第十一話 ていうか、旅立つ準備とD!
「おい……」
「エイミアだぜ……」
「たまんないな……」
……見られてるわね。
今日の私はビキニアーマーではなく普通の服だ。だから、新しいローブを着ているエイミアが目立つ目立つ……普段はビキニアーマーの私のほうが注目されてるからねー。エイミアの「胸ガバッ」のドラゴンローブだと注目されて当然か。
「うぅ……サーチぃ……」
涙目で私に縋り付くエイミア。うぅ、可愛い。
「お願いだから……ビキニアーマー着てよ……」
……私も来たいのは山々なんだけどねー。
「いま手直し中なのよ」
「手直し中って……どうしたんですか?」
んふふ。よくぞ聞いてくれました!
「実はね〜……サイズが合わなくなったのよ」
カップがかなりキツくなってきてた。だから正確に採寸して作り直してもらうことになったのだ。
「そ、そうなんですか……お腹周りですか?」
「なんでそうなるのよ! バストよ、バ・ス・ト!」
「いひゃい! いひゃい! ひっひゃひゃらひゃいへー!」
……たぶん「引っ張らないでー!」と言ってる、と思う。
今日は旅に必要なものの買い出しに来ている。一応ギルドにパーティ登録できたんだけど、「各地のダンジョンを巡る」としているので近くのギルドに必ず報告することを条件に、旅が許されたのだ。Dクラスパーティとしては異例なことだそうだ。
普通E〜Dクラスのパーティは、比較的弱いモンスターが出没する地域の都市を拠点として活動することになる。旅に出てあちこち巡る、なんてことはかなりの高ランクパーティじゃないと自殺行為に等しい……らしい。
私達が竜殺しだからこそ異例な許可が下りたのだ。
「……死ぬかと思ったけど……ムダじゃなかったってことね」
三人で話し合い、最初の目的地はここから近い堕つる滝……もとい温泉地ダウロへ決めている。ここからだと歩いて十日くらいで、そのための食料と薬草、精密な地図等を買い揃える。
「まあ必要なもの以外にサーチにいろいろ頼まれたしな……」
そう言ってリルは別行動となった。なので私とエイミアで買い出しにきたのだ。
「うぅ〜恥ずかしい〜」
人に見られてることが恥ずかしいのか、私の背中に顔を押しつけて歩くエイミア。重いよ。
「それならドラゴンローブ着てこなきゃよかったじゃない」
「そうなんだけど……涼しいんです、これ」
……多少暑いより胸元晒す方を選ぶから注目されるのよ。
「そんなに暑いの苦手なの?」
「はい……ここに汗疹ができて痒くなるので」
そう言っておっぱいを持ち上げるエイミア。
「………………」
「な、なんで殺気が溢れだすんですか!? ちょ、サーチ……いったあああい!」
……毎回これを素でやるからタチが悪いのよ。
夕方。
食料の調達も終わって宿に戻る。
「リル、ただいま〜……あれ?」
まだ戻ってきてないみたいね。
「私は大浴場に行ってきますね」
エイミアも行っちゃった。
さーて、何しよう。
「……そうだ」
さっき防具屋で受け取ったビキニアーマーの試着をしてみますか。早速着ていたモノを脱ぎ捨てる。
「ボトムは問題ないはず……」
ビキニアーマーでも「トップ」「ボトム」と言っていいかはわからないけど。
「さ〜てさてさてさて♪ お楽しみの……トップ♪」
たぶん今ならCくらいはあるはず。
「これで谷間ができるはず」
トップを微調整して胸が真ん中に寄せるようにしたのだ。防具屋さんグッジョブ!
ちょうどホックを留めようとした時。
「サーチ、戻ったぜ」
リルが帰ってきた。
手にいくつかの皮袋を抱えている。
「あ、お帰り」
着けようとしていたトップをベッドに放り投げる。
「あった?」
「あったけどよ……毎回言うが服着ろっつーの」
「いいじゃない、別に。で? あったの?」
「ああ」
袋を床に並べる。
「胡椒なんてよく手に入ったわね」
「人間には高い物かもしれねえけどな、獣人の間じゃ普通に使ってるぞ」
ギルドで聞いてビックリしたけど本当だったんだ。前にも言ったとおり胡椒は高級品扱いだ。理由は獣人の専売品だから。
この世界では胡椒の栽培法は確立されていない。野生の胡椒を探すしかないのだ。
で、森を知り尽くしている獣人の出番というわけ。リルの伝手で安く胡椒をわけてもらった。
「で、何に使うんだよ? 料理に使うには多すぎるだろ?」
「まあ、いろいろとね」
そう言って立ち上がる。
その時。
胸が揺れた。
「く〜……たまんない」
前世では味わえなかった感触! いいわ〜、揺れる胸!
「……変態」
リルの一言にちょっぴり傷つく。
そして。
明日の朝。
ついに、旅立つ。
目指せ。
……D!
閑話のあと新章。
冒険とダンジョン編です。
…埋蔵金見てて遅れました。すいません。