表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
351/1883

第五話 ていうか、ヴィーとお風呂で作戦会議。

私の大好きな入浴回!

 夜。

 あれからヴィーの身体を撫で回した変態を捜索したけど、全く手掛かりはなし。捜索に時間を食われて辺りは真っ暗、秘密の村へ行くこともできなくり、この場で野営することになった。


 パチパチ……


 焚き火で干し肉を炙りながら、簡単な野菜スープの味付けをする。そんな私の周りを、リル、エイミア、リジーの三人が囲っていた。


「……やりにくいんだけど……」


「腹へった」

「お腹すきました」

「……ライフが0」


「だったら肉でもかじってなさいよ。そろそろ焼き上がるでしょ?」


「……スープが飲みたいんだよ」

「……スープが飲みたいんです」

「……以下同文」


 ウザい。


「……ヴィーに頼んで、石化正座をもう一時間追加」

「「「素直に肉かじります!」」」


 ……たく。


「あんた達、昼間の正座で懲りなかったわけ?」


「……お前……どの口がそれを言うか?」


「私は謝った。あんた達はゴネた。その差だと思うけど?」


「ゴネてねえよ?」


「似たようなもんじゃない。私が謝った後でも、ちゃんと謝ればヴィーは許してくれたわよ」


「……それはサーチ姉だから通用する理屈くけぇ!」

「……昼間にも言ったけど、あんたはいい加減に学習しなさい」


 脛を蹴られてのたうち回るリジーに、ため息まじりに注意した。

 それにしても「くけぇ!」って一体……。


「おい、焦げ臭いぞ」


「あ、いい感じで焼けたわね。もうすぐスープもできるから、先に食べてて」


「いよっしゃああ! 一番デカいのもらったあ!」


「あ、リル!? ズルいですよ!」


「へっへーん♪ 早い者勝ちだよ……いただきまーす!!」


「ちょっと、猫舌のあんたには熱す「あぢゃああああああ!!」……言わんこっちゃない……」


 脛を押さえてのたうち回るリジーの横に、口を押さえてのたうち回るリルが加わった。ホコリが発つから、止めてくんないかな?


「ハフハフ……それにしへもビーはおほいでふね……」


「食べながら話さないの。でも遅いのは確かね。いつもならカラスの行水なのに」


 今ヴィーは、近くの窪地に人造温泉を作って入浴中……のはず。

 スープもできたし……様子を見てくるか。


「エイミア、スープできてるから、適当にみんなの分を盛っておいて」


「わかりました」



 少し離れた場所に、猛烈な勢いで湯気がつむじってるのが見えた。あそこか。

 音もなく忍び寄ると、ヴィーが湯船……もとい岩に腰かけて、夜空を見上げているのが見えた。

 いたずら心が疼いたので、≪忍び足≫と≪気配遮断≫をフル活用して背後に回り……。


「…………ふぅ〜」

 もみっ


 耳と胸へのダブル攻撃を仕掛けた。

 すると。


「【R18に抵触】っ!」


 ……異様に艶っぽい声をあげて、湯船に落っこちた。


「がぼぼぼ……ぶはあっ!? 何事ですか……ってサーチですか!」


「ぶくく……あはははははは! ナイスリアクション! あの声は艶っぽかったわよ〜〜♪ ぶぷぷ……あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


「……≪聖水弾≫ホーリー・アクアバレット


「ひゃひゃひゃ『ばっしゃああああん!』ひぃあ〜〜〜〜!!」


 冷た冷た冷た冷た冷たいいいいっ!!


「そーれぃ」

「わぶっ!?」


 ざばあんっ!


 湯船に引き摺りこまれがぼぼぼっ!


「ブクブク……ばはあ! な、何すんのよ!」


「あはははは! 笑った仕返しです!」


「全くもう……ビキニアーマーがびしょ濡れじゃない……」


 まだ全身が温まってないので、湯船の中でビキニアーマーを脱ぐ。


「よいしょよいしょ……」


「……サーチ、胸が少し大きくなりました?」


「え!? ホントに!?」


「だって、この辺りがほら……」


「ちょ、ちょっと。んあ……ってどこ触ってんのよ!?」

 ごいんっ!

「いったあああい!」


 全く! 油断も隙もありゃしない!


