第二話 ていうか『七つの美徳』の象徴をゲット!
「やっほー、また会ったわね」
『………………お』
お?
『お前らかああああああ!? またお前なのかああああああ!』
……流石に二回目はキレるか。
「しょうがないじゃん、モンスターだらけなんだし」
『一言あれば、モンスターを引っ込めるぐらいするわ!』
あ、そうだったの。
「あーはいはいごめんなさいすいませんでした遺憾であってめんごめんご」
『うっがああああ! お前本気で謝ってないじゃろ!』
何を当たり前なことを。
『もはや許す理由はない! この地で永遠に氷漬けになるがいいわ! ≪氷竜の牙≫!』
げえっ! 氷属性の最強魔術じゃないの!
「シャレになんない! みんな散って!」
全員の退避を促そうとしたとき、ヴィーが前に進み出て。
「≪聖火球≫!」
「だ、ダメよヴィー! ≪聖火球≫じゃ太刀打ちできない! 逃げてぇ!」
「……≪掃射≫」
へ?
バボボボボボボボボボボボボッ!
バ、バルカン砲!? ヴィーの頭の蛇達が、口から放ってる!! で、もんのスゴい数の≪聖火球≫が飛んでいき……。
ずどおおん!
楽々≪氷竜の牙≫を突破し。
ひゅんひゅんひゅんひゅううん!
どがん! どがががががががん! ずっどおおおおん!
『あぎゃひぃぃぃぃっ!』
……言語道断な爆裂音の間に、氷の真竜の断末魔が響いた……気がする。
『……こひゅー……こひゅー……』
ホッ。ギリギリ生きてた。
今ヴィーが≪回復≫をかけている。
「サーチに牙を剥く奴にかける≪回復≫はありません!」
……と息巻いていたけど、どうにか宥めすかして、氷の真竜の回復をお願いしたのだ。
「……もう大丈夫です。少しだけ生きられます」
「いやいや、少しだけじゃダメだからね!? こいつが死んだら、世界が大変なことになるからね!?」
「わかりました……………………ちっ」
今舌打ちしたよね!?
「……嫌々≪回復≫」
嫌々かよ!
『…………お、おう……黄色いお花畑が遠ざかっていく……』
「……マジでヤバかったのね……」
ていうか、すっかり用事があることを忘れてたわ。
『うむ? 用事とな?』
「あんた『七つの美徳』って知ってる?」
『知っておるよ。私達とは対をなす存在じゃからの』
「知ってるなら話は早いわ。じゃあ、それはどこにあるの?」
『…………は?』
「だからさあ、氷河の城壁のどこかに『七つの美徳』の象徴たる何かがあるって聞いたのよ! どこにあるの!?」
『ちょっ、ちょっと待て! 落ち着けい!』
「吐け吐け吐け!」
『ぐぐぐるじい! くびがああああ!』
「おいサーチ! 真竜の首絞めてるぞ!」
え? ……あら失敬。
『……こひゅー……』
げっ! また瀕死に!
「…………ヴィーさ〜ん……お願いできます?」
「わかりましたけど……完全にパターン化してますね」
毎度付き合わせて申し訳ない。
『おほん! ……さて、「七つの美徳」のことじゃったな』
「そう。ここにない?」
『結論から言えば、ある』
「ならちょうだい!」
『待て待て! 渡すから待っておれ!』
おお、こんなに早くゲットできるなんて!
『詳しい事を教えてやるから。それからでも良かろ?』
詳しい……ことを?
『言っておくがな、全ての「七つの美徳」が易く手に入ると思うなよ』
「……どういうこと?」
『今回は私がたまたま持っていたに過ぎぬ。他の場所の真竜が、持っているとは限らんのじゃよ』
「……真竜には、本来は関わりのないモノ?」
『というより、私達とは対になるモノ故、私が持っている事の方が異常じゃな』
「じゃあ……『七つの美徳』の象徴って、どういうモノ?」
『実物を見せた方が早いじゃろ……これじゃ』
氷の真竜が懐から出して見せたモノは……。
「……小手?」
『そうじゃ。これが「強欲」と対となる「救恤」の象徴……救恤の小手じゃよ』
「救恤の小手って……もしかして『七つの美徳』の象徴って、全て防具?」
『……じゃと思う、としか言い様がない。私とて、これしか知らぬ』
救恤の小手……か。
『私はダンジョンの造営の際に偶然見つけてな。それ以来隠し持っていたのじゃ』
「……何で隠す必要が?」
『……私とは対となるモノじゃぞ? 私には害にしかならぬし、七冠の魔狼に見つかると厄介じゃからな』
「ああ、絡まれたくない?」
『当たり前じゃ! 七冠の魔狼と誰が関わりたいと思うか!』
……確かに。
「……でもさ、結局はダンジョンのどこかにあるってことよね?」
『そうじゃ』
「……つまりどこにあるか、全くわかんないってことよね?」
『そうじゃ』
「何の解決にもなってないじゃないの!」
もう一回首を絞めてやろうかしら……?
『じゃが救恤の小手があれば、見つけるのは容易いじゃろ』
「へ? 何で?」
『七つの大罪と対となる為、私達とは反発する。じゃが同じ「美徳」同士ならば逆に引き合う。それを頼りに探せばよいのじゃ』
引き合うのか……つまり。
「……磁石みたいにくっついた場所にあると?」
『そうじゃが……磁石と同じにするでない。有り難みが薄れる』
「……七つの大罪の権化が言うことじゃないわね……」
『うるさい!』
氷の真竜から小手を受け取って、帰路についた。
「小手なんだから……装備できるのでしょうか?」
ある意味、伝説の防具みたいなモノよね。
「ヴィー、装備してみたら?」
「私は遠慮しておきます。『七つの美徳』なんてモノの象徴たる防具ですよね? モンスターの私には、猛毒にしかならない気がします」
「そうか……祝福アイテムの可能性があるか」
リジーに確かめてもらおうと、キョロキョロと探すけど……あれ?
「リジーは?」
「救恤の小手を見た途端に逃げてったぜ」
祝福アイテムで確定ね。ならリジーにも装備できないか……。
「……エイミア、あんたにどうかしら?」
「私ですか?」
「元だけど勇者でしょ? こういう伝説系の防具とは相性いいんじゃない?」
「……理屈はよくわかりませんけど……一応装備してみます」
そう言って小手を装備する。
「……駄目ですね、ブカブカです……って、え? あれ?」
見るからにブカブカだった小手は、エイミアにぴったりのサイズに縮まった。こりゃ間違いないわ。
「あんたの装備品で決定ね」
「い、いいんでしょうか……えへへ」
そう言って小手を頬っぺたでスリスリするエイミア。可愛いな、おい。
「……」
ぎゅう〜っ
「いったああああ! な、何でつねるのよヴィー!」
「……知りません! ふんっ!」
な、何だってのよ……。こりゃアザになるわね。
するとリルがニヤニヤしながら、私の肩に手を置いた。
「モテる女はツラいな」
うるさい!