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第十三話 ていうか、この羽扇どうやって使えってのよ?

「な、何なのよ! この宝くじみたいな選定アイテムは!」


「宝くじ?」


 あ、しまった……この世界にはないのか。


「え、えーと……東方の島国にある……伝統的お祭りの一種よ!」


「成程……それはどうでもいいんですけど」


 どうでもいいのかよ! なら聞くなよ!


「それよりも……その羽扇はどういう代物なのですか?」


「え……?」


 どういう代物と聞かれても……振ったらスゴい風が起きるとか?


 ぶんっ


 ……。


 ぶんっぶんっぶんっ


 ……何も起きないわね。


「こういうのって、振ると暴風が起きるとか、火炎を放つとか……じゃないの?」


 ヴィーを見たら、首を傾げた。エイミアとリジーも……ダメか。

 あ、リファリスは……ダメだわ。まだアレが進行中だろうし。


「わっかんないな〜……叩くような道具でもなさそうだし」


 某無双系ゲームみたいに羽扇を武器に……ってわけにはいかない。こんなので叩いても痛いわけがない。


「う〜ん……せめて取扱説明書みたいなのがあれば……」


「あ、もしかしたら箱にあるかも」


「「あるわけないでしょ!」」


 私とヴィーのつっこみをサラリと流して、エイミアは箱をひっくり返した。


「……あ、何か本みたいなモノが」


 ……………え? ま、まさか……!?


「え〜っと……邪喚羽扇(スケープゴート)の取扱説明書」


 マジであるし! ていうかスケープゴートってマジで不吉な名前だし!


「じゃあ読みますね……まずは本製品をお買い求め頂き、ありがとうございます……」


 ……リアルにトリセツみたいね……。


「えっと……無駄な箇所は飛ばします。まずは……一、使用者の登録方法……これもいいですね。次は……二、使用方法。ここですね」


「そうそう! それが肝心なとこよ!」


「えっと七ページ七ページ……あった。二、使用方法。この武器は名前の通り、使用者の身代わりをするのが主な役割です……」


「身代わり……だからスケープゴートって名前なのね」


 代わりに犯人にされる、呪われアイテムかと思ったわよ!


「まずは使用者が選定されると同時に、使用者がMP消費を必要とするスキルを全て吸収する…………ええっ!?」


「MP消費を必要とする……ってまさか!?」


 私は急いでステータスを開いて、スキルの欄を確認する。すると……!


「な、ない! 私の≪偽物≫(イミテーション)がないいいいっ!」


「ほ、本当にですか!? ならとんでもない呪われアイテムではありませんか!!」


「待って。持ち主のスキルを盗む呪われアイテムなんて、絶対にあり得ない」


「でも! 実際に! 私の≪偽物≫(イミテーション)がああっ!」


「落ち着いてください、サーチ。まだ続きがあります!」


 つ、続き?


邪喚羽扇(スケープゴート)は吸収したスキルを使用者の思念によって発動する。その際に大気に漂っている魔素を吸収し、MPに変換する……ってなってますけど?」


 大気中の魔素を取り込んで……MPに変換!?


