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緊急会議 今後の対応策

 氷河の城壁(アイスキャッスル)での窪地(・・)での作戦会議は、超悲観的な結末に終わった。


「悲観的って……あまりにも極端じゃねえか?」


「「「じゃあリルだけで〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトを回って」」」


「…………遠慮します」


 でしょ!?

 悲観的にもなっちゃうでしょ!?



 ……私達は現在、グラツまで引き上げている。

 窪地での三冠の魔狼(ケルベロス)の提言によって、一応の解決法は見つかったものの……ぶっちゃけその方法が。


「もう一回〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトを攻略して、どこかにある七つの美徳を象徴する何か(・・・・・・)をゲットする」


 ……ということだった。

 注意すべき点は「象徴する何か」っていうとこ。ぶっちゃけ何かわかんないのだ。

 人なのかもしれないし、モンスターなのかもしれない。綺麗な宝石なのかもしれないし、立派な樹木の可能性も。もっと言っちゃえば、超巨大な岩石かもしれないし道端に落ちてる小石かもしれないのだ。


「……〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイトをもう一回回るってのは……流石に非現実的よね……」


 移動だけでどんだけ時間がかかるやら……。


「でも、それに関しては解決法はあります」


「……私も考えたけど……それってソレイユの転移聖術に頼る、ってことよね?」


 ヴィーは頷いた。

 それが最善の策なんだろうけど……ソレイユをヘロヘロになるまで酷使することになるんだろうな。


「……仕方ないか。私から念話水晶で頼んでみるわ」


「なら私からも念話します」


「お願い……」


 ヴィー、頼りになる〜! ウィンクを送ったらめっちゃ照れてた。さらにかわゆし。


「私も! 私にも良い考えがあります! ……って何で全員、私から離れていくんですか!?」


「いや、だって……ねえ……」

「エイミア姉の企みは、上手くいった事例がない」

「エイミア、冷静に考えましょう。事故が起こってからでは手遅れです」

「ホントだぜ。七冠の魔狼(ディアボロス)を刺激するような事態になったら、目もあてられないぜ……」


「み、皆は私の事を何だと思ってるんですか!」


 私達は全員顔を見合わせてから、エイミアに視線を移し。


「「「「……トラブルメイカー」」」」


 と、言い放った。あ、エイミアが泣いちゃった。


「ごめんごめん。一応(・・)エイミアの案も聞くから」


「ぐす……一応なんですか!?」


「わかったわかった、ちゃんと聞くわよ」


 少し機嫌が持ち直したエイミアは、胸をブルンッと震わせて立ち上がった。くそ、うらやましい……。


「私のスキル≪竜の絆≫でドラゴンに協力を求めるんです」


「ド、ドラゴンに!?」


「そうです! ワイバーンの皆さんに協力してもらえば、空を自由に移動できます! 海ではシーサーペント、陸では音速地竜(ソニックランドラゴン)と、移動手段には事欠きません……」


「わかったわ。リル、ワイバーンってひとっ飛びだって」


「え、えええ!? た、高い場所はちょっと……」


 腹を括らないとパニクるからねぇ、リルは……。


「じゃあシーサーペントに跨がって、海を越えられるわよ?」


「アニャ!? あ、足がつかないニャ! 水がいっぱいニャ! 泳げないニャアアア!」


 ……泳げないってのは致命的ね、シーサーペントの場合は。


「じゃあ音速地竜(ソニックランドラゴン)で、大陸の端から端まで突っ走れ!」


「ニャニャ!? そ、それもちょっと……」


 ……速すぎるのもダメだったっけ。


「……ヘタレ」


「うるせえっ!」


「……っていうわけだから、エイミアの案は却下で」


「そ、そんなあ〜〜……」


「……あのね、≪竜の絆≫があるあんたと違って、私達にはドラゴンは恐怖の対象なのよ。そこはわかってね?」


「……はい」


 やっぱりソレイユに頼るしかないか……。



『え、ええーーー!! 〝八つの絶望〟ディスペア・オブ・エイト全部、アタシが転移聖術をーーー!?』


「もう時間がないみたいなのよ! お願いだからがんばってくれない!?」


『う、うう〜……そう言われても……滅茶苦茶キツいし……』


「ソレイユのがんばりが、この世界の運命を左右するのよ!?」


「お願いします魔王様! 私()の将来の為に! どうか御力をお貸し下さい!」


 ……ヴィーさん? 達って何のことかしら?


『……でもね〜……魔力欠乏ってツラいし……』


「……わかったわ……あーあ、ソレイユが協力してくれればなあ……」

「そうですね、世界が滅びる事もなかったのに……」


『な、何よ! アタシのせいで世界が滅びるっての!?』


「ねー、協力してくれないんだって……三冠の魔狼(ケルベロス)


『けしからんな。魔王の風上にも置けんの』


『ケ、三冠の魔狼(ケルベロス)!?』


『はあ〜……このような情けない魔王と交友していたとは……我自身も情けない』


『な、な、何ですってえええ!?』


『このような情けない友の秘密など、最早隠す必要性は無いな』


『え゛』


『我らが戦う前、魔王はベッドの中で』


『うぎゃあああああああ! やめ! 止めて! 止めなさいいいい!』


『……さてさて、はしたない魔王だったな、ん?』


『わ、わかったわよ! やるから! だから言わないでええええ!』


『……というわけだ。馬車馬の如く働かせるがよい……』


 そう言って三冠の魔狼(ケルベロス)は静かになった。


『うう〜、畜生!』


「あ〜ら魔王様、『畜生』なんてはしたない言葉、使っちゃいけませんよ〜〜」


『ぐ……! サーチ、覚えてなさいよ! 全部関節外してやるんだから!』


『いやいや、真にはしたない魔王だったな、ん?』


『うぐ……!』


「じゃあ頼んだわよ……何ならこっちに来る?」


『…………』


「気持ちいいわよ〜……温泉(・・)


『……行く』


 そう言って通信が切れた。



 そうなのだ。

 私達は温泉に浸かっているのだ。


「はあ〜〜……めっちゃ生き返る……」


「さすがグラツの酸性泉です……疲労回復には持ってこいですね……」


 祝! グラツの温泉ふっかーつ!!

 氷河の城壁(アイスキャッスル)の影響で渇れていた温泉が、氷の真竜(マスタードラゴン)の計らいで再び湧き出したのだ。

 七冠の魔狼(ディアボロス)が近づいてきた影響で、空気中の魔力が異常に増幅し、ダンジョンコアが防衛機能を暴走させたのだ。

 その影響で、温泉が地下で凍りついてしまったのが、グラツの温泉が渇れた原因だった。

 で、氷の真竜(マスタードラゴン)が、凍りついていた温泉を解凍してくれたってわけ。


「も〜これさえあれば、言うことなし!」


 ……全員でまったりした。



 え? 七冠の魔狼(ディアボロス)は見なかったのかって?

 ……温泉のことで忘れてたよ。

 そのことを氷の真竜(マスタードラゴン)に言ったら……。


『……バカと天才は紙一重と言うが……』


 失敬な。

明日から新章、八つの絶望リターンズです。

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