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第六話 ていうか、リルにもついに春が来たみたいです!

「要はあんたが負けなければいいのよね!?」


「そうだが……少し口の利き方を弁えろ。仮にも私は貴族だぞ?」


「はいはい。ねえ、実行委員会!」


「わ、私ですか? 何でしょうか」


「何だかんだ言っても、毎年冒険者同士の争いは起きてるんでしょ?」


「は、はい」


「誰か仲裁に入るの? それとも放置?」


「私達が把握できたトラブルには、仲裁に入ります。ただ、どうしても人数には限りがありまして……」


 つまり把握できないヤツは放置していると。


「なら実行委員会(あんたら)に見つからなければ、闇討ちし放題ってわけね」


「いや、流石に闇討ちはご遠慮申し上げたいのですが……」


「ならエリートさん。私達があんたを護衛する傍らで、ライバルになり得る有力候補を始末……もとい脱落させていくわ。そうすれば勝利も確実」


「ふざけるな! そのような汚い真似が出来るか! このエリト・ドノヴァン、落ちぶれたとはいえ貴族の端くれ。そのような小細工、認める訳にはいかぬ!」


「うっさいわね! そんなくっっっだらない貴族の矜持(プライド)の方がエイミアより大事だっつーの!?」


「く、比べられるモノではない!」


「ならいいわ。あんたはその貴族の矜持(プライド)を優先させなさいよ。私達は私達でエイミアを優先させてもらう」


 ……私とエリートさんはしばらく睨み合い…………エリートさんがフッと笑った。


「……噂通りの度胸だな。目的を達成する為なら、どんな手段をも用いる冷酷さも、聞いた通りだ」


「……誉められたとは思わないわよ」


「どちらにしても、私はお前が用いるような汚い手段はお断りだ」


 ………。


「だが……私も全てを見透す目を持っている訳ではない。故に私の見ていない場所で何が起きようと、私が関知する事ではない」


「……そうね」


「報酬については後で我が家の執事と話すが良い……すまないが、私も仕事が残っているのでな」


 そうね……頃合いか。


「わかりました。なら私達は失礼します。無礼な言葉遣い、平にご容赦を」


「構わん…………それと」


「はい、何か?」


「妹を………宜しく頼む」


「……もちろんですわ」


 私はニッコリと微笑んで、部屋を出……あれ?


「リル?」


「…………」


「ちょっとリル? どうしたの?」


「……へ!? ニャニャニャんだった!?」


「話終わったから出るわよって言ってたんだけど」


「そ、そうだったか。す、すまねえ……失礼しました」


「……うむ」


 ……パタン


 リルは逃げるように、先に行ってしまった。一体どうしたんだろう?


「ヴィー、どう思う?」


「リルの事ですか? サーチはお気付きになりませんでしたか?」


 へ? 気づくって何に?


「…………この鈍さは天然なのでしょうか。重症ですね……」


「鈍いとは何よ、失礼ね……ていうか、リルがあの状態で鈍いって……まさか」


「そのまさかかと」


「リ、リルがエイミアの義理のお姉さまになっちゃうってこと!?」


「確定はしていませんが、リルの希望が叶えば」


「…………リルってああいうのが好みだったんだ」


「そうですよね。私のイメージでは『私より強いヤツしか認めねえっ!』だと思ってたのですが」


 うん。それ、私も思ってた。


「リルはあの性格で奥手だから……難しいわね……」


「え? リルって奥手だったのですか? 少し意外です」


 見た感じじゃ、グイグイ押していくタイプっぽいんだけどね。


「私とマーシャンがワイ談を始めると、真っ先に逃げていくのがリルなのよね……」


 で、耳を塞ぎながらも残ってるのがエイミア。どこ吹く風なのがリジー。


「……ていうか、リジーって性欲あるのかしら……?」


「まだ生まれたばかりなのでしょう? 性的に成熟するにはまだかかりますよ」


「そっか。ならワイ談で盛り上がれるのはマーシャンだけか……」


「……私も……」


「ん? 何か言った?」


「いえいえいえいえ何でもありません」


 ……いえが妙に多かったけど……スルーしときますか。



 ヴィーに宿の手配を頼み、私達はリジーとエイミアを迎えに行く。


「エリトさんか……リル、どう思った?」


「…………かっこよかったニャ…………」


「は?」


「あ、いやいやいや! 何でもない、何でもないんだ、うん!」


 ……誤魔化すのがヘタクソ過ぎ。


「そんなに気になるんなら、エイミアに詳しいこと聞いてみればいいじゃない」


「なななな!? そんなこと聞くかよ!」


「何よ、あんたエリートさんに興味ないの?」


「きょきょきょ興味なんかあるわけニャいだろ!」


 ……面白い。リルのこの反応、マジで新鮮だわ。


「そっかー。リル、エリートさんには興味ないのかー」


「…………」


「なら、私が口説いちゃおっかな」


「ニャ!?」


「私もあーいうのは、結構タイプなのよねぇ……」


「ままま待つニャ!」


「なーに? リルは興味ないんでしょ?」


「うぐ……!」


「だったらいいわよね♪ さっそくデートにでも誘ってみよ〜♪」


「ぅぅ……やっぱりダメニャ! ルーデルに悪いと思わニャいのか!?」


 ちっ、そう来たか。


「ルーデルはルーデル、エリートさんはエリートさん。別問題よ」


「ニャ!? ……ニャら……ヴィーに悪いと思わニャいのか!?」


 ひぅっ!


「わわわ悪いとは……思うけど……」


「そうニャそうニャ! エリトさんに手を出しちゃダメニャ!」


「……でもリル、エリートさんには興味ないんでしょ?」


「うぐっ………わかった……」


「ん?」


「わかったニャ! 白状するニャ! エリトさんに気があるのは事実ニャ!」


 をを! ついにカミングアウトした!


「だからサーチがエリトさんに手を出すのはダメニャ! お願いだから……ニャ!? ニャニャ!!?」


 ん? リルが私の後ろを指差して……?


「……サーチ」


 ピキィィン


 あ。空気が凍りついた。


「……ヴィ、ヴィー?」


「……エリトさんに手を出すって……どういう事ですか?」


「ちょ、ちょい待ち。話せば、話せばわかるから! ね、ね?」


「話す必要が……あるのですか? サーチ?」


 あ、あははは……完全にヒートアップしてるわ……。


「この………………浮気者ォォォォォッ!!」


「ちょ、止めいてぇ! んぎゃ! あぎゃあ! し、死ぬぅぅ! リル、ヘルプ! ヘルプゥゥゥゥ!!」



「そ、それではサーチはリルをからかっていただけなのですか!?」


「な、何回も……言ったんだけど……」


「すみません! すみませんでした! ≪完全回復≫(フルリカバリー)!!」


 謝りながら治療をするヴィーのすぐ後ろで。


「……たまには、いい気味ニャ」


 ……と呟くリルの声は、はっきりと聞き取れた。

 ……絶対に仕返ししてやるんだから……がくっ。

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