閑話 史上最弱美少女戦士グレートエイミア! その一
悪のりです。
それは現代日本で、とある街の片隅で、一人の巨乳少女に起きた奇跡の物語。
「いやあああ〜〜〜!! 変態変態へんたあああああい!!」
「げ〜へっへっへ。待てよお嬢ちゃん〜〜!」
見るからに「変態」を絵に描いたような男に追っかけ回される少女こそ、メインヒロインとなるエイミア……ではなく英美亜ちゃんです。一生懸命走るのと同時に、巨乳がばいんばいんと揺れます……ちっ。
「誰かああ! 助けてくださああい!」
「げ〜へっへっへ!! 誰も助けなんかに来ねえよ!! 大人しくしな!」
哀れ英美亜ちゃん、変態男の毒牙に……!
と、その時!
どごっ!
「ぶへっ!」
あまり描写したくない場所を押さえて転がる変態。
ごすごすごすごすごすごす!!
「あぃぎゃぃああああああああ……がくっ」
押さえていた場所を更に踏みつけられ、男は泡を吹いて失神した。
「……あ〜あ、このハイヒールは処分ね。ばっちいばっちい」
しかもハイヒールですか。流石に男に同情。
「え〜っと……大丈夫だった?」
英美亜ちゃんの目の前には、とってもゴージャス美人な黒羽根の天使が立っていたのです。
「は、はい。ありがとうございます」
「そ・れ・よ・り・も。何故私があなたの前にいると思う?」
……英美亜ちゃんは後退りしながら、ハッキリと答えました。
「コミケ帰りですか?」
「……こんだけバサバサ動かせる衣装があったら凄いわね」
「あ、本当です。バサバサと…………って本当に天使さんなんですか!?」
「もっちろん! アタシはソレイユ。よろしくね」
「は、はい。よろしくお願い致します」
「さーて、まずは用件から……」
ソレイユがパチンと指を鳴らすと、空から突然くす玉が現れ……。
ぱんぱかぱーん♪
ラッパ音と共に鳩が飛んだ。
「!!??」
「おっめでと〜ございま〜す! 抽選の結果、英美亜ちゃんが次の美徳戦士に選ばれました〜〜!」
「……………………はい?」
「いやあね、前の美徳戦士は『こんな恥ずかしいの、やってらんない!』 とか言って急に失踪しちゃってね〜〜」
「え、えええ??」
「そしたらすぐに再抽選されてさ。助かったわ〜〜、次期美徳戦士が物分かりのいい子で♪」
「あ、あの??」
「はい、これが美徳戦士の装備。で、これがトリセツだよ〜」
「あ、どうも……」
「それじゃ頑張ってね。アデュー!」
「は、はい。アデュー…………じゃないですよ! 美徳戦士って何なんですかああああっ!?」
……英美亜ちゃんの虚しい叫び声が、夕焼けに染まる街にコダマした……。
ギィッ
「ただいま〜〜」
「あ、おかえり。何を疲れた顔してんのよ……」
寮に戻った英美亜ちゃんを、二人の女の子が出迎えた。
「あ、幸。ちょっと聞いてくれませんか?」
セーラー服にエプロン、片手にお玉を持って出てきた子は幸子ちゃん。みんなからはサーチ……じゃなくて幸と呼ばれている。
「聞いてって言われてもね〜……私は料理当番だから忙しいのよ」
「え、幸が料理当番!? やった♪」
どうやら幸ちゃんは料理が得意らしい。もう一人いる女の子も嬉しそうにしている。
「やったって……また太っても知らないわよ」
「私は胸に栄養が回るから大丈夫です」
「くっ……その胸、私によこせ」
「なら幸の括れと交換しましょう」
英美亜ちゃんの言う通り、幸ちゃんはプロポーションが抜群です。
「イヤよ。私がどれだけ苦労して維持してるか、わかってるんでしょ?」
「幸のトレーニングに付き合った事がありますが、あれは修行の域に達していますよ……」
幸ちゃんと一緒にいた女の子は蛇乃さんと言います。みんなからはヴィーと呼ばれているようです。
「あ、そうだった。ヴィー、お願いだから宿題助けて」
「……自分でやらないと身に付きませんよ?」
「わかってるんだけどさ。そこは私とヴィーの仲じゃないの。学校一の頭脳を私に貸してよ。ね、ね?」
「……し、しかし「今夜一緒にお風呂」仕方ありませんね。少しだけですよ」
……ヴィーちゃんは頬を真っ赤に染めて了承しました。幸ちゃんとヴィーちゃんはもしかして……?
