第二十四話 ていうか、揃った美徳装備、なんと全部じゃなかった!?
……グレートエイミアから何とか立ち直った私達は、それぞれの恨みをエイミアにぶつけていた。
「エイミア、ちょっと握手しましょう」
「? ……はい」
ぎゅっ メキメキぐしゃ!
「痛い痛い痛い痛い! びええええっ!」
「≪回復≫」
「痛い痛……あれ?」
「私は以上です」
「え……? あの……??」
次はリジーが前に出た。
「エイミア姉、ハグしよう」
「はい……??」
ぎゅっ
(……≪呪われ斬≫)
「痛!? 背中に針が……?」
ひゅー……ばいんっ!
「あきゃ!? そ、空からタライが?」
カサカサカサカサ……
「きゃあゴキブリ……いやあああ! 胸の! 胸の谷間に潜り込んだああ!」
ブウウウン……
チクチクチクッ!
「は、蜂が蜂が蜂がああああっ!」
「リジー、何したの?」
「針で≪呪われ斬≫した。五分間だけ不幸に見舞われる呪い」
ピンポイントに呪いかけられるわね……。
で、五分後。
「びええええっ! びええええええっ!」
「≪回復≫」
「びええ……あれ、痛みが……」
「私は以上なり」
異常なりの間違いじゃ……ちょっとちょっと! 私に針を向けないでよね!
「次は私なんだけど……うーん……」
「どしたの?」
「……正直……何をされたかわからん」
なるほど。私も眩しすぎて何にも見えなかったし。
「……よし、決めた。あれならいいだろ……エイミア、耳を貸せ」
「?? ……はい」
「……ふぅーっ」
「いみゃあああ!」
「あと、ここをこうして……」
「【禁則事項です】! 【いやんばかんです】!」
「……これでいいか」
「うぐぅ……エイミアに穢されました……。びええええっ!」
「「「…………」」」
「……な、何だよ」
「リル……あんた、どこで覚えたの……?」
「んあ? ちょっと前にサーチとヴィーのを見て」
ぼかっ!
「はぐっ! 何しやがる!?」
どごっ! ばきめきごき! ずどむっ!
「ぅごっほっっ!?」
「この変態ネコ、覗いてたわねぇぇ! その記憶がなくなるまで殴ってやる!」
ばがががががっ! ずどごすばきぃ!
「ぎゃ! ニャ! フギャア! き、記憶の前に命が……んげはあ!」
「めんどくさいから命も刈り取ってやる! 天パ風爺斬ーー!!」
「ぎぃあああああああああああ!!」
「ぴーぽー、ぴーぽー」
リジーに引き摺られて退場するリル。ヴィーが治療を拒否したため、ケンタウルス先生のとこへ連れてった。
「ま、まさか覗かれていたとは……!」
「サーチ、私との間に何かあったのひぐっ」
「……忘れなさいね、ヴィー?」
「あの……もの凄く気になるんですけど……」
「わ・す・れ・な・さ・い」
「ひえ!? は、はひ……」
酔っ払ってたヴィーが覚えてないのが何よりだったわ……。
そこへ、戻ってきてから様子をうかがっていたリジーが。
「ねえ、ヴィー姉。蛇を使っての三点同時攻めなんてどうやふぎゅっ」
……バクダンを投げ込んできやがったのよ……。
「リジー……あんたも覗いてたの?」
「ふががががが」
何もしゃべれないみたいなので、掴んでいた口から手を離す。
「ふはあ……の、覗いてたのはリル姉。私はたまたま通り掛かっただけ」
「で?」
「た、たまたまサーチ姉が悶絶ふひゃっ」
「……今すぐ記憶を消去するか、命を消去されるか。好きな方を選びなさい」
「き、記憶を消去します!」
「よろしい」
解放してやると、リジーは脂汗を垂らして逃げていった。
「あの、サーチ?」
「気にしないで。ね?」
「「は、はいぃ!」」
……なぜかヴィーとエイミアは直立不動の体勢で敬礼した。
しばらくすると、上の階からソレイユが来た。敬礼したままのヴィーとエイミアを見て目を丸くしたけど、そこはサクッとスルーした。
「ねえねえ、さっき凄い波動を感じたけど……誰が美徳戦士に選ばれたにょふっ」
私が口に手を当て、エイミアをこっそり指差した。
「……本人は知らない?」
私はこっそり頷く。
「……あれはないからね……」
「……ソレイユも知ってるの?」
「知ってるも何も……アタシも一回戦った事があるから」
「そ、そうなの!? ……結果は?」
「肉体的にも精神的にもボロボロにされた。アタシの唯一の敗戦よ」
ソレイユが負けたって……スゴいな。
「ま、弱点がわかってからは、戦わずに済ますようにしたけどね」
「……やっぱそれしかないのか」
「……下手したら嘆きの竜ともいい勝負できるかもよ?」
……マ、マジっすか……。
「だからアレを使うのは……最終手段だからね」
ていうか、もう二度と御免です。
「しっかしエイミアかぁ〜……やっぱり勇者の因子に引かれたのかな?」
勇者の因子?
「もしかして前に戦った美徳戦士も、元勇者なの?」
「そうなのよ。しかも男でさ」
おい、ちょっと待て。変身後のエイミアはレオタードに近い格好だったけど……。
「ま、まさかエイミアの格好で……?」
「まっさかあ! 変な事を言わないでよ〜…………うぇぇ、想像しちゃった……」
ムサい男がピンクのレオタード………おぇ。
「じゃ、じゃあどんな格好してたのよ?」
「全身真っ赤だった」
全身真っ赤? どういうこと?
「目の部分に黒いゴーグルみたいなのを着けてたよ。で……あ、そうだ。白い模様が少し入ってたかな」
ゴーグル? 白い模様?
「あ、そうそう。変なポーズ決めた瞬間に、背後でドカーンって爆発が……」
戦隊モノかよ!
「他の色はいなかった?」
「他の色? ……たまに色が青とか緑に変わってたかな」
……一人五役っすか。
「とにかく、美徳戦士に変身させないように気をつけるわ……」
「今のままじゃ暴走するだけだしねー」
………ん!?
「今のままじゃって……どういうことよ?」
「え、だって。全部揃ってないじゃない」
全部揃ってないって……?
「いえ、七つ全部集めたわよ?」
「あれ、知らなかったっけ? 大罪は七つじゃないって」
「あ、氷の真竜が言ってたわね。確か虚栄だっけ?」
「そうそう。大罪に八つ目があるって事は、美徳にも八つ目があるって事よ」
「……ってことは……八つ目の美徳装備がある?」
「ええ。今まで集まった装備は防具だったでしょ? 最後は武器。確か……希望のスティックだったかな?」
……なるほど。魔法少女の必需品ってわけか。
あと一、二話で新章です。