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第十二話 ていうか『飲め飲め!』「飲む飲む!」

 何というご都合主義。

 思わぬカタチで炎の真竜(ファイアマスター)とご対面となった。


「お……お久しぶりです、炎の真竜(ファイアマスター)


『まあ待ちなさい。折角気持ちの良い時間を過ごしておるのじゃ。堅い挨拶は抜きにして、温泉を堪能しようではないか』


「……そうですね♪」


 そう言って私と炎の真竜(ファイアマスター)は、打たせ湯に身を委ねた。


「『はあああああ………」』



「……サーチは何処へ行ったのでしょうか……」


「あ、でも脱ぎ散らかしてあるビキニアーマーや下着を辿っていけば……」


「……流れ的に、パンツの落ちてる先がサーチ姉のいる場所……似た童話の記憶があり……」



『ほほぅ! お主も相当イケる(・・・)口のようじゃな』


「いやいやいや、炎の真竜(ファイアマスター)様には敵いませんよぅ……ほら、もう一杯もう一杯」


『ぐびぐびぐび……ぷはあ! 次はお主の番じゃ! まあお主は瓶から直接飲んでも大丈夫じゃろ』


「あー、そんなこと言っちゃいますか? なら飲んじゃいますよ? 私はお金払いませんよー」


『おお、良い意気じゃ! 金なんぞ儂が全部払っちゃるわい! この宿の備蓄が無くなるまで飲み干してしまえ!』


「なーらイッちゃいまーす……」


 ごっごっごっ!


「ぶはあああ! 美味しい……!」


『大した娘じゃ! それよりお主、以前来た時よりも胸が大きくなったのう!』


「あぁーー! わかってくれる? わかってくれますーー?」


『おぅ、わかるわい! 一気飲みしておる際の、揺れる胸! 真に見事じゃったわい!』


「うん! 普段なら変態認定して、半殺しにするとこだったけど……あんたは許す!」


『何か態度がデカくなったが、気にせんわい! もっと飲もうぞ!』


「おー!」



「……あ、サーチのパンツ見つけました。この柄は間違いありません」


「…………何故ヴィーは、サーチのパンツの柄を把握してるの…………?」


「うぐっ!? すっごく酒臭い……間違いなく、サーチ姉はここ」



「あーーっはっはっはっは!!」

『ワーーッハッハッハッハ!!』


『おお、なかな柔らかい……! 良い張りをしとるのう!』


「何を触ってるのかなあ……? 秘剣〝竹蜻蛉〟!」


『ぐっはあ! ワハハハハ! 良い一撃じゃ! ますます腕を上げたようじゃのう!』


「ていうか……未完成ながら秘剣〝竹蜻蛉〟食らっておいて『ぐっはあ!』だけで立ち上がるあんたも、十二分にスゴいわよ……」


『ワハハハハハハ! 当たり前じゃ、儂は炎の真竜(ファイアマスター)じゃぞ! これぐらい大した事ないわい!』


「……普通の攻撃ですぐに死にかける、氷の真竜(マスタードラゴン)もいますけど……」


『あれは魔術に特化しておるからのう……打撃にはからっきしじゃ』


「……もしかして……あんたは打撃に特化?」


『そうじゃ! 儂は≪灯り≫(ライト)の魔術でも死ねるぞい!』


 ある意味スゴいな!


『そうじゃろう、そうじゃろう! まあ飲め飲め! ワッハッハッハッハ!!』


「……どういう理屈で『飲め飲め!』になるのか、よくわかんないけど……いただきます」


 そう言って炎の真竜(ファイアマスター)に注いでもらっていると。


「あ、サーチ姉いた」

「もう、探しましたよサーチ!」

「あ、やっぱり飲んでる! すっごい酒の匂い!」

「酒池肉林?」

「リジー、その四文字熟語は現状とは違うからね?」


 リジーの言葉を聞いたとたんに、炎の真竜(ファイアマスター)が大笑いを始めた。


『ワーーッハッハッハッハ!! 酒池肉林とは愉快なり! よければお主らも温泉に入らぬか?』


 ヴィー達は戸惑ったような仕草を見せる。どうしたんだろ?


