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第二十五話 ていうか、口は災いの元。

 半日ほどゴミ漁りをがんばったけど、心が折れそうになる。


「うう……嫁入り前の可憐な乙女が、ヘドロまみれになってゴミ漁りするなんて……」


「大丈夫です。例えゴミに汚されようと、サーチは私が貰ってみせます」


「ちょっとリル! ヴィーが明後日の方向に、何か語り始めてるわよ!」


「ほっほへ、ほっほへ」


 ……よほど臭いのだろう。リルは鼻に洗濯バサミをつけていた。


「……たぶん『ほっとけ、ほっとけ』って言いたいんだと思うけど……ムリにしゃべらなくていいからね?」


 リルは頷くと、作業に戻っていった。リルも一応乙女なんだから、洗濯バサミは止めなさいよ……。


「サーシ、そろそろひゅーへいにひない?」


 ……はい?


「何を言ってんのよエイミアは……ぶはっ! あ、あんたは鼻に何を詰めてるのよ!?」


「へ? てっひゅ」


 ……ティッシュね。


「ちょっとエイミア! いくら何でもそれは止めなさい!」


 エイミアは不思議そうな顔をして、鼻からティッシュを引き抜いた。


「はふ……だって臭いじゃないですか。鼻を摘みながら作業してたら、効率も落ちちゃいますよ?」


 そうなんだけど! そうなんだけれども! エイミアの言ってることは、高い比率で正論が占めてるんですけど!


「女の子としてそれはないっての! いいから鼻栓は止めなさい!」


「ええ〜……わかりましたよぅ」


 めっちゃ不満タラタラな様子で、エイミアは離れていった。


「どしたの、サーチ姉?」


「ん、リジーか……って……今回の作業で一番やる気があるのは、間違いなくあんたね……」


 手にいっぱいの戦利品(呪われアイテム)を抱え、ホクホク顔でスキップしてるリジー。周りがゴミの山じゃなければ微笑ましい光景なんだけど……。


「……? サーチ姉、何か用なの?」


「何でもない何でもない。呪われアイテムがいっぱい集まって良かったわね〜〜って言っただけ」


「? ……そう。なら作業に戻る」


「ていうか、忘れてた! リジー、『七つの美徳』の気配は感じない?」


「んーん。全く」


「そう……ならいいわ」


 ……こんだけ苦労して、ホントにただのゴミの山でした……ってパターンは願い下げよ。



 夕方に作業を止めて、ベースキャンプに引き上げた。リルが新しい聖杭を打ち込んでくれたので、モンスター対策は万全だ。


「ぷはあああっ! ホントにヴィーには感謝よね!」


 いつものようにヴィーが聖術で露天風呂を作ってくれたので、全員で浸かって疲れを癒す。温泉みたいな効能は望めないけど、贅沢は言うまい。


「見事なモノじゃな。ワシにもやり方を教えてくれぬか?」


「いいですよ。明日一緒にやってみませんか?」


「おおそうか。よろしく頼む」


 ……マーシャンの場合、湯船用の穴がクレーターと化す気が……。


「でもマーシャンと一緒に入るのも久しぶりですね」


「おお! そうじゃった、そうじゃった! 久々に観賞せねばのう!」


 そう言ってマーシャンは、全員の胸を吟味して回り出した。


「うは! サーチ、成長したのう! もう少しでワシを抜く勢いじゃな!」


「そ、そお?」


 少し成長したとは思ってたけど……マーシャンに追いつけそうなのか……うふふ。


「リジーは……美乳じゃのう! バランスは申し分ないわい! 大き過ぎないのも良いのかもしれぬの」


「……ふーん……」


 あまり胸にこだわりのないリジーは、上の空で返事するだけだった。たぶんだけど、たくさんゲットした呪われアイテムのことしか、頭にないのだろう。


「エイミアは……何と! あれから更に成長しておったか! ワシの揉み方が良かったのじゃろうなぶげびゃ!」

「余計な事は言わなくていいです!」


 ……エイミアの一撃で頭にたんこぶを作りながらも、胸の評価を続ける。


「エ、エイミアの胸は世界の宝じゃ。決して太ったり痩せたりするでないぞ」


「……難しい事を言いますね……。私も太りたくはないので努力しますけど……」


「ぬっ! さてはお主『痩せるのはいいかも』とか考えたじゃろ!? 駄目じゃ、駄目じゃぞ! その天然記念乳を萎ませる事は、ハイエルフの女王たるワシが許さあん!!」


 何よ、天然記念乳って!?


「わ、わかりました! わかりましたから!」


「絶対じゃからな? 絶対じゃぞ?」


 ……なぜそこまで拘る。


「まあまあ。陛下も冷静になって下さい」


「むぅ……ワシとしたことが……つい興奮してしまったようじゃ。許せよ、エイミア」


「は、はあ……」


「……それにしても……蛇の女王……じゃなかったヴィーよ、お主も見事なモノじゃな……」


 今度はヴィーの胸をガン見し始めるマーシャン。節操がないと言うか、何と言うか……。


「はあ、ありがとうございます」


「何じゃ? 誉めてもらっても嬉しくないのか?」


「申し訳ありませんが、サーチに誉められた訳ではありませんので、そこまで嬉しくありません」


「ふふ……ふはははは! 蛇の女王の一途たるは相変わらずじゃのう! サーチ、お主は幸せ者じゃな」


「……どうも」


 ……なんてコメントしろってのよ……。


「さてさて。サーチが独占するには、あまりに勿体ない。ワシにも堪能させてもらおうかの……」


 ………。


 がしぃ

「ふみゅ!? な、何じゃサーチ?」

「……別にぃ」


 ベキベキベキ! めきごきばきぃ!


「ぎゃああああああああああああ!!」


「……何となくイラッとしただけ」


 ……ヴィー(わたしの)に手を出すなっつーの。


「サ、サーチ……」


 あ、あれ? ヴィーが目を輝かせて……?


「……サーチ……また口が動いてたぞ……」


 げっ!


「……私……私……」


「ちょっと待ちなさいヴィー! 落ち着きなさいよ? 冷静にね?」


「……私……私……大好きです!」


「来たああああ!?」



「……サーチも余計なこと言うから……」


「リル姉は最後まで話題にならなかったぐふぉ!」


「お前も余計なことを言い過ぎなんだよ!」



 ……次の日。

 いろんなことがあって、少し寝不足だ。

 例えば、夕ご飯。


「はい、サーチ……あーーん。照れないで下さい。ほら、美味しいですから……あーーん」


 例えば、就寝時。


「それじゃみんなお休み〜〜」


 ガラッ


「!? な、何してんのよヴィー!」


「お待ちしておりました、サーチ」


「な、何でそんな透け透けのネグリジェで!?」


「そんな……わかってるくせに。さあさあ! 夜は長いですよ!」


「で……出てけええええ!!」


 例えば、夜中。


「う、ううん……」


 ぷにっ


「ん? 何、この柔らかいの……」


「んん……サーチったらもう……むにゃむにゃ」


「………………何で私のベッドにヴィーが寝てるのよおおお!?」


 ……これでどうやって寝ろと!?



 は? 『七つの美徳』はどうなったって?

 見つかったわよ! リジーが呪われアイテムの中から発見したわ!

 ヴィーの暴走のおかげで、すっかり忘れてたわよ!


「口は災いの元だぞ、サーチ」


 ………はい。

閑話をはさんで新章です。

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