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第十八話 ていうか、ヴィーに危害を加えるバカに一切容赦する気はありません!

「女の子に腹パンするような最低野郎、私が細切れにしてきてやるわ」


 ポーションを口に含むと、気絶しているヴィーに飲ませた。これで多少は回復するはず…………ん?


「ぶはあっ……ヴィーさん? なぜ気絶している人が、背中に手を回せる(・・・・・・・・)のかしら?」


「い、今意識が戻ったんです」


「……あっそ。もう一本あるけど、もう自分で飲めるわね?」


「え…………痛い! か、身体中が痛い! ポーションの瓶が持てないくらい痛い」


「飲・め・る・わ・ね?」


「…………はい」


 たく! ちょっと甘やかすと、すぐ図に乗るんだから!


「そこで休んでなさい。あとは私が……ん?」


 私が歩き出そうとすると、ヴィーが私の手を握って。


「……御武運をお祈りしています」


 ……と呟いた。


「大丈夫よ。別に吉良邸に討ち入りしに行くわけじゃないんだから」


「……はい?」


 あ、何でもありません。


「おい、お前! いつまでこの俺様を待たせるつもりだ!」


 ………たく、うるさいヤツ。雰囲気がぶち壊しだわ。


「じゃね、ヴィー。今度から肉弾戦の訓練も追加だからね」


「へ!? は、はい……」


 もう一度短剣を作り出し、筋肉バカへ向かった。



「待たせたけど、カケラほども『悪いことしちゃったなあ……』なんて思ってないから」


 あ、わかりやすい。顔がどんどん赤くなっていく。


「……きぃぃさぁぁまぁぁ!! 殺してやるぅぅぅ!!」


 あーあ。簡単に挑発に乗ってくる時点で、こいつの底が知れるわ。

 筋肉バカが振るった拳を、紙一重でかわす。


「っ!?」


 イヤな予感がし、さらに数歩下がった。


 ビシッ


 痛! かすった!?

 拳が通過していった場所から相当離れてたはず……!?


「ほう、俺様の拳をかわすとはな」


 腕の長さを短く見せるような幻を使っているわけではなさそうね。腕が伸びるようなスキルは、人間には使えない。なら……。


「……魔力で拳をコーティングしてる?」


「よくわかったな。そうだ、俺様のスキルはガードナー家に伝わる血族スキル≪魔力拳≫だ!」


 ……だから離れていてもダメージがあったのか。ヴィーも≪魔力拳≫(それ)でダメージが大きくなったのね。


「いいのかしら? そんな重要なこと、ネタバレしちゃって?」


「問題ない。お前のような軽装なら、一撃当たれば終わりだからな! くらええ!」


「そうね……当たればね!」


 私を狙って振るわれた拳は、私のいない空間を通り過ぎた。

 バランスを崩した筋肉バカの()に着地する。


「ぶぎゅ!?」


「私に攻撃を当てる? バカじゃないの。エイミア以上に大振りなあんたが、私に攻撃を当てられるわけないじゃない」


「むぐぐぐぐ……き、貴様ああ!」


 がむしゃらに腕を振るってきたので、一旦距離を空ける。


「あのねえ……がむしゃらはHPが少なくないと、あまり効果はないのよ?」


「何を訳のわからん事を!」


 あら失礼。失言でした。


「……まあどちらにしても、弱点が三つもある以上は、あんたの負けは確定だからね」


「じゃ、弱点だとお……! どこまで俺様を愚弄するか!」


「まあいいわ。戦いながら説明してあげるわよ……カモーーン」


 人差し指をチョイチョイして挑発。


「うっがあああああ!」


 再び拳を振り回すも、そんな雑な攻撃が当たるわけがない。


「弱点その一。あんたの≪魔力拳≫は武器に魔力を纏わせることができない。つまり体術でしか効果を発揮しない」


「だから何なんだあああ!?」


 つまり、間合いが狭いってことよ。


「相手が間合いの広い武器……例えば槍の使い手だったら、簡単に勝敗は決まるでしょうね」


「うぐ……!」


「弱点その二。≪魔力拳≫を活かすためにあんたは身体を鍛えた」


「鍛えて何が悪い! 筋肉があればダメージが増加するのは必然だ!」


 それは否定しないわよ。けどね……。


「あんたは鍛え過ぎたのよ(・・・・・・・)。増えた筋肉自体が重りになってしまい、拳のスピードや身体の動きを阻害してるのよ」


「そ、そんな馬鹿な事があってたまるかあああ!」


 半分自棄になったみたいで、まるで子供のかんしゃくみたいに腕を振り回す。当然だけど、当たるわけがない。


「ほら。かすりもしないじゃない。当たれば強烈かもしれないけど当たらなければ(・・・・・・・)意味がない(・・・・・)のよ」


「ち、畜生……畜生がああああ……はあはあはあ……」


「はい、それが弱点その三。筋肉を鍛え過ぎた結果、体重が増加。それによってスタミナの消費も激しくなっちゃうわけだから……」


 すぐにスタミナが尽きてしまう。


「こんな短時間の戦闘で息が上がってるようじゃ、はっきり言って致命的じゃない?」


「う……うるさい! うるさいうるさいうるさああああい!」


「……エリートさんが言っていた『筋肉バカ』って評価、かなり的を得ていたのね」


「畜生……馬鹿にしやがってええっ!」


 ガードナー伯爵は魔法の袋(アイテムバッグ)から巨大なハンマーを取り出すと、上段に持って。


「うおおおおお!!」


 ヴィーに向かって走り出す。この期に及んで何をしてんのかね、このバカは。


「ヴィー、動ける?」


「……少し難しいです」


 ヴィーの返答を聞いて、ガードナー伯爵はニイッと笑った。


「死ねえええっ!」


 ……度し難い。

 ちょうどいい。あんたを実験台にして、私の必殺技の御披露目にしてやる。

 さっきのような失敗はできないので、青龍刀ではなく日本刀をイメージする。佐々木小次郎が使っていたような、長い長い刀を。


「……いくわよ、筋肉バカ……秘剣」


 できあがった物干し竿を下段に構え。


「……≪竹蜻蛉≫」


 ……斬り上げた。



「……? な、何だ? 何も起きない」

 ザクッ

「うぐっ」

 ザクザクッ

「ぐっ! ぐぶっ!」

 ザクザクザクッ! ドスドスドス!

「ぐ、ぐああ! ぎゃあああああ!」

 ザシュウ!

「ぐ、あ、あ………ぁ……」


 ……筋肉バカの身体に斜めに線が走り。そのまま上の部分がずり落ちていった。


 ドサッ バタッ


「……うまくいったわ。これが秘剣〝竹蜻蛉〟」


 ……かなり私のアレンジが入ってるけど。


「サーチ、お見事です」


「立てる?」


「な、何とか……イタタタ」


 不意打ちに近かったとは言え、ヴィーにここまでダメージを与えるとは……恐ろしい攻撃力だわ。


「ヴィーの≪怪力≫と、どっちが上かしらね」


「……瞬間的な威力でしたら、≪怪力≫でも敵いませんね……それにしてもサーチ」


「ん?」


「先程のサーチの≪竹蜻蛉≫ですが……どのような技なのですか? サーチの刀からナイフが飛び出した(・・・・・・・・・)ように見えたのですが……」

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