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第二話 ていうか、ソレイユ達が調べてる間に、久々の登場人物が……。

「とりあえず……暇ね」


 回廊の入口から撤退し、ソレイユの執務室で待機してるんだけど……もう三時間か。


「石化状態って本人(ヴィー)以外には解けないんですか?」


 屋上から必死に運んできたリジーの石像は、部屋の中央にリルと一緒に転がしてある。よく石化するわね、この二人……。


「できるわよ」


 無限の小箱(アイテムボックス)の中から、小さな袋を取り出してみせる。何となく石化されてる二人の表情が明るくなったような……。


「これ。オルキクっていう草を乾燥させて粉末状にしたヤツなんだけど……大体の状態異常に効くわ」


「ほ、本当に!? なら早速使ってあげましょうよ!!」


「ちなみに、前回泊まった旅館を一年間貸し切りにできるくらいの価値があるわよ」


 これもリジーの≪幸運の呪い≫(ラッキーカオス)効果のドロップアイテムだ。エリクサーは涙を飲んだけど、これはムダ使いしないわよ。


「そ、そんな貴重な薬草なんですか……」


「そ。これを自業自得で石化されたおバカさんに使いたい?」


「……使えませんね」


「そういうこと」


 あ、二人が落胆した。石化してるのに、表情を変えられるってのもスゴいわ。


 ……ィィィィ


 ……ん?


「ねえ、何か聞こえない?」


「へ?」


 ……ィィィィイイ


 この音のパターン……どこかで……。


 イイイイイイン!


「!! エイミア伏せて!!」


「え?」



 どっがあああああああんんん!!

「んきゃあああああ!」



 ……パラパラ……


「……ケホッ! あんのバカ……」


 スッゴいホコリ……ソレイユの執務室、ほぼ全壊じゃないの……。


「びえええええっ!!」


 あ、エイミア!!


「ちょっと、大丈夫?」


「痛い、痛いですぅぅぅっ!! びえええええっ!」


 あらら……右足と左手を骨折してるわね……。


「手足以外で痛い場所はある?」


「びええっ! む、胸の辺りが……」


 胸? 触って確かめてみる。


「あん」

 ぼかっ!

「変な声を出すんじゃない!」


「痛いい! 更に痛いですぅ!」


 ……まったく……あ、鎖骨と……肋骨も何本か折れてるわね。ヴィーがいないから……ケンタウルス女医さんに頼むしかないか。


「……ゴホゴホ」


 ……それより先に。


「エイミア、少し待ってて」


「びえ?」


 ……泣き声で返事を返せるのね。


「ちょっとスワリ! あんた何をしてくれてんのよ!」


「ふぇ? ………ひえええええっ!?」


 覚えてる人はいるだろうか? ソレイユの配下の有翼人(ハーピー)で、スピードは天下一品なんだけど他はすべてダメダメな子を。

 名前はスワリ。今は偵察要員として修行中だったはずなんだけど……?


「あ、あのあのあの! 魔王様は?」


「ヴィー……へヴィーナと虚空神殿(ホロウパレス)の偵察に行ってるわ」


「え゛え゛え゛え゛!?」


「……な、何かあったの?」


「いいい急いでままままま魔王様に知らせないないないと!」


「落ち着きなさい! 何だったら私が念話水晶で伝えてあげるから!」


「はぅあ!? 念話水晶で伝えれば早かったですぅぅぅ!」


 確かにな!


「なら早く言いなさい! グズグスしてると、羽根を全部むしって布団にするぞコラ!」


「ひえええっ! わ、わかりましたよぅ、言いますよぅ!!」


 ……何でこいつを見ると、殴りたくなるんだろう。


「こ、この塔に向かって、たくさんのドラゴンが押し寄せてきてるんですぅ!!」


「ドラゴンが!?」


「はい! ワイバーンを主力に、飛行系のドラゴンが千匹以上迫っています!」


「まさか……何で?」


「た、多分ですけど……」


「何か心当たりがあるの?」


「わ、私が竜の巣に突っ込んじゃって、半壊させちゃったからんぎぃ!?」


「お前のせいだろがあああああああっ!!」


「…………」


「黙ってないで何か言いなさいよ! このまま焼き鳥にしてやるんだから! ……ってあれ? おーい」


 ……へんじがない。ただのしかばねのようだ。しまった、気絶しちゃった……。


「ドラゴンが千単位か……いくら〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトでも、耐えられないわね……」


 ……ううぅ〜……仕方ない! 手に持っていたオルキクの粉末を、リルとリジーに振り掛けた。


 シュウウゥゥ……

 バキバキ……ビキィ!


「……っぷはあっ! た、助かったぜサーチ!」

「べりぃしぇいしぇい」


 ……リルはともかく、リジーは助けなくてもよかったか。


「話は聞こえてた? 私達で迎撃するから」


「わかった。しかし千匹か……」

「無理難題と思われ」


「たぶんだけど、数はかなり減らせると思うわよ」


「へ?」


「こっちにはエイミアがいるじゃない」


「……あ、そうか。≪竜の絆≫か」


「そういうこと。エイミアー、痛いとこ申し訳ないけど、ワイバーンの……何だったっけ……知り合いいたよね?」


「アブドラさんですか?」


「そうそう、それ。アブドラに、今こっちに向かってるドラゴン達の説得を頼んでほしいのよ」


「アブドラさんにですね? わかりました」


 ……≪竜の絆≫持ちのエイミアの頼みって、ある意味ドラゴンにとっては絶対命令よね……。

 あ、それより敵の位置。


「スワリ! 起きなさいスワリ!」


「あひゅえ〜……がくがくがく」


「起きないとローストチキンにするわよ!」


「ひぎゃああああ!  止めて止めて止め……あれぇ?」


「スワリ、今のドラゴン達の位置を大体でいいから教えて!」


「ひゅえ? あ、あ〜……敵の位置ですねぇ。え〜っと……」


 指に舐めて濡らし、風の方向を調べたりしている。何か関係あるの?


「……南南東の風だからぁ……さっきのスピードを鑑みて……ブツブツブツ……」


「……おい、サーチ。大丈夫なのか、あれ?」


「私に聞かないでよ。正直不安しかないし」


「……おいおい」


 すると。


「整いましたぁ!」


 はい?


「えっとえっとぉ……南南東の風とかけまして、時速83㎞と解きまあす。その心は…………あと一時間三十分後に到着しますぅ!」


 ホントかよ!?


「スワッチです!」


「ス、スワッチって何だ?」


 知るかっ!



 ……とにもかくにも、信用するしかない。私達はケンタウルス女医さんに、エイミアとスワッチ……じゃなくてスワリの治療を託し、ドラゴン達の迎撃準備に着手した。


「サーチ姉、今回の戦いって……七冠の魔狼(ディアボロス)とは一切合切、全然々々関係ないよね?」


 まったくだ。スワリ様々だよ!

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