「あの……サーチ、この方の性別は?」


 あ、そういうことか。

 炎の真竜(ファイアマスター)は見た目では、オスかメスかわかんないからね……。

 ちなみに炎の真竜(ファイアマスター)の外見は、小型のドラゴンだ。


『儂か? 儂は炎の化身故に雌雄同体じゃ! ワーーッハッハッハッハ!!』


 よく笑うドラゴンだこと。


「……雌雄同体だったら……良いんじゃないですか?」


「そうですね。私は入ります」


「………………悩む」


 露出を嫌うリジー以外は、さっさと装備品を外し始める。


「え? ヴィー姉もエイミア姉も入っちゃうの?」


「リジーも入るなら、さっさと脱ぎなさい。一人だけ見学なんて嫌でしょう」


「リジー、先に入りますね〜〜♪」


 オタオタするリジーを尻目に、二人は湯船に入ってきた。


「うわ〜〜、温かいです〜!」


「温かさがじんわりと浸透してきます。軟らかいお湯ですね」


 あ、リジーが羨ましそうにしてる。なら。


「リジー」

「何、サーチ姉? ってわわ!?」


 ざっぱあああん!


 リジーをムリヤリ温泉内に引き摺りこむ。


「がぼぼぼぼぼっ!? ぶはあ……サ、サ、サーチ姉!!」


「あはは、これで脱ぐしかないわね」


「う〜〜……もう!」


 リジーが剥れながらも、装備していた鎧を無限の小箱(アイテムボックス)へ片付ける。


「サーチ姉には今度、呪われアイテムの掃除、手伝ってもらう!」


「わかったわよ。今度付き合ってあげるから」

「「付き合う!?」」


 ヴィーとエイミアが激しく反応する。


「……ていうか、何であんたらは『付き合う』っていう言葉に、いちいち反応するわけ!?」


「「……だって……」」


『ワッハッハッハッハ!! 良い娘達ではないか! 両手に花、というのも良いモノじゃぞ?』


 ……ヴィーとエイミアが、スゴ〜〜〜〜く複雑な顔をしてるから止めれ。


「私はそういうつもりは一切ありません!」


「「えぇっ!?」」


「だから……いちいち反応するなっつーの! 今は、てことよ! 七冠の魔狼(ディアボロス)の件が解決しないと、色恋どころじゃないでしょうが!」


「あ、そういう事ですか……」

「私はてっきり……」


『おお、そうじゃった。今は七冠の魔狼(ディアボロス)の件が、最優先課題じゃったな』


 そう言うと炎の真竜(ファイアマスター)は、無限の小箱(アイテムボックス)から靴を取り出した。


『ほれ。これをやるわい』


「……それは?」


『儂の対極に位置するモノ。「怠惰」の対となる「七つの美徳」の化身、勤勉の靴じゃ』


「勤勉の……靴ぅ?」


 どういう靴なのよ。


『先日、儂の寝床の近くから出てきたのじゃ。お主達が探しておるのは、これじゃないかの?』


 リジーに視線を向けると、嫌そうな顔をして頷く。間違いないらしい。


「あ、ありがとうございます!」


『なあに。儂もこの世界は好いておる。故に滅びるのを見過ごす事はできぬ』


 ようし! 今回は手早く手に入ったから……。


「みんな! 今夜は飲み明かすわよーー!」


『ほっほ。儂の奢りじゃ! 遠慮せずに飲み干すが良いぞ!』

「「「「イェーーイ!!」」」」



「……流石に可哀想だから……もういいわよ、リル」


 ゴシゴシゴシゴシ……


「うぅ〜、呪ってやるぅ〜……」

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