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第二話 ていうか、リファリスがジジイと会話するだけの回。

「うふふ、俄然やる気が出てきたわ。エリザ、明日には出立できるように準備しておいて」


「畏まりました。ヒュドラの餌はどのようなモノを?」


「適当にモンスターを詰め込んでおいて。最近のひゅーちゃんは好き嫌いはないから」


「畏まりました」


 久々にひゅーちゃんに会えるわ〜……また首が長くなったのかしら。また身体が大きくなったのかしら。


「うふふふふ……♪」


「ご機嫌でございますね」


「そりゃそうよ。退屈でウザったい国防庁長官の仕事から、久々に解放されるんだから〜〜♪ た・の・し・み〜〜♪」


「……仕事は副官に丸投げしてみえる癖に」


「エリザ、何か言った?」


「いえ何でもございません」


 ……何を拗ねてるのかしら、この子……。


「昨日の晩は私が順番でございましたが、リファリス様の気紛れで新入りに先を越された事を、少しも根に持っておりませんとも!」


「根に持ってるって宣言してるようなもんじゃない!」


「リファリス様にはここまで言わないと伝わりません!」


 はっきり言ってくれるわね。何で我が家のメイド達は遠慮というモノを知らないのかしら?


「はいはい悪かったわ。だったらエリザ、あなたには今回の旅の同行を命じます」


「え!? よ、よろしいのですか!?」


「このリファリス・リフターに二言はないわ。あなたも早く準備なさい」


「はい! 失礼致します!」


 そう言って鼻歌混じりで飛んでいった。


「……エリザは優秀なんだけど……どうも嫉妬深くて困るのよね……」


 あたしは全員平等に愛情を注ぎたいんだけど。


「……そろそろソサエト爺さんとの約束の時間ね」


 悠々自適な生活をするソサエト爺さんの暇潰しに付き合わされるのも癪だけど、仕方ないわね……ジジイの愚痴の聞き役も楽じゃないわ。

 あたしは出掛ける準備の為に、エリザとは違うメイドを呼んだ。



「……ほう。あの時の嬢ちゃん達から」


 あたしはソサエト爺さんと食事をしながら、さーちゃんから聞かされた七冠の魔狼(ディアボロス)の話をした。


「事態は予想以上に深刻みたいですわ。(わたくし)も協力は惜しまないつもりですの」


「……リファリス。毎度同じ事を言わせるでない。周りには誰もおらんのじゃ、その気色悪い喋り方は止めよ」


「あら、気色悪いだなんて心外ですわ。(わたくし)もれっきとした淑女(レディ)ですのよ? ジジイ(おとしより)への尊敬があってこその、この口調ですわ」


「何がお年寄りへの尊敬じゃ! お前がそう言っても単なる嫌みにしか聞こえんわい!」


 ……ふふふ……そろそろいいか。


「わかったよクソジジイ。これでいいんだろ」


「……落差が激しすぎて、突っ込む気にもならんわい」


「ジジイから口調を正せって言ったんだろ。今更グダグダ言うなよ」


「わかっておるわい。それより七冠の魔狼(ディアボロス)の件じゃが……」


「ああ。共和国としても無視はできないな」


「我等が住まう首都近郊に広がる旋風の荒野トルネード・ウェルデネスでも、モンスターの活発な動きが報告されておる。お前がよく行く汚泥内海(マッドインランドシー)も同様じゃな」


 ……発生したモンスターはひゅーちゃんの餌になってるはずだけど……ひゅーちゃんの食欲を超える程のモンスターがいるのか?


「……お前のペットが頑張ってくれておるようじゃが、最近コボルトの発生が著しいようじゃ」


「ああ、成程。それなら仕方ない」


「何故じゃ?」


「ひゅーちゃんは筋の多いコボルトは嫌いなのよ」


「……ヒュドラに好き嫌いがあるとは。儂でも知らない事は多いようじゃな。かっかっかっぐふぉ!」


 メシ食いながら笑うなジジイ!! 食いカスが飛んでくるだろが!!

 腹を押さえて踞るジジイに護衛が駆け寄り、あたしに対して怒声を上げる。


「ご隠居!? 大丈夫ですか!」

「リフター伯! いくらご隠居のお気に入りとはいえ、この事は厳重に抗議を……!」

「ああんっ!?」


 ギインッ!


「な……!」「か、かは………!」


「……ふん。これくらいの殺気で立ち竦んでるようじゃ、本当の戦闘で真っ先に死ぬぞ? それにジジイをよく見てみるんだな」


 ジジイの護衛達が脂汗を流しながら、視線をジジイに向ける。すると……。


「〜〜♪」


 鼻歌混じりでお茶を飲むジジイを見て、絶句する護衛達。大体、あたしに腹パンされたぐらいでどうにかなるジジイかよ。


「……駄目じゃな、お主等。まずは儂の容態を確認するべきじゃったな……護衛のつもりならば」


 護衛の顔に「しまった」という表情が浮かぶ。あーあ、あいつら落第ね。


「リファリスのあの程度(・・・・)の殺気で竦んでいるのもマイナスじゃ。よってお主等は護衛としては不可。元の部署で頑張るのじゃな」


 がっくりと頭を垂れる二人。ちょっと待てよ。


「ジジイ……お前また、あたしを試験代わりに使ったな!?」


「お前を最終課題に採用してから、儂の護衛のレベルも上がったからの。かっかっかっ」


 ジジイ……いつか地獄に落としてやるからな。



 その頃……。



「あの丘を越えれば塔が見える」


「リジー……そのフレーズどっかで聞いたことあるんだけど? ていうか、いくつ越えればいいのよ……」


 もう数十回聞いたような気がする……。


「大丈夫ですかサーチ? よければお茶どうぞ」


 エイミアが保温魔術水筒を差し出す。いや、流石に熱いヤツを飲む気分では……。


「冷えた牛乳の方がよろしいのでは?」


「あ、ヴィーありがと。こんだけ歩いてきたんだから、冷たいヤツのがいいわ」


 ヴィーに貰った水筒を一気に煽る。何故かエイミアとヴィーの間に、火花が散ったような……ま、気のせいかな。


「あの丘を越えれば塔が見える……はず」


 リジー、それもういいから……。


「お前さ、ジャレずにしゃきしゃき歩けよ。早くしねえと予定通り着かねえぞ?」


 少し先頭を行くリルが振り返った。振り返った際に見えた頬のキズが際立つ。


「……リル、何で頬に自分で傷つけたわけ?」


「ニャ!? ニャんでもニャいよ!」


 顔を真っ赤にして立ち去るリル。これは何かあるな……。


「ヴィー、何か聞いてる?」


「いえ。何故自分っ顔に傷をつけるのでしょうか……」


「あ、私も気になります。リル顔立ちが整ってるのに勿体ないです」


 エイミアも知らないか。


「あれは獣人の儀式」


 すると意外な人物が教えてくれた。


「リジー、知ってるの?」


「ルーデルの記憶にあった」


 あ、そういえばルーデルも獣人だったっけ。


「獣人の女性が伴侶を得た際に『私はあなた以外には見向きもしません』という誓いを込めて、自らの身体に傷を付ける風習がある模様」


 自らの身体に傷……ってことは、自分で自分をキズモノにするってこと!?


「……でも獣人の女性は何人か知っていますけど、そんな人は見た事がありませんよ?」


「かなり古い風習。今では実行する人が稀」


 ……ってことは……。


「……リルって意外と一途なのね……」


 ……つまりプロポーズを受けたわけね。

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