表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
388/1883

第十六話 ていうか、護衛中に敵のアジトを発見!

結構残虐表現があります。

『さあ、上り以上に足への負担が大きい、パンドラーネの山下り! 昨日全区間を走ったばかりのエリト選手は大丈夫か!?』


 ヴィーがしっかり≪回復≫(リカバリー)しているので無問題。


『背後には新大陸選抜チームが迫ってきている! 差は縮まる一方だーー!』


 ……確かに……結構詰めてきたわね。


「ヴィー、遠隔で≪石化魔眼≫(ゴルゴン)はイケる?」


『軽く、でしたら』


「なら筋肉バカチームの選手の靴を、一瞬だけ(・・・・)石化して」


『…………相変わらず悪どい……でも其処も魅力の一つです』


 悪かったわね! ていうか、そこも魅力的って言われても嬉しくないわよ!


『……≪石化魔眼≫(ゴルゴン)


『……おーーっと! ここでアクシデントだ! 突然新大陸選抜チームの選手が倒れ込んだぞ!? 脱水か!? 脱水症状なのかーー!?』


『危険な倒れ方でしたねえ。心配ですね』


『係員が駆け寄るが……あ、大丈夫のようです。立ち上がりました。走行可能なようです』


『何があったんでしょうねえ。靴を不思議そうに眺めていますが……』


 ……あの選手、まさか靴が急に石に変わったなんて思うまい。

 とりあえず、差は広げることはできたわね。


『それにしても、擦りむいた膝が痛々しいですね』


『地味に痛いですからね。走りに影響が出なければいいですが』


 ……ごめんよう。



 ……そんなこんなで無事に坂を下り切り、第六区も無事に一位通過した。

 第七区に入り、住宅が増えてくると、再び弓矢による襲撃が予想される。私も高所に意識を向けながらエリートさんの近くを進む。


「……あ、敵をはっけーん」


 視界に入った弓術士の背後に回り、口を塞いでから針を刺し通す。


「うぶっ! っ! ……ぅ……」


 白目を剥いて倒れる。あ、女の弓術士だったか。


「……せっかく可愛い子なのに……南無」


 殺した私が言うのも変かな。


「おーい、交代の時間……き、貴様! リサに何をした!」


 あらら、バッドタイミング。


「敵だ! 早く来てぐぶぅ!」


 再び口を塞ぎ、腹に短剣を刺した。≪偽物≫(イミテーション)で短剣の先端を変形させ、ハリセンボン状態にする。


「ぐむううぅぅぅ………っ………」


 ……痙攣して、動かなくなった。


「痛かっただろうけど、ごめん。ちょっと実験してみたかったから」


 一人言を呟いてから軽く合掌し、内部へと潜入した。中に複数の気配を感じたから、たぶんここが敵のアジトだ。潰しておくのに越したことはない。


「フンフンフーン♪」


 階段を二階分降りた踊り場に、ヘタクソな鼻歌を歌う見張り発見。実験台になってもらいます。

 自分の≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)を広げ、領域内に見張りを入れる。


≪偽物≫(イミテーション)


 それから針を伸ばし、ゆっくりと見張りの後頭部に近づけていき……。


 ズブリッ


「けはあっ……ぁ」


 後頭部から侵入した針は、見張りの眉間を貫通した。


「……やっぱり……」


 これで確信を得た私は、≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)を広げたまま移動する。

 何を確信したかって? それはまたあとで、ね。



 一番気配を多く感じる部屋に着くまで、さらに三人ほど片づける。全員弓術士らしく、近距離戦に不慣れだったから楽勝だった。リルを見習え。


「さーて……この部屋でボス戦かな」


 ここまで来たら不意討ちも不要。


 ばあんっ!


 ドアを蹴破って中に入る。


「はろはろ〜〜♪」


「な、何だお前は!?」


「何だって……ドアを蹴破って入ってくる友達なんていないでしょ? 敵に決まってんじゃない」


「!! ……お前ら、こいつを殺……せ……!?」


 剣を抜こうとした手が不自然に止まる。室内いたヤツも全員同じ。突然動けなくなった自分自身に動揺している。


「な、何でだ!? 何で身体が……?」


「……あんた達、自分の身体に何か巻きついてるのがわかんない?」


「巻きついてって……何だこりゃ? 糸か?」


「糸が身体中に巻きついてやがる!」


「そうよ、糸。あんた達の身体は≪偽物≫(イミテーション)で作った鋼鉄製の糸で、がんじがらめになってるのよ」


「な!? ≪偽物≫(イミテーション)だと!? あんな使えない魔術で、これだけの人間を行動不能に!?」


「で、できるわけねえだろ! ≪偽物≫(イミテーション)は自身から一定の範囲内でしか使えない魔術だぞ!」


 そう、本来≪偽物≫(イミテーション)は近距離でしか使えないハンパな魔術。だから使えない魔術の代名詞的な扱いをされていた。

 だけど……。


「心配しなくても、あんた達がいる場所は私の≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)内。それはね……」


 ≪偽物≫(イミテーション)でナイフを作り、敵の足元に投げる。

 ナイフは地面に突き立ったまま霧散しなかった(・・・・・・・)


「……私のすぐ近くにいるのと同じことなのよ」


 この間のエイミアの一言で、ふっと考えたのだ。≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)を持つ私の場合、≪偽物≫(イミテーション)は一般的なモノと何か違いがあるのか、と。

 一番最初の女の子で、長さの限界を再確認した。次の男で、作りだした武器の変形を試した。次の鼻歌男は、≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)内での≪偽物≫(イミテーション)を試した。

 結果としてわかったこと。≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)は、私の身体の一部に等しい。つまり、≪絶対領域≫(アルティメットゾーン)内ではどこからでも(・・・・・・)≪偽物≫(イミテーション)が使える……!

 だから何もない空間にナイフをたくさん作り。


「ひ!」


 ドスドスドスドスドスドスドスッ!


「ぎゃああああああ!」


 一気に突き刺すこともできる。

 また、鋼鉄の糸を操り。


「いいい痛い痛い痛い! 締め付けないでえええ! 千切れる千切れるぅぅぅ!!」


 ギィゥゥゥゥ……ズバッ


「あああああああっ!」


 ザシュズバズバッドシュ

 ボトボトボト


 ……一瞬でバラバラにもできる。


「ち、チクショウがああ! 殺せ! 殺しやがれえええ!」


「……一応聞いとくけど……誰に雇われた?」


「言うかああ! 言ってたまるかああ!」


 ……でしょうね。なら。


「望み通りに殺してあげる。ただし、いろいろ試してからね(・・・・・・・・・・)


 男の顔が、絶望の色に変わった。



「うぐ……はあはあはあ……」


 無事に使いこなせたけど……身体への負担が大きすぎる。

 エイミアに貰ったポーションを飲み干しても、回復したのは六割くらい。これは実戦では使えないわね。


「せめて……一瞬だけ使うとかできれば……負担も少なくて済むんだけど……」


 そうだ。一瞬の必殺技として使用すれば、あるいは……例えば〝竹蜻蛉〟みたいに………ん?


「……竹……蜻蛉……」


 このとき、私の中で何かが閃いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