「……つまり……MPを消費せずに≪偽物≫(イミテーション)が使い放題!? 凄いアイテムじゃないですか!」


「………………めっちゃ微妙……私には……」


「え? ど、どうしてですか!?」


「MP消費せずに使い放題……ってことは、確実に魔術士向けアイテムじゃない……」


「……あ」


「それに。この羽扇がスキルを吸収しちゃったってことは、この羽扇を落としたりすれば……」


「……スキルが使えなくなる……」


 ……私にとっては単なる邪魔モノじゃない……。


「あ、待って下さい。この羽扇は一度使用者を登録すると、絶対に身体から離れなくなるそうです。だからスキルが使えなくなる可能性は、考えなくても良さそうですよ」


 あ、そうなんだ。でも……。


「武器にならないんじゃねえ……」


「いえ、それも何とかなるみたいです。その羽扇に使われている羽根は、黒死鳥という絶滅したS級モンスターのモノだそうです」


「S級モンスターの素材なの!? なら……相当強力な武器じゃないの」


「あと、黒死鳥の羽根はオリハルタイトに近い金属で出来てるそうで」


 羽根が伝説の金属と同等って……さすがS級。

 ん!? 金属に近い? もしかしたら……。



「ヴィー、準備はいい?」


「はい、大丈夫です」


 邪喚羽扇(スケープゴート)を早速試してみたかったので、ヴィーに協力してもらうことにした。


「この森なら、ヴィーが蛇を使っても問題ないわよね」


「人目につく事はないでしょうけど……モンスターの」

「モンスターは私とリジーで何とかします」


「……というわけで、モンスターの心配ならいらないわよ」


「……わかりました。なら、サーチは私に何をしてほしいのですか?」


「まあ、ぶっちゃけて言えば……ヴィーの頭の蛇で、私に波状攻撃をしてほしいのよ」


「「「はいいっ!?」」」


 そ、そんなに驚くようなことかしら?


「サ、サーチ。私が言うのも変ですが……止めた方が良いのでは?」


「そうですよ! 四方八方から襲ってくる蛇を相手にするなんて……! 無茶ですよ!」


「無茶を通り越すと(ことわり)を無くす。即ち無理だと思われ」


 リジーは何を小難しいことを言ってるのかしら。


「心配してくれてるのはありがたいけど……無理なくらいじゃないと、意味がないのよ」


 その後も押し問答が続いたけど、結局私が押し切る形となった。


「……本当にいいんですね? 手加減はしませんよ?」


「構わないわ。ビシバシきて!」


 ヴィーは覚悟を決めたらしく、いつも被っているニット帽を外す。久々に外気に触れた蛇達が活発に動き出し。


 がぶっ! がぶがぶがぶっ!


「痛! イタタタ! ごめんなさいごめんなさい! 最近、被りっぱなしでごめんなさい!」


 ……蛇達の怒りの噛みつきで、しばらく中断した。


「イタタタ……すみませんでした。私は準備万端です」


「…………あ、もういいのね? ちょっと待ってて」


「……紅茶飲んで寛いでるのでしたら、私を助けて下さいよ……」


自分(ヴィー)自分(へび)に噛みつかれてるの、どうやって助ければいいの?」


「それは……………………さあ! サーチ始めましょう!」


 かなり強引な誤魔化しだったけど……まあいいか。


「では行きます! 第一陣、行って下さい!」

「「「シャシャア!」」」


 私に向かって蛇が殺到する。邪喚羽扇(スケープゴート)を握りしめ≪偽物≫(イミテーション)を発動させる。


「はああああっ!」

 バシィ! ビシビシビシ!


 全ての蛇を叩き落とす。やっぱり、この羽根はほぼ金属。私の≪偽物≫(イミテーション)で硬化できる!


「む……では第二陣!」


「「「シャアアア!」」」


 さっきよりも数が増えた蛇が私を囲む!


「だけど……これなら!」


 再び≪偽物≫(イミテーション)で羽扇を硬化。


「今回は羽扇一本で裁ける数ではありませんよ!」


「そうね……≪偽物≫(イミテーション)!」


 今度は硬化した羽根を変形させて、長く伸ばす。まるで一本一本がムチのように伸びた羽扇。それを操って蛇達を絡めとる!


「「「シャシャ!?」」」


「そ、そんな!? 蛇達が動きを封じられた!?」


 一本だけフリー状態だった羽根を、ヴィーの頭に振り下ろし。


 ぺちんっ!


「あひゃん! ……ま、参りました……」


 ……私が思った通りだ。邪喚羽扇(スケープゴート)はある意味、私と同化したに等しい。だから羽根をどれだけ変形させて伸ばそうと、私自身の身体を伸ばしているのと同じ……!


「つまり……私は遠距離(じゃくてん)を克服した……!」

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