「な、何で叩くのですか!?」


「やかましい! あんたの触った場所は、胸でも何でもないじゃないの!」


「……つまりサーチはそこが弱いのですね……」


 ぎくっ。


「誰だって弱いに決まってるでしょ! 下らないこと言ってないで、さっさと風呂から出なさい! もう夕ご飯よ」


「あ、忘れてました」


 よし、誤魔化せた。


「リル達はお風呂に入らないのでしょうか」


「今ご飯食べてるから、少し休んでから入らせるわ」


「……ふふ。まるでお母さんですね」


「言わないで。自覚はしてるから」


 ご飯の準備が終わったら「さっさと食べてよー」だし、お風呂になかなか入らないと「後が詰まってんだから、さっさと入って!」だし、夜遅くまで騒がしいと「さっさと寝なさい!」だし……。

 やべえ。これに「勉強しなさい!」が加われば、立派にお母さんだよ。


「良いじゃないですか。それだけサーチを頼りにしているのですよ」


 ……頼られて嬉しいような、悲しいような……。


「そうだ、ヴィー。昼間の巨大な変態なんだけどさ」


「……折角忘れていたのですが……何でしょうか?」


 ごめんね。


「あんたを摘まみ上げたのって……何も見えなかったじゃない?」


「はい」


「何も見えない変態……ってのに、すっごく心当たりがあるんだけど……」


「何も見えない変態……ですか? 何も見えない変態……何も見えない……変態……あっ!」


 ヴィーもその人物(・・・・)が浮かんだらしく、湯船から立ち上がった。私よりデカい胸がぶるんと揺れる。

 ……ちくせう。


「長老ですか……!」


 そう。

 ヴィーが住んでいた村の長老だ。この世界でも珍しい透明人間で、変態。村の女性は全員セクハラ被害を受けていたそうだ。

 私達と村の女性全員にフルボッコにされ、村を叩き出されたはずなんだけど……。


「でも透明人間が≪巨大化≫(ティターン)を使えるなんて、聞いた事がありません……」


 ≪巨大化≫(ティターン)


「何それ? マジで巨大化するの?」


「あ、はい。確か小人族の種族スキルです。人間の大きさになれる、とは聞いた事があります」


 小人族の種族スキルってことは……。


「……他の種族は使えないわよね……なら、あり得るとすれば……」


「おそらく……七冠の魔狼(ディアボロス)の影響かと」


 七冠の魔狼(ディアボロス)の影響って……?


「……正直よくわからないです……。けど、タイミング的にそれしか有り得ないかと思います」


「まあ……原因を考えるのはいつでもできるか。とりあえずは、巨大透明人間を何とかしないとね」


「以前にサーチが使った手でいけませんか?」


「それが一番手っ取り早いわね。ヴィー、聖術で何とかできる?」


「ありますよ。変態が出てきたら、すぐにかけますね」


 よし、なら対策はバッチリね。


「はあ、すっかり温まったわ。そろそろ上がって夕ご飯食べようか?」


「わかりました。ビキニアーマーは聖術で乾燥させますね」


 をを! 便利屋(こころのとも)


「……サーチ、何か疚しい事を考えてませんか?」


 じょ、冗談よ……。



「さてさて、夕ご飯〜♪ 夕ご飯〜♪ ……ってあれ? 肉は? スープは?」


 ……何もないんですけど……。


「サーチ、石化しておきました」


 こっそり逃げようとしていた三人は、いち早くヴィーの≪石化魔眼≫(ゴルゴン)で足止めされていた。


「……あんた達……全部食べたわね……」


「「「ご、ごめんなさい……」」」


「ヴィー、どうする?」


「石化正座の刑、一晩中で」


「「「ぎゃああああっ!!」」」



「はい、ヴィーの分ね」


「ありがとうございます。しかしドラゴンのお肉は美味しいですね」


「でしょ? 私のとっておきのお肉なんだから」


「……いい匂い……」

「お、美味しそう……」

「……じゅるり」


「あんた達は腹一杯食べたでしょ? かったい干し肉を。私達の分までね」


「そうです。これは私達の分なんですから……そこで反省してて下さい」


「「「そ、そんな〜〜……」」」


「はいサーチ、あ〜ん」


 しないわよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