「ヴィー! 幸にくっつき過ぎですよ!」
あれれ? 英美亜ちゃんが怒りだしたぞ?
「あ、申し訳ありません」
「で? 英美亜は何を聞いてほしいのよ?」
「…………あ、忘れてました。これを見て下さい」
英美亜ちゃんは風呂敷に包んであった美徳装備一式と、汚い字のトリセツを幸ちゃん達に見せたのでした……。
「あっはははは! 何これ、趣味わりぃ〜」
英美亜ちゃんの部屋に上がり込んだ三人は、風呂敷を広げてキャイキャイと騒いでいます。
「これってさ、コスプレイヤーがいらないコスチュームを押しつけてったんじゃないの?」
「そ、そうかもしれません……。で、でもあの羽根は本物でした!」
そんな二人を尻目に、ヴィーちゃんはトリセツを黙々と読み続け。
「英美亜、足を」
「え……きゃあ!」
ヴィーちゃんは英美亜ちゃんの足を引っ張ると、膝にブカブカの膝あてを履かせました。スカートがはだけて……あ、白ですね♪
「ちょっとヴィー、こんなブカブカなヤツ、英美亜には………ていうか……小さくなってってる!?」
あーら不思議。ブカブカだったはずの膝あては、英美亜ちゃんにジャストなサイズに収まったのです。
「ななな何これ!? スゴいわね!」
「現代の技術ではあり得ない事です。これは……もしかすると……」
ヴィーちゃんは何か考え込みました。そして幸ちゃんはニンマリと笑い……。
「……英美亜♪ これは全部試着しないと……ね?」
「え!?」
「というわけで強制執行開始!」
「ちょ、ちょっと幸! ブラまで……嫌、待って下さい!」
「ええい、抵抗するなあ! ヴィー手伝って!」
「はい」
「そ、そんな! 優等生のヴィーまで……いやあああああああ!!」
……百合は美しく咲きます。ポッ。
「おい幸! 料理当番ほっぽって何してんだ!」
英美亜ちゃんを中心に騒いでいると、猫を思わせる活発な女の子が怒鳴り込んできました。
「っ! 幸、ヴィー……お前ら、英美亜を剥いて何してんだ……?」
カシャッカシャッ
すると女の子の後ろからシャッター音が。
「……何でスマホで写真撮ってるんだよ、理事」
「シャッターチャンスだと思われ」
猫みたいなハーフの女の子がリリー・ルー、略してリル。リルちゃんの背後からスマホで撮影していたのが理子。親が学校の理事を務めているのであだ名が理事。
「止めてください、撮らないでええ!」
「理事、止めなさい」
「むぅ……幸姉がそう言うなら従う」
「ちゃんとポーズをとらせないと売れないわよ」
「成程。流石は幸姉」
「成程じゃなああああい! 私を金儲けの材料にしないでくださああい!」
などとジャレ合ってるうちに、英美亜の着替えが終了したようです。
「うっわ……どピンクだな」
「英美亜姉、何かポーズとって」
「見ないでくださああい!」
リルちゃんと理事ちゃんが弄っている間に、英美亜ちゃんはスティックを渡されました。
「これで完成ね」
すると。
ぴかああああっ!!
「「「「ま、まぶしい!」」」」
英美亜ちゃんを光が包みます。
「……この世の悪を裁く為、この世に正義を示す為! 救いの光よ、今ここに!」
「な、何が起きてるの?」
「さ、さあ……」
光が収まると、そこに立っていたのは……。
「美徳戦士グレートエイミア降臨!」
「「ええ〜〜!?」」
「英美亜が……壊れた……」
カシャカシャカシャッ
「……神映像」
長くなりましたので、明日も。
すいませんがお付き合いください。