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第十八話 ていうか、ダンジョンで優雅にティータイム?

 進み始めて三時間経って……飽きた。


「これってさ、新大陸のときの横断トンネル……じゃなくてダンジョンと同じよね?」

「そうですね……何処までも続く同じ景色は、まさにあのダンジョンを彷彿させますよね……」

「飽きた飽きた飽きた!」


 駄々をこねるリジーの気持ちも、正直わからないではない。あのダンジョンのあとの精神的な苦痛はしばらく抜けなくて、ダンジョン攻略はしばらくしてなかったくらいだ。


「しかも出てくるモンスターは骸骨剣士だけ。たまには違うのも出てきてほしいわ」


 喜んでるのは、多数のドロップアイテムをゲットしてホクホクしてるリジーくらい。当然、全部呪われアイテム。


「私はもう少しなら、別にいても構わない」

「ならモンスターはリジーに任せるわ……骨はもうイヤだし」

「あ、私も」

「え、ええ〜……」


 そんな軽口を叩いていると、またまた骸骨剣士の団体さんが……。


「「がんばれリジー! ゴーゴーリジー!」」

「そんな〜……」

「「呪われアイテムが待っている!」」

「うりゃあああ!」


 ……リジーもヴィー並みに扱いやすいわ。


「リジーがモンスターを片付けるまでの間、少し休憩しましょうか」


「そうね……あ、そうだ。昨日作っておいた紅茶があるんだけど……」


「あ、頂きます。ありがとうございます」


 無限の小箱(アイテムボックス)にポットごと突っ込んでおいたティーセットを取り出す。ヴィーが聖術で岩製のテーブルと椅子を作ってくれたので、その上に並べる。


「とても良い香りですね。まさかダンジョン内で、本格的なアフタヌーンティーが堪能できるとは思いませんでした」


 ……まさかダンジョン内に、テーブルセットを作るとは思わなかったけどね。


「はあ〜……美味しい。ほんのりとした甘さが何とも……」


 何でもかんでも大量の砂糖をぶち込むエイミアより話せるわ。


「じゃあ私は少しだけブランデーを……」

「ぶらんでー?」


 私が以前に帝国で見つけたブランデーモドキだ。味はともかく、香りは本家とそっくりだったので何本か買い込んだ。


「ヴィーは飲んじゃダメよ。かなりアルコール度数が高いから」


「あ、はい」


 ……ダンジョン内で押し倒されたくないし。


「……ダンジョン内じゃなければ良いのでしょうか……」


「ヴィー、何を言ってるのかしら?」


「い、いえいえ。何でもありません……オホホホ」


 ていうか何で私の心を読むのかしら、どいつもこいつも。


「距離はもう3㎞は越えてますね。まだ続くのでしょうか」


「そうねぇ……できればもう少し進みたかったわね……」


 モンスターを警戒しながら進んだもんだから、予定の行程の半分くらいにしか到達できていない。


「まさか壁に秘密の扉が存在するなんて思わなかったですから……仕方ありませんよ」


 ん? ちょっとブランデーが薄いか。もう少し入れよう。


 ドポポッ


「こんなダンジョンで一泊なんてイヤだから、一時撤退も考えた方がいいかも」


「それは大いに賛成します。以前のように、ダンジョンの真ん中に旅館が……なんてパターンはないでしょうし」


 ……元気かな、初代は。

 ん〜……もう少し入れよ。


 ドポポポッ


「ねえヴィー。移動式の結界聖術なんてない? そのまま真竜(マスタードラゴン)のとこまで突っ切っちゃうなんてのも手よね?」


「……そんな便利な結界、ニーナ・ロシナンテくらいじゃないと無理ですよ」


 そっか。手軽にできるんなら、みんなとっくにやってるわな。

 ……まだまだ薄い。


 ドポポポポッ


「あの……サーチ?」


「ん? 何?」


「…………いえ、何でもありません」


 何か私のカップをチラチラ見てたけど……どうしたのかしら?


