第二十二話 ていうか、ついに美徳装備が揃いました!
「サーチ殺す!! ぶっ殺す!!」
「今回はぜっったいに許しませんよ!」
矢と雷の雨を必死に避けながら、無実を叫ぶ。
「何で私だけなのよおおおっ! 実際に石化したのはヴィーじゃない!」
「「サーチが主犯に決まってる!」」
「ヴィーとリジーも賛同してたわよ!」
名指しされたヴィーとリジーに、鬼のような視線が突き刺さる。
「あ、えっと、私は……」
「リル姉、エイミア姉。私は一生懸命止めたんだけど……」
「リジーーー!! 裏切りモノォォォォ!」
「やっぱり……!」
「サーチが……!」
ああ……これはもうダメなヤツね……やっぱり私って、人を殺し過ぎたから……地獄に堕とされるのかな……。
「……≪石化魔眼≫」
かちんっ
「えっ」「きゃっ」「何と」
ズズン!
………へ?
「三人とも……いい加減にして下さいね?」
「「「ヴィ、ヴィー?」」」
あれ、珍しい。ヴィーが本気で怒ってるわ……。
「確かに主犯はサーチです。ですが私もリジーも同意した上での事。ならばサーチばかりを責めるのは……おかしくありませんか?」
「「は、はい……」」
「よってリルとエイミアは石化正座の刑、プラス……」
正座の格好で石化した二人に歩み寄り、足の上に何か乗せている。あれは……パンよね?
「……?」
「ヴィー、これは一体……?」
「≪石化魔眼≫」
かちんっ ズズン!
「おおお重いいいい!」
「パンが石になってズシッと……パンがパンがぁ!」
あ、あれか。江戸時代に拷問で使われた石抱き……。下にギザギザがないだけマシか。
「それと……リジー!」
「は、はいい!」
「あなたは共犯の身でありながら、サーチに全ての罪を負わせようとするとは……! あなたが一番罪が重いのですよ!」
「ひええっ! ごめんなさいいい!」
「いーえ、許しません! あなたには最も屈辱的な刑を受けてもらいます! ………≪石化魔眼≫!」
かちんっ
すると、リジーの手足だけが石化した。
「変異術式≪生きている石≫」
ヴィーが術式を組むと、リジーが自分の鎧を外し始めた。
「え、何で!? 手足が勝手に動く!?」
……どうやら石化した対象を動かすための術式みたいね。
その後、リジーの手はどんどん服を脱がしていく。
「い、いやいやいや! もうすとっぷすとっぷ、ぷりぃぃぃぃぃず!!」
「駄目です」
……ヴィーの目が完全に据わってる。こりゃ私でも止められないわ。そのままリジーのストリップは続き……。
「み、見ないで! 見ないでえええ!」
ショーツも脱ぎ捨てた。するとヴィーがリジーの右手にお盆を持たせて……って、え゛。
「……リジー100%」
「いやあああああああああああっ!! 見ないで見ないでえええ!!」
……結局、ヴィーは≪石化魔眼≫の使いすぎによる反動で寝てしまい。リルとエイミアは泣き叫ぶばかり。
「もう嫌! もう嫌だああ! 手が止まらないいいいっ!!」
……最後までしっかりと見物していたのは、私だけだった。いいモノを見せていただきました……合掌。
「「申し訳ありませんでした……」」
「ひっく、えぐえぐ……ご、ごべんばばい……」
ヴィーが起きてようやく刑の執行が終わった三人は、目を真っ赤にして謝った。
「いえ、私もやり過ぎました。申し訳ありませんでした」
ヴィーも謝る。あとは……。
「リル、エイミア」
「……何だよ」「……何ですか」
「一発ずついいわよ」
そう言って頬を指差す。
「え……そ、それはちょっ「なら遠慮なく」……ええ!?」
エイミアが躊躇してる間にリルの拳が飛んできた。
バキィッ!
ぐ……! 歯、歯が折れた!
「……これでチャラだ。恨みっこなしだぜ?」
リル……手加減なしね?
「……わかったわ。これで水に流しましょ」
私が手を差し出すと、リルが握った。はい、仲直りの握手。
「…………」
ギリギリギリ
「…………」
みしみしみし
……お互いに握る手に力が入ってるのはご愛嬌。
「さ、あとはエイミアよ。おもいっきり来なさい」
「え、でも……」
「あ、でも≪蓄電池≫はダメだからね?」
ヘタしたら死ぬし。
「え、でも……」
「いいんだよ。おもいっきり打撃でいけばいいんだ」
「わ、わかりました。打撃でおもいっきりですね……」
そう言うと、エイミアの頭の角が伸びて……っておい!!
「フルパワーの……≪鬼殺≫!!」
「ちょっと待って! それはヤバいヤバいヤバい!!」
ずどおおおおん!!
「うっきゃあああああぁぁぁぁぁっ!」
……結構な距離を吹っ飛ばされた。
あ、危ねえ……3㎝横を通り過ぎてったよ……。
「バカかお前は! いくら何でも限度があるだろ!」
「びええええ! ごめんなさいいい!」
リルに叱られてゲンコツを貰ったエイミアは、頭を押さえて大泣きしていた。
「……マジで木っ端微塵になりかかったわ……」
「サーチ、頬っぺたが腫れてますから治療しますよ」
「あ、ありがと……」
しばらくはこの状態を甘んじて受け止めるつもりだったけど……ま、いいか。
「それより右手の治療をお願い」
「え? ……な、何故指が折れているのですか!!」
……何でだろうね。
「ヴィー、悪いけど私も」
「リルまで指が!? 一体何をしたんですか!!」
……友情の証かしら?
プリプリ怒るヴィーを見ながら、私とリルは苦笑いした。
「……で、だ。これが今回の戦利品」
「あと、堕つる滝のゴミの山から出てきた肘あて。一応洗っといたから」
滝の真竜は暴食だから節制の肘あてかな。えっと……あとは何が残ってるんだっけ? ……まあ名前なんかどうでもいいか。今度から美徳の云々って呼ぼ。
「でもさ、こうやって改めて見てみると……ハートやらピンクが多い装備だな」
ハートの形をした膝あてと肘あて、キラキラとしたド派手なティアラ、ハートとラメがあしらわれた靴と小手、見事なまでのピンクのマント。
「けど、この鎖帷子だけは普通だな」
「普通……と言うよりは、煤けている感じですね」
……煤けてるってのも優しい表現だわな。悪く言えば錆び錆びのボロボロ。
「エイミア姉が全て装備すれば無問題」
「そうね。どうせエイミアしか装備できないんだし」
「はあ……わかりました」
まだ一度も装備していなかった鎖帷子を身につけ、肘あてと膝あてを通す。
すると……。
ぴかああああっ!
「ま、眩しい!」
「「目が! 目があああっ!?」……被った」
美徳防具同士が……共鳴してる?
「…………今ここに参上!! 美徳戦士グレートエイミア爆誕!」
……はい?