第七話 ていうか、面倒な後始末。
「「「は〜……あ」」」
一頻り三人でバカ笑いしてから……三人そろって途方に暮れた。
「このドラゴンの亡骸どうしよう……」
竜殺しなんて称号が存在するように、ドラゴンなんて滅多に獲れるものじゃない。当然、ドラゴンの素材も滅多に御目にかかれるもんじゃない。
それに加え、ドラゴンの素材は超一級品だ。ドラゴン一匹倒すだけでとんでもない金額で売れるのだ。
ただし、問題がある。
一、でかい。
二、硬い。
簡単に言えばこの二つ。おまけに私達にはドラゴンの剥ぎ取りの経験がない。つまり、どうしようもできない。
「でしたらギルドに依頼するのはどうでしょうか?」
「そうだな〜……それしかねえかな……」
はぁ〜……。
でっかい溜め息をしてから二人に言った。
「あのねえ。そんなことしたら横取りされるだけよ」
「はあ!? なんでだよ?」
「えーっと?」
リルは食って掛かってきたがエイミアは何か考えている。
「あ! そういうことですか!」
エイミアはわかったみたいね。
「エイミアわかったのか?」
「はい。私達がドラゴンを倒したという証拠がない、と言われかねない。ということですね」
「あったりー。私達がドラゴンの討伐証明部位をギルドに持ち込んで、初めて私達のドラゴン討伐が証明されるの。つまり今のままじゃ横取りされる可能性が大ね」
「じゃ、じゃあその討伐証明部位を持って、すぐにでもギルドに向かったほうが……」
「そうなるわね。一人でギルドに向かって残りの二人でドラゴンの亡骸を守ってもらう」
「ま、守る!? って……あ、そうか。このまま放置しておけばモンスターも寄ってくるか」
「ドラゴンの肉は最高級食材らしいからね。これも守らないと!」
さて、あとは人選ね。
私がギルドにいくのが……一番いいかな?
「私がギルドに行こうか?」
リルとエイミアが頷く。
「まあ、無難だな」
「私だと道に迷うこと間違い無しって感じですね」
私とリルは激しく頷く。
「……っ! じ、自分で言ったことですけど、傷付きます!」
あーあ。エイミア不貞腐れちゃった。
「さて。じゃあ私行くわ。リル、あとはお願いね」
「わかった。ドラゴンから逃げてる間にかなり道から逸れたからな。気を付けていけよ」
………………。
……へ?
「……道から……逸れたのね……」
固まる私を見て今度はリルが溜め息を吐いた。
「……私が行く」
「……お願い」
よくよく考えたら獣人のリルにとって森は生活圏だわね。そりゃあ余裕綽々だ。
よし、まかせた。
「……なあ」
「……何」
討伐証明部位であるドラゴンの角を前に。
「斬れる自信ある?」
「……ない」
…………。
……詰んだ。
「どうしましたか?」
エイミアが割ってはいる。
リルが簡単に事情を説明し。
「エイミアの≪蓄電池≫じゃダメか?」
エイミアはしばらく考え……。
ドラゴンに近寄り。
「ドラゴンの角は力の源と言われてるくらいですから」
そういって角に手をかける。
ぽろっ
「「えっ」」
と、とれた!?
「死んだドラゴンの角は力を失い簡単に根元から外れるそうですよ」
そう言ってペロリと舌を出した。
「だから≪蓄電池≫の必要はないです……ごめんなさい、からかっちゃいました」
……。
いかん……いかんよ……。
エイミア、男の人にやっちゃあダメよ……。
「いかん……心が揺れた」
……リルが陥落寸前になってたよ……エイミア……リルが新しい世界に目覚めたら……責任とってね。
リルが出発して。
「ねえ、エイミア」
「なんですか、サーチ」
しーーー……んとした周辺。
「……暇ね」
「……そうですね」
……これもよく考えればわかったことよね。
「……こんなドラゴンの匂いがプンプンするところに」
「……モンスターがくるわけないですよね」
うーん。
さっきまでの緊張感がなんでここまで緩むかな……。
チュンチュン
チュンチュン
ガサッ
バサバサバサ
……。
はあ……。
緩んでられないわね……。
「おい、あそこにいるぞ」
「オレたちラッキーだぜ! 何にもしないでドラゴンキラーになれるんだからな! ハハハ!」
たく……どうやって見つけたのやら……ていうか、私が敵の接近に気づかなかったなんて。私も疲れてるみたい……。
ヒュッ
ドス
「かっ! ……」
音もなく倒れた相方に気付くことなく、先に進む盗賊。
そこには。
「えーい!」
釘棍棒を振り上げるエイミア。
「わお……ぽげっ」
揺れる双丘をガン見したまま頭をかち割られた盗賊は、血飛沫をあげて倒れた。
こうして次の日。
リルが無事にギルドの職員を連れてきて、ドラゴン討伐が公式に確認された。
「なあ、なんか……あったみたいだな」
近くに転がっていた盗賊の死体を見つけてリルが呟いた。
「……なんで頭割られて死んでるほう……ニヤニヤしたまんま死んでるんだ?」
「イヤー! 思い出させないでください!」
エイミアが耳を塞いでガクブルしだした。
「……?」
リルが顔に「?」をうかべる。
「ああ、エイミア? ……それがエイミアの『初めて』だったのよ」
結構トラウマものになっちゃったけどね。