第二十四話 ていうか、見つからないように、こっそり隠れて女子会を開催♪
私達を覆った氷のフタについては、たぶん氷の真竜がうまく誤魔化してくれてるだろう。
私達の気配は、ヴィーの≪聖風の加護≫で作った空気の壁により、ちゃんと遮断できているはず。
「……あとは……天に祈るしかないわね……」
「天という事は……〝知識の創成〟に祈るんですか!?」
「「「「………」」」」
エイミアの頬っぺたを引っ張った。
「いひゃい!」
「……何であんたは緊張感を台なしにするようなことを言うかな……?」
「いひゃい! いひゃい! いひゃい!」
「おい、お前ら! いい加減にしとけよ!」
「あ、はいはい」
そう言われても、エイミアに罰は必要よね……なら。
「≪偽物≫」
拳大の鉄の塊を作り出すと、エイミアの口に突っ込んだ。
「もがっ!? もがが!」
「よーし……伸びろ、如○棒!」
鉄の塊が左右に長く棒状に伸びるようにイメージする。それに伴って、実際に鉄の塊が棒になる。
「もがががみょーーーーんんん!!」
「ぶふっ! あっはははははは! 何だよ、そのエイミアの顔! ぶふぅはははははは!」
ギリギリまで伸びたままキープ。しばらく反省してなさい!
「エイミア姉、可哀想……プププ」
「リジー、笑っちゃ可哀想……クスクス」
「みょーん! みょんみょんみょーーーーんんん!」
エイミアが泣きながらみょんみょん言ってるけど、私にはわからない。誰か〜、みょんみょん語の通訳連れてきて〜。
「あんた達さ、もうすぐ七冠の魔狼が現れるのよ。少しは緊張感を持ちなさいよ」
「「「お前が言うな!」」」
私達が騒いでいると、突然大声が響いてきた。
『こりゃ! 何を騒いでおる! 外に丸聞こえじゃぞ!』
「「「「す、すみませーん」」」」
うーん……音は漏れるのか。つまりは振動として伝わっちゃってるわけね。
なら、空気の壁では防げないし……やってみるか。
「もいっちょ≪偽物≫」
私達を包むような形で、三重構造のアルミ製の壁を作る。
「よし、試しに叫んでみるか……あー! わーー! ぎゃあああああ!」
……氷の真竜からの反応は……ない。成功かな。
「な、何で急に叫ぶんだよ!? 耳がキーンてなったぞ!」
「試しに叫ぶって言ったでしょ」
「そ、そうだったか? て、それより! この鉄の壁は何だよ!?」
「私が作った防音の壁よ。ヴィー、≪聖風の加護≫で、私達に必要な空気は確保できる?」
「はい、問題ありませんよ」
なら、窒息する恐れはないわね。
「これから問題ないでしょ」
「なあ、サーチ。わざわざこんな壁作るためにMP消費しなくても、全員黙ってりゃよかったんじゃねえか?」
ふっ、甘い。甘いわね、リルは。
「……私達がこんな狭い空間に、大人しく隠れていられるわけないじゃない。どうせおしゃべりしちゃって、話が脱線して、大騒ぎになっていくだけよ」
「「「た、確かに……」」」
「だったら、どれだけ騒いでも気づかれないように、防音を徹底した方がマシだわ」
「……でも一番しゃべるエイミアが……」
「みょーん! みょーん!」
あ、忘れてた。
「はいはい、今解除してあげるわよ」
エイミアの口に交ってあった棒を、自分のイメージの中で分解する。すると同じように棒も消えていった。
「みょーー……」
ぱちんっ!
「いひゃ……びぇ、びえええええええええっ!!」
「あーあ、泣いちゃった……ていうか、スゴい声ね」
こんだけ狭い空間でわんわん泣かれれば、声が反響しまくって……耳が痛い。
「お、おい! 聴覚が鋭い私には地獄なんだよ! 早く何とかしてくれ!」
「何とかしろって言われても……」
「サ、サーチ! 流石に私でも厳しいです! 何か早急な対策をお願いします!」
あらら、ヴィーもアウトか。
ならてっとり早く。
「えいっ」
キュッ
「ぐえっ……がくっ」
「え゛っ!? エイミア姉しっかり……ちょっと、サーチ姉!?」
「大丈夫。頸動脈を押さえて落としただけよ。ヴィーに≪回復≫してもらえば、すぐに気がつくわ」
「……さすがサーチ姉、やる事がえげつない……」
「どうせ私はえげつないわよ。あんたも落としてあげようか?」
「全力で遠慮させて頂きます」
遠慮しなくてもいいのに。新しい世界が開けるかもよ?
「……暇だな」
「……そうね」
防音し過ぎて、外の様子が全くわかんない……。
「……鴨がキャベツくわえてやって来る……くぅ」
「…………何、今の」
「エイミア姉の寝言。何時もの事なんだけど……知らなかったの、サーチ姉?」
……初めて知ったわ。
「ていうか、カモはネギでしょ」
「別にそれはどうでもいいだろ……」
……確かに。
「でもさ、何で三冠の魔狼は、突然七冠の魔狼に変わったんだ?」
「……いきなりどうしたのよ」
「いや、前々から気になってはいたんだ。何も兆候はなかったし、原因があるのかな〜……と思ってさ」
わかったところで、どうにかなるわけじゃないけど……暇だからいいか。
「たぶんだけど……私が何かしらのキッカケになったんじゃないかな」
ちょっと前に気づいたけど、三冠の魔狼の刺青に少し変化が起きている。明らかに刺青の頭の数が増えてきてるのだ。
番の私に影響が及んでいる以上、私からも何かしら影響を及ぼしているはずだ。
「私もその事が気になっていました。サーチはどのような経緯で、三冠の魔狼の番に選ばれたのですか?」
あ、そうか。ヴィーだけ知らないのね。
「ほぼ一方的に決められた」
「一方的に……では刺青は?」
「三冠の魔狼に食い千切られた腕が、なぜか再生してね。そのときからあったかな」
「食い千切られた腕が再生したのですか……。それが『契り』だったのですね」
「え? 確かに千切られたけど……?」
「違います。『千切り』じゃなくて『契り』です。契約の契ですよ」
「それは何か意味があるの?」
「三冠の魔狼は、気に入った相手……すなわち番の身体の一部を食べて、体内に取り込みます。一方の番は、食べられた身体の一部を三冠の魔狼の魔力によって再生されます。これで『契り』が成立するのです」
……??
「難しいですか? 簡単にいいますと、身体の一部と三冠の魔狼の魔力との物々交換ですね」
「「「……物々交換……」」」
ま、間違ってはないけど…………ん? 身体の一部と魔力を交換? てことは……。
「……私の腕って……三冠の魔狼の魔力なんでしょ? なら、全部筒抜けってことよね……」
「「「あ」」」
『……今まで気付かなんだのか……』
「え?」
『我が番は察しが良いと思っていたが……見当違いだったか』
私の腕が……しゃべってる!
「サーチ、右手か?」
「? ……違うけど?」
「惜しい、ヒダリーか」
……リル、何を言ってるのかしら?
あとニ、三話で新章です。