表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
374/1883

第二話 ていうか、あまりにもありすぎるポーション、どうしようか……。

 リルが回復したのを期に、ソレイユは私達をパンドラーネ近郊に転移してくれた。

 そしたら、そこで……ポーションの事を思い出した。

 確か帝国にいたとき戦争のきな臭い雰囲気を感じた私は、絶対に需要がドンと増えて高騰するとみたポーションの買い占めを、エイミアに頼んで実行してもらったんだった。


「……それにしても……よくこれだけの数を……」


 でも……帝国にいたときってまだ無限の小箱(アイテムボックス)獲得前だったんじゃ……? どうやって持ち運んでたわけ?


「サーチに言われてから、ずっと買い集めてたんですよ」


 ……………はい?


「……私が言ったのは帝国の中で買い集めろ、ということであって……ずっと買い集めろとは、一言も言ってない」


「ええ!? そうだったんですか!?」


 ……まあ……エイミアに買ってこい、と言っておいて忘れてた私も悪いんだし。


「で? ポーションはどれくらい残ってるの?」


「あ、はい。ちょっとアイテム欄を見ますね」


 ……まさか……覚えられないくらいの量なわけ……?


「……あ、ありました。ポーションは……1、10、100、1000……2856本ありまごぶっ!?」


「そんだけ集めてどうするつもりだったのよ!? 流石に『変だなぁ?』とか思うでしょ!!」


「イ、イタタ……そ、それはそうなんですけど……サーチの言った事ですから、間違いなんてありえないと……」


 ……信頼感のありすぎは逆に困る……。


「でもいいじゃないですか。ポーションはいくらあっても困るモノではありませんし。実際にリルも助けられたわけですし」


「あーそうだなそうだな! 助けられたよ!! シャレにはならねえけどな!」


 ……あれから大分経ったけど……まだ痛いのね。


「まあリルはさておき……確かに消耗品で必需品だからいいか。しばらくはヴィーに頼らなくても大丈夫だし」


「それは助かります」


 ……結構疲れるみたいだしね、≪回復≫(リカバリー)の重ねがけは。


「そういうわけだから、ポーションは使える限り使いましょ。無限の小箱(アイテムボックス)に入ってるから腐る心配はないし」


「そ、そうですか! 良かったです、これでポーション()解決しました!」


 ………ん? ポーション……は?


「ちょい待ち。あんた溜め込んでるの、ポーションだけじゃないの?」


 エイミアが開いていたステータスを覗き込む。すると……。


『毒消し、痺れ消し、薬草、一級薬草、特級薬草、血止め薬草、MPポーション、気付け薬、エーテル、瞬間接着剤・傷口用、薬草練り込み包帯』


 ……というのが見えた。ちなみに全て『×100』付き。さらに『エリクサー×15』という文字が目に入る。


「…………あ、あんたは」

「はい?」

「……げ、限度って言葉を知らんのかああああっ!」


 どごげしぃ!


「いぎぃああああああああああ!」



「エ、エリクサーが十五個もあるのですか!? 一生食べるのに困りませんね」


 実際にエリクサーがそれだけあれば、一生食っていけるくらいの金額にはなる。


「それにエーテルが百オーバーかよ……これでメイドさんが十人雇えるな……一生」


 実際にエーテルが百オーバーなら、メイドさんを十人雇えるわね。それどころか、一生分の給料払ってもお釣りがくるわよ。


「それどころか、残りの回復アイテムだけで、もう一生分食っていけると思われ」


 ……つまりエイミア(このバカ)は、三人くらい一生食っていけるだけの散財をしてくれたわけで……。


「散財って……そういえばあんた、どうやってこれだけのモノのお金を!?」


「え? 自分のお金に決まってるじゃないですか」


「ま、まいまねー!?」


 いやいや、いくらなんでもこの額は……。


「実はですね、実家を飛び出した時に幾つか持ち出したモノがあって……それを売ったら凄い金額になったんですよ!」


 実家のモノを持ち出したあ!?


「い、一体何を持ち出したの?」


 声を出しすぎたかな……喉が渇いた私は、水筒の水をがぶ飲みしながら聞いた。


「はい♪ 私の御先祖様が爵位と領地を王様から頂いた時の、それぞれの証明書類です」


 ぶふぅー!


「きゃっ!? サーチ汚いですよ!」


「ゲホゲホゲホ……な、あんた、爵位と領地の証明書を売っちゃったの!?」


「はい♪ 仕返しです」


 ……そりゃあ……一生食ってける金額三人分くらいの値段にもなるわな……。


「いい? あんたが売った書類があれば、誰でもあんたの実家の領主になれちゃうのよ? つまりあんたの家族は路頭に迷うのよ?」


「はい♪ いい気味です」


 黒い話題に♪を付けるな。


「………………そこまであんたに恨まれる、あんたの家族って一体………」


「はい♪ 人間のクズです」


 ……これ以上エイミアの家族の話題に触れないほうがいいか。だんだんエイミアが黒くなっていく気がする。


「……ここまで回復アイテムがあると、パーティどころか軍一つ分賄えますね……」


「全くよ……エイミア、あんた買い物したいときは、私達に相談してからになさい。あんたの金銭感覚はおかしすぎるわ……」


「わかりました」


 ……それよりも……この回復アイテムの山、どうすんのよ……。エイミアが買ったモノだから、勝手に売り飛ばすわけにもいかないし……。


「……サーチ、こういう場合は……見なかった事にしましょう!」


「ヴィーの言う通りだ。どうせ無限の小箱(アイテムボックス)があるんだ、仕舞いっ放しでも問題ないだろ」


「賛成。ポーション二千本オーバー持ってるなんて知られたら、馬鹿扱い確定」


 そうね……私でもそんな話聞いたら「……バカじゃないの」としか言えないだろうし。


「よし、封印指定ってことで……異議はありますか?」


「「「「「異議無し」です」だな」です!」いえ、ありです!」


「じゃあ一人だけ異議ありということで……ん?」


 誰よ、異議があるヤツは!?


「申し訳ない、話に割り込んで……ちょっといいですか?」


 ……ていうか、あんた誰?



 突然現れた怪しげな男に連れられ、私達は近くの喫茶店(?)に入った。


「で? あんたは何がしたいわけ?」


「大変失礼致しました。私はこういう者です」


 そう言って名刺を出してきた……ってこっちの世界にも名刺があるのかよ!


「えっと……パンドラーネ主催・ギルド対抗マラソン大会実行委員会!?」


「はい、毎年恒例となっている一大イベントです」


 ……駅伝じゃないんだ。


「ギルド対抗って事は……?」


「文字通り、各都市のギルドからの選抜メンバーで争います」


 ……大学対抗じゃないんだ。


「その駅伝……じゃなかったマラソン大会の実行委員会が、私達に何の用?」


「あ、大変失礼致しました! 実はお願いがございまして……」


 ……お願いねえ……。


「あなた方のお話に出てきたポーション、ぜひお譲り頂けないかと思いまして……」


「……はい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