える前に私が回答しておく。ダリアは私を上から下までじっくりと見てから。
「……あんたがいる限り仕方ないのかもしれないね」
と言って溜め息。失敬な。
「露出狂ってのは周りに感染するものなんだね」
私のビキニアーマーとエイミアの胸ガバッドラゴンローブを見ながら呟いた。エイミアは私の陰謀に巻き込まれただけなんだけどね。
あ。エイミアが涙目で睨んできてる。ごめんよう。
話がかなり脱線した。
「ああ、そうだった。堕つる滝に行きたいんだったな」
……さすがに温泉のついで、とは言いにくい。
「は、はい。堕つる滝の最下層に行きたいんです」
次代の勇者の出現を示す場所、と言われているらしい。
「しかしな……君らはDクラスだろう? 堕つる滝には最低でもCクラスじゃないと許可は出せないことになってる」
なんですとー!
「……その顔だとあの愚弟からは何も聞いていないのだな……」
ダリアさんからしんしんと殺気が溢れてきてる……気持ちはわかるけど。
でもこれで安心。私達のパーティでは許可が下りませんでした。立派な言い訳だ。
あとはゆっくり温泉だ〜♪
「しかし最年少の竜殺しだからな……よし。私の推薦する冒険者と臨時パーティを組んでもらおう。それで仮にパーティクラスを引き上げよう。これで行けるな」
え……。
………………。
他の二人も……同じ考えだったのね……。
「……どうした? 嬉しくないのか?」
「「「あ、ありがとうございます……」」」
……空気読まないところは変態ギルマスとそっくりだわ……。
ていうか今回も温泉入れないの!?