第九話 ていうか、パーティの目標。
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
数日かけて町へと戻る途中、モンスターに何回か遭遇したけど、そこまで大変でもなかった。せいぜいゴブリンやオークが出てきたくらいだったので、エイミアのいい練習台になったくらいだ。
そうそう、エイミアが新しいスキルを覚えたそうだ。たぶん釘棍棒の影響だろう。ズバリ≪撲殺≫だそうだ。いろんなスキルがあるのねー……。
リルもスキルが増えたそうだ。≪格闘≫スキルから≪爪術≫が分化したらしい。≪身体弓術≫と同じく獣人専用スキルだそうだ。まあ確かに人間には≪爪術≫なんて無理だわね。
さて、やっと町についた。
まずは。
「ギルドへ……」
「「「お風呂!」」」
ギルド職員と私達とで意見の相違が発生した。
「困ります! ギルドマスターがお待ちです!」
「私達……」
バリバリ……
エイミアの静電気が鳴る。
「しばらくさぁ……」
パキパキ……
リルが指を鳴らす。
「お風呂入ってないのよね……」
クルクル……
≪偽物≫で針を作って指で回す。
「…………………………女性は身嗜みがとても大切ですよね」
……物分かりのいい職員さんで良かったわ。
「「「くうぅぅぅ〜〜…………!」」」
三人揃って湯船に浸かる。
う〜、身に染みる〜!
「はあ〜、癒されます……」
「まったくだ。清洗タオルじゃやっぱ味気ないんだよな」
「ほんと。こればっかりはギルドの脳筋連中にはわからないわよね」
別に身体が汚れているわけじゃない。だけど、一週間近くも水にすら浸かれないなんて乙女には耐えられません! これは……気持ちの問題なんです。
「でもさ。卒業討伐達成したってことは……ここのお風呂に入れるのもあと少しってことだよな……」
一番の風呂好きのリルが寂しそうに呟いた。
「そうですね……一年もいませんでしたけど……ここのお風呂にはお世話になりましたしね……」
リルとエイミアがなんだかしんみりした空気を作り出す。
「……サーチはどうなの?」
え? 私を巻き込むのかい。
「そうねえ……寂しくないって言えば嘘になるけど……」
私的にはいろんな温泉巡ってみたいからなー。
……あ。
「そういえば……」
肝心なこと決めてなかった。
「話は変わるけどさ……私達、パーティ組んでさ……何したい?」
「「は?」」
「忘れてたんだけど……ギルドに登録してあるパーティってさ……ある程度の行動目的を届け出ないといけないのよ……」
緊急召集がある際にある程度パーティのいる場所を把握しておきたいから……らしい。
「な、何それ……」
「い、意味わかんない……」
激しく同意するけど何とかしないと。
「まあ難しく考えることはねえな。己の力を試す為に旅をしている。これでどうだ?」
出ると思ったよ。
「それ一番出される回答で真っ先に却下されるヤツね」
「何でだよ!」
「場所の特定できないじゃない。修行の為なら拠点を決めろって言われるわよ」
「……なんでサーチがそこまでわかるんだよ」
「私がすでに通った道だから」
ギルマスと三時間も生討論して却下されたんだから。
「なら簡単です。ギルドにパーティ登録しなければいいのでは?」
「……確かに。デメリットしかなさそうだしな」
ブッブー。また私が通った道だわ。
「普通は町に入るには銀貨二枚徴収されるの。ギルド登録してるとタダ。これだけですんごいアドバンテージよね」
何気にスゴいのよ、ギルドの七光り。
「なんだよ! だったらサーチには案ないのかよ!」
「あったらここで悩んでないわ!」
「あの〜……でしたら……」
エイミアがおずおずと手を上げる。
「……なんでおずおず手を上げただけで胸が揺れるのよ!」
「ひぇっ!?」
「サーチ、気持ちは良くわかるが今は言うな」
……おほん。話が逸れました。
「ごめん。ではエイミア、どうぞ」
「は、はい……揺れたのはおそらく質量的な問題……」
「それはいいのよ!」
「わ! いひゃい! いひゃい! いひゃい!」
「お前らいい加減に話進めろよ」
「くすん……あのですね、いまモンスターが沸いている原因て何だと思います?」
「え〜っと……ダンジョンよね?」
そう。
この世界ではモンスターは自然には発生しない。ダンジョンから地上に現れるのだ。だから新しいダンジョンが見つかった場合は国でもギルドでも最重要討伐対象となる。
ダンジョンは成長してしまったら最後、手がつけられなくなってしまうのだ。
実際にいま現在もモンスターを吐き出し続けているダンジョンは、大体が発見が遅れてりしたことが原因で深く成長してしまいダンジョンコアの破壊がほぼ不可能になったものばかりだ。
「ならダンジョンを生み出す能力がある人は?」
「魔王だけど……まさかエイミア……」
魔王を倒す為に……なんて言い出さないわよね?魔王を倒せるのは毎度お馴染み、やっぱり勇者なのよ?
「わかってます。だから勇者の手掛かりを探す、という理由で」
だから、居場所を特定できないでしょ。
「ダンジョン近くによくある温泉地を巡りませんか?」
……。
……。
……は?
……どこから……温泉がでてきたの?
「おい……」
リルもジト目だ。
「でもでも、何故か有名なダンジョンの近くには必ず温泉が沸いているんですよ?」
「そう……か?」
え〜と……獄炎谷にはハクボーン、闇深き森にはパンドラーネ、堕つる滝にはダウロ……。
「……確かに……そうだけど……偶然よ」
「たぶん偶然です。だけど私は猛烈に温泉巡りがしたいんです!」
エイミアの個人的欲求じゃない!
「そんなのダメに決まってるじゃない!」
リルも当然反対してくれるわよね?
「乗った」
はあああっ!?
「とりあえず目的も無いし。勇者探しっていうのも悪いことじゃない。ていうか私温泉大好きだし」
リルも個人的欲求ですか!
「確か胸が成長する温泉があるとか」
「はい決定」
私も個人的欲求です!
もういい!
深く考えるのやめた!
そうだったんだ。
私が転生する寸前に、強烈に願ったことは。
「胸を揺らしまくって面白可笑しく生きる!」
ことだったんだ。
よし決めた。
「みんなで面白可笑しく旅しましょう!」
「「さんせーい!」」
新年早々仕事でした。はい。