第二十三話 ていうか「超美少女戦士、グレートエイミア見参!!」
「「「「…………」」」」
……全員、唖然としている。普段控えめなエイミアが突然はっちゃけたのだ。無理もない。
「この世に蔓延る悪は、私が見逃さない! 正義は私の手の中にある!」
(ねえ、誰か止めてあげたほうがいいんじゃない? 心的外傷は小さいうちに何とかしないと、ヘタしたら立ち直れなくなるわよ!)
(そんなこと言ってもよ……正直怖いぞ、あれ。完全に目がイッテる)
(でもあの様子は尋常ではありません。普段のエイミアからは考えられない痴態ですよ)
(何だか呪いを彷彿させるけど、呪われアイテムではないと思われ)
「さあ、この美少女戦士の活躍を目に焼き付けるといい!」
(うっわ〜〜、イタすぎる……自分で自分を美少女だって言ってるわよ……)
(確かに美少女だけどよ……ありゃあサーチの言う通り、ぶん殴ってでも止めたほうがいいな)
(エイミアは美徳の装備を完成させた途端に、恥ずかしい状態になりました。ならば、美徳の装備品を一つでも外せば……)
(呪われアイテムと共通するなら、それで元に戻る可能性が大)
……うっわ、見てらんない。何か一人でポーズをとり始めたわよ……。
「仕方ない……リル達でエイミアをお願い。私が背後からティアラを掠め取るわ」
「……どっちも大変な役回りだな……あのエイミアと対峙して精神的ダメージを食らうか、反撃される危険性を覚悟して背後に回るか……」
「おそらくは大幅に能力がアップしていると思われます。どうかお気をつけて」
「サーチ姉に呪いが降りかかりますように」
……リジー流の「グッドラック!」だと思う。たぶん。
「それじゃあお願いね……エイミアを元に戻しましょう!」
「「「おー!」」」
……さて……何とか隙を伺って取らないと。うまくいきますように。
「あ、あの〜……」
「ん? 何ですか?」
キラキラピカー!
(うぅ……モンスターの私には、こういう聖なる光はキツい……)
「あ、あの……握手を……」
「おお、私のファンね! よし、握手してあげよう! ただし何日も手を洗わないのは止めなさいよ」
……すごい。ウインクに合わせて星型の光が散った。
「は、はい。ありがとうございます」
ぎゅっ
(痛たたたたた! 聖なる光でダメージがダメージがあああ!)
「あああありがとうございます! 失礼しますー!!」
「泣くくらい感動してもらえて、私も光栄です」
(い、痛くて泣いたんです!)
「……ううぅ……私にはもう無理です」
「ヴィー姉、ご苦労様。早く回復して……次は私が逝く」
「リジー! 逝っては駄目です、行くんですよ!」
「次はあなたですか? 握手でもサインでも大丈夫ですよ?」
(エイミア姉が……壊れた?)
「え〜〜〜〜っと……………百歩譲って握手でお願いします」
「百歩譲らなくてもサインもあげるよ?」
(……直接触るよりはマシと思われ)
「………………ならサインで」
「お安い御用よ!」
(……ふぅ〜〜……これで少しは時間稼ぎ出来た)
「よし、握手代わりにハグしてあげよう!」
「え……ぎゃああああああああ!」
(せ、聖なる光で呪いが浄化されて逝くぅぅぅぅっ!!)
「も、もう結構です!」
「遠慮はいらないよ〜〜ほらほら」
「あぃみゃがああああ! もう無理ぃぃぃぃっ!!」
「あら、照れて逃げちゃったか。可愛い子ね」
「……あああううぅぅ………呪われアイテムが。呪われアイテムがあああっ!」
「……装備してたヤツ、ほぼ浄化されちまったな……」
「うええええん!」
「ヴィー、リジーを慰めてやってくれ。あとは私が引き受けた」
「わかりました。ご武運をお祈りします」
(それにしても……サーチは何をしているのでしょうか?)
……その頃、私は……。
「な、何よあれ!? あんな恥ずかしい格好のくせに、全く隙がないじゃない!! 弱ったわね……」
……背後で困っていた。
「お、おう、エイミア」
「違う。今の私はグレートエイミア」
……ウザい。
「は、はいはい。グレートエイミアさん、少しお話しませんか」
「いいでしょう。正義を世に広めるのが私の使命」
……マジでウザい。
「エイ……グレートエイミア、お前は強いのか?」
「フ……愚問ですね。正義とは常に強くなくてはならないのです。どのような悪にも勝たなくてはならないのですから」
「……じゃ、じゃあ私と戦っても勝てると?」
「当たり前です」
……ほう……。
「あなたのような弱く小さきモノに、負けるわけにはいきません」
「……おい、エイミア。お前どこを見て小さいって言ったんだ?」
「主に胸」
…………………あとでぶっ飛ばす。
「つ、強さに胸の大きさは関係ないな」
「強い私は大きいぞ?」
……………今すぐぶっ飛ばしたい。
「そ、それはたまたまであって……」
「心配せずとも、小さきモノは私が守ってみせる!」
ぶちぃ
「小さい小さい言うんじゃねえええっ! 絶対にぶっ飛ばす!!」
「あああ! リルがキレちゃいましたああ!」
……あいつら、何をやってんのよ!
「小さい小さい言うんじゃねえええっ! 絶対にぶっ飛ばす!!」
げっ! リルがキレて飛びかかっていった! あれだけ隙がない相手に勝てるわけ……。
「グレートエイミア、スペクタクルフラーッシュ!!」
ビカアアアア!
「うわ、眩し!」
「ギニャアアアアア!!」
ん? リルの悲鳴が……?
ひゅうううんんん……
バサバサ! どすん!
「あ、危ないわね……ってリル?」
「……ニャイニャイニャイニャアア……」
あ、目を回してる。
「この私に死角などない! 美徳戦士グレートエイミア、私こそ最強の正義なのです!」
キラキラビカアアアア!!
……超恥ずかしい決めポーズと共に、ミラーボールのように光るエイミア。私がアレだったら……舌を噛んで死ぬな。
「さあ、今度こそ私が『七つの大罪』を葬り去ってあげます!」
げっ、それはマズい! 『七つの大罪』=真竜だから、一つでも倒されたら世界のバランスが……!
「私が! 世界を! 救う! 超美少女戦士!」
……いちいち「!」のあとにポーズを変えてる。見てるこっちが恥ずかしくなってくるわ…………って、あれ?
「グレイイイイト…………エイミア!」
……ポーズ決めてる間は……隙だらけだわ。
「弱きを助け、強きを挫く!」
エイミアが決めポーズに陶酔してる間に、こっそり背後に近づき……。
「ほいっ」
「う!? 私のティアラが……ぐぁあああああああ!!」
ティアラを外すことに成功した。
「あああ………あ、あ? あれ? わ、私は一体……?」
「エ、エイミアね?」
「は?」
「グレートエイミアじゃないわね?」
「な、何ですか!? 止めてください、その恥ずかしい呼び名!!」
よし、戻った。
「エイミア、美徳装備を全部装備するのは禁止ね」
「は、はい? な、何故ですか?」
「エイミア、あんたのためなのよ! これは絶対命令だからね!」
「?? ……は、はい。わかりました……?」
……このことは、なかったことにしよう……エイミアのためにも。