「まあいいか。とにかくペースを上げないといけないんだけど……何かいい手はないかなあ」


「そうですね…………呪われアイテムを餌に、このままリジーに先行させれば良いのでは?」


「ヴィ、ヴィーが黒くなった!?」


「失礼な。あのリジーを見ていれば、誰でも考え付く事です」


 ……確かに……私達より少し離れた場所にいるリジーを見てると……。


「呪われ呪われ呪われアイテムを落とせ落とせ落とせえええっ!」


 血走った目で梯子を振り回すヴィー。何か骸骨剣士が逃げ腰になってるのは気のせいだろうか。


「……でもそれがいいかもね」


 ……もう少し入れよう。


 ドポポポポポポッ


「え、ちょっとサーチ?」


「……何? 言いたいことがあるなら言いなさいよ」


「えっと……すでに紅茶じゃなくなってません?」


 え……? あ、ホントだ。すっかりブランデーになってたわ。


「……ま、いいわ。飲んじゃお」


 そう言ってカップに手を伸ばそうとしたとき。


「サーチ姉! のど渇いたから頂戴!」


 リジーがカップを奪って飲み干した。


「「あ」」


「サーチ姉ありがとう! 美味しかったあぅわぅわ……うーーい」


 飲んじゃった。


「ううう目がぐーるぐる」


「ちょっとちょっと。大丈夫なの?」


「うーーい……あ、敵だ」


 敵!? ……うわっ!?


 ぶおんっ!


 間一髪でヴィーを押し倒し、頭上を通り過ぎた梯子をやり過ごした。


「あ、あっちにも骸骨剣士はっけーん」


 リジーは梯子を振り回しながら、再び現れた骸骨剣士の団体につっこんでいった。


「あ、危なかった……」


「サーチ……そんな大胆な……」


「何を誤解してんのよ!? ヘタしたらあんたの頭、木っ端微塵だったんだからね!」


「だって……手が……」


「え……? あ、ごめん、胸に手がいってたわ」


 あ、柔らかい。


「あの……サーチ? 何故揉むのですか?」


「あ、つい……おほほほ」


 ちっ。まだ私よりデカいか。


「それよりチャンスよ! このままリジーの後ろをついていけば、かなり楽に進めるわよ!」


 ティーセットを急いで片づけて、リジーのあとを追う。


「そそそうですね!」


 ヴィーも急いで追いかけてきた。



「おらおらおらおらー」

 どぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!


「凄いですね。あそこまで重い梯子を軽々と振り回すなんて」


「胆力なのか梯子自体の補助なのか知らないけど……」


 見事なほどの梯子裁き。それでもドロップアイテムをちゃんと回収してるとこがリジーらしい。


「あ、希少なドロップアイテムの嗚咽の剣だ」


「あれは嘆きの面ですね。かなり貴重な呪われアイテムです」


 脅威的なドロップ率を叩き出すリジー。呪われアイテム以外は回収しないため、残されたドロップアイテムは私達が回収する……ってすげえ! 本物のエリクサーだ!

 そんな状況が三十分ほど続き、最後の骸骨剣士を倒してから……リジーは酔い潰れた。


「ZZZ……」


「寝ちゃいましたね」


「まあおかけであっという間に来れたし……ん?」


 さっきので最後だと思ってたのに……もう一体骸骨剣士が現れた。全身に苔が生えてるから、相当古株なヤツね。


「ラスト一匹か……速攻で片づける!」


 羽扇を伸ばし、ムチで骸骨剣士を両断した。


「はい、一丁あがり……ってあれ!?」


 両断したはずの骸骨剣士は、そのまま逆再生気味に元に戻った。


「ウ、ウソでしょ……」


「サーチ、此処は私が。≪聖々弾≫ホーリー・ホーリーバレット!」


 ゾンビ系には致命的な、聖属性の弾が直撃する……が。


「き、効いていない?」


「ならば! ≪聖火弾≫ホーリー・ファイアバレット!」


 火属性も致命的なはずなんだけど……? な、何で? まったく効いてない……。 


「……気を付けて下さい、サーチ。こいつは……耐性モンスターです」


 ……何それ。

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