第八話 ていうか、ドラゴンの剥ぎ取り。
リルが連れてきたギルドの職員はモンスターの剥ぎ取りの専門家だった。
「牙は武器の原料になります。そちらの箱に」
「眼も錬金術の重要な媒体になります。このガラスの入れ物に」
「鱗は1枚残らず集めてください。装備品には最適です」
……といった感じでテキパキと指示をだしてくれる。わかりにくい箇所なんかは実演してくれるのでありがたい。これを機会に剥ぎ取りもしっかりと覚えよ。
さて、問題はドラゴンの素材をどうするか。私達が狩ったドラゴンだから、当然素材の所有権は私達にある。
つまりは、現金化するか、それとも素材を加工してもらって装備を強化するか、だ。
エイミアは装備を希望している。
「やっぱり守備力に不安があるので、ドラゴンのローブを作りたいんですけど……」
ドラゴンローブ!?
あれって鱗バカ食いするし加工も難しいし代金ハンパないのよ!?
「ちょっとそれは……」
「えいえい」
「ちょっ! 脇腹ツンツンするのやめてぇ!」
私は脇腹が弱いんだー!
「わかった! わかったから!」
「リルにもえいえい」
「うわ! や、ダメぇ!」
今度は関係ないリルの猫耳をさわさわフーフーしてる。
「ひゃう! や、やめてぇー! わかったから!」
半分腰砕けになったリルからのOKでエイミアはガッツポーズをした。
「やりました! ありがとうございます!」
それにしても……エイミアのヤツ、いつの間に私達の弱点を……!
くやしいから仕返し。
ぎゅっ
「はあああああああんっ!」
先っぽをつままれて今度はエイミアが腰砕けになった……ちょっと! そこのギルドの人! あんたまで腰砕けになるな!
続いてリル。
リルも装備品を希望した。
「ドラゴンの籠手を作りてえんだ。近接戦では重宝しそうだし」
これは私も賛成した。ドラゴンの鱗なら魔術なんかも弾けるし。
ただ。
「ドラゴンの……髭?」
「ああ……これはどうしても、というわけじゃない。試してみたいだけなんだ」
ギルドの人の話では、ドラゴンの髭はあまり使い途がない、とのことだったので。
「どうぞ」
「……高く売れるものだったら渡すつもりなかっただろ……」
とーぜん。
そして私。
最初は現金化……と思ってたんだけど。
「ビキニアーマーだろ」
「ビキニアーマーですよね」
ち・が・う!
「あのねー、ドラゴンのビキニアーマー作ったって伸縮性まったく無いでしょ」
それ以上にビキニアーマーは守備力皆無なんだよ! ドラゴンの素材使う意味あんまりないでしょ!
「一応ビキニアーマーにも使わせてもらうけど、使っても接合部の補強くらいよ」
「じゃあ現金か?」
「それも考えたけど……私はブーツとレッグガードにするわ」
私は正面から戦闘を仕掛ける場合は蹴り技を多用する。強度は申し分ないドラゴンの鱗ならダメージの上乗せもできそうだし。
「え!?」
エイミアがすごく引きつった。
「……何を想像したのかしら、この子は……」
「いひゃい! いひゃい! いひゃい!」
エイミアの頬っぺたを引っ張る……どうせSM的女王様を想像したんでしょうけど。言っとくけどハイヒールなんて履かないからね。
「痛〜いいい……な、何するんですか!」
「お〜ほっほっほ」
「え!? やっ、やっぱり!?」
「……想像通りだったわ」
「いひゃい! いひゃい! いひゃい!」
色々とあったけど無事に剥ぎ取りと解体を終わらせて、私の魔法の袋に収納する。
そしてギルド養成学校に凱旋! ……となります。
「……あ!」
エイミアがいきなり叫んだ。
「びっくりした……なんだよ」
「私達! 肝心の! ホワイトヤタを!」
「あ! ドラゴンですっかり忘れてた!」
二人して慌てる。何を動転してんだか……。
「それなら大丈夫よ……ほら」
私は魔法の袋に手を入れて。
ソレを出した。
「「ホ、ホワイトヤタ!?」」
そこには真っ黒焦げになったホワイトヤタがあった。
「い、いつの間に……」
「ドラゴン退治の間に」
「う、そ……」
エイミアがあんぐり口を開けた。やめなさい、イメージが崩れるから。
「落ち着いて。私が倒したわけじゃないから」
「? ……んじゃあ誰が殺ったんだよ」
魔法の袋を指差して。
「この中にいるわ」
「え?」
「この中って……まさか」
エイミアは察しがいいわねー。
「そう、ドラゴンよ」
単純に言えば私達とドラゴンが戦っている間にブレスに当たった……らしい。さっき歩いてるときに偶然見つけて拾ったのだ。
「さあ、堂々と凱旋よ!」
ごーん。
よいお年を。