第二十話 ていうか、リジーがいろんなドロップアイテムをゲットしまくるので、財政が潤う!?
エリクサーショックから抜けきったあと、リジーが何かゴソゴソしていることに気づいた。
「……何してんの」
「サーチ姉、これ」
リジーの手には長い剣が握られていた。いや、反りがあるから刀かな?
「超すーぱーすぺくたくるぐれーとでりしゃす級のレアアイテム」
「……ちょっと待って。あんたさ、最後に美味しいって言ってなかった?」
「……多分妖怪のせい」
……どこからどこまで、つっこんだらいいのよ……。
「で、何なのですか?」
「伝説の呪われアイテム介錯の妖刀」
ムラマサ!? 何でこっちの世界にあるのよ!?
「言い伝えによると、ある日突然に空から降ってきたらしい」
……空からって……何らかの要因で転移してきたのかしら?
「落ちた先にいた人に刺さって、一人目死亡」
宝くじで一等当たるよりも低い確率を引き当てたな!
「それを引き抜いたら、すっぽ抜けて飛んでいき、後ろにいた人に刺さって二人目死亡」
た、宝くじに三回連チャンて当たる確率より低いんじゃない?
「よろめいて倒れた瞬間、後ろにいた人を巻き込んで倒れ、刺さって三人目死亡」
………。
「更に」
「リジー、もういいわ」
「そう? なら大幅に省略して……人斬りクユーテが三十三人斬り殺して自害した。これで一万六千八百二十二人目死亡」
一万越えてるのかよ!
「それ以降は人斬りクユーテの死体と共に行方不明になり……二百年後 ←今ここ」
……←今ここって何よ。
「ちょ、ちょっと待って下さい。其処まで危険な呪われアイテム、封印しないと危ないのでは……?」
「無問題。ちょっと前に≪呪い耐性・強≫を覚えた」
……?
「何それ?」
「えっと……呪剣士はレベルが上がる度に、呪いへの耐性を強くします。その過程で≪呪い耐性≫の弱・中・強を覚えいき、最終的に≪呪い耐性・強≫を覚える事によってほぼ全ての呪われアイテムを装備出来るようになるのです」
「……〝死神の大鎌〟や蛾骨杖も?」
「……おそらく……」
つまり、今のリジーには難なく扱えるわけね。
「リジー、ちょっと抜いてみて」
「はい」
シュイン
リジーが鞘から抜き放った介錯の妖刀は、紅い刀身を煌めかせていた。
「……見るだけでわかる……スゴい禍々しさね」
「どれくらい斬れるのでしょうか?」
聞かれたリジーは、近くにあった岩に突き立ててみた。結果。
すとんっ
岩に刺さった。鍔が岩に当たって止まるまで、それは見事にサクサクと。
「……よく鞘が斬れないわね」
「この鞘自体も呪われアイテム。介錯の妖刀以外の刀を受け付けない呪い」
ずいぶんとピンポイントな呪いだな!
「まあ戦力アップにはなりますから、良かったんじゃないですか?」
紅い刀に紅い梯子か……紅ずくめね。
これが後々リジーの異名〝真赤〟の由来となる。「しんく」ではなく「まっか」である。ごく一部で囁かれた異名だったので、本人が知るのはだいぶ先だけど。
例のごとく刀をスリスリしながら歩くリジー。ニヤニヤしてなきゃ可愛いのに。
「……あ、サーチ。この先にダンジョンコアらしい波動を感じます」
ダンジョンコアってことは……。
「……やっと真竜とご対面か。長かったわね……」
「……色々ありましたし……」
「……そうね。悪いことが主に」
「私は良い事だった」
私とリジーの頭にはエリクサーが過った。あ、また涙が……。
反面、リジーはホクホクと刀を磨いていた。あんたね、その刀はエリクサーのおかげで手に入ったんだからね?
「それにしても……ドロップアイテムが多すぎませんか?」
「そうね。何でかしら」
どっちかと言えば、私達はドロップアイテムを拾う率は低い。
「あ、それは呪剣士のマスタースキル≪幸運な呪い≫が原因」
幸運な呪いって意味わかんねえよ!
「このスキルを覚えると、どんな低確率なドロップアイテムでも、一定の確率で出るようになる」
スゴい有用なスキルじゃない!
「ただし、本人は呪われアイテムしか手に出来ない。よって、呪われアイテム以外は放置するしかない」
……前言撤回。微妙なスキルだわ。
「大丈夫でしょう。つまりは他の人が回収すればいいのですから」
「あ、そうね」
……なるほど。だからエリクサーが手に入ったのか。
「ん? ならエリクサーがもう一回手に入る率も……高い?」
「一度ドロップされたアイテムの確率は、元に戻ると思われ」
…………何だ。
「また何処かで手に入りますよ。サーチ、行きましょう」
……そうね。いつまでもエリクサーのことを悔やんでても仕方ないし。
「ふんふんふふ〜ん♪ 行っきましょ、行きましょ〜〜♪」
……やべぇ。リジーに殺意が……こいつのためにエリクサーは犠牲になったわけじゃないからね!
ダンジョンの行き止まりに祭壇みたいなのがあり、そこにダンジョンコアと変な像が奉られていた。
「……この像って……魔王様よね?」
角が生えて牙も生えて、しかも十倍はデカくなって。おまけに性別まで変更された魔王様の像。本人が見たら、間違いなく木っ端微塵にするな。
「……この像も呪われアイテム。ゲットする」
「ダメ」
「何故?」
「ソレイユに見せる勇気ある?」
リジーはしばらく止まり……やがて激しく首を左右に振った。わかってくれてありがとう。
「この像……何処かで掲げると、二階に上がれそうな気が……」
知るかっ。
「それよりも! 今は真竜に会うことが先決でしょうが!」
「あ、そうでしたね………でも……誰もいませんね」
「ん。最早モンスターの気配すら感じない」
そういえば……ここの空気は濁っていない。邪悪なモノがいない証だ。
「これだけ澄んだ空気だから、たぶん真竜はいるはずよ。どこかに隠し通路でもあるのかしら?」
私が壁や床を調べ始めたのを見て、ヴィーとリジーも壁を叩いて空洞がないか調べる。
コンコン
「サーチ姉、この先に空洞がある」
「ヴィー、一発お願い」
「はい」
どごぉ! ガラガラガラ……
ヴィーが≪怪力≫で壁に穴を空ける。
が……。
「……単なる空洞ね。ハズレだわ」
「仕方ありません。怪しい箇所は片っ端から殴りましょう」
……それからしばらくの間、私とリジーが調べ、怪しい場所をヴィーがど突く……という状態が続き、おそらくは神聖な場所であっただろう祭壇は、穴だらけと化した。
「……ないわね……」
「もしかしたら、あの像に秘密があるのではないですか?」
「この像に? 特に何も感じないけど……」
魔王の像を手に取ってみる。すると……。
「んぎぎぎぎ……お、重い!」
「え? そんなに重そうには見えませんが……?」
ヴィーなら持てるかな?
「ん? んんん? 嘘、私の≪怪力≫でもビクともしない……!」
ウッソだー!
「私が試してみる」
「「無理無理」」
リジーの無謀な挑戦を止めようとすると……。
『何だ、呪剣士がいるんじゃない。最初っから使いなさいよ』
「うわビックリした! 変な像が喋った!」
『喋ったのは像じゃなくてよ?』
……私の耳が確かならば、刀が喋ったように聞こえたんだけど